漫画雑誌等での「応募者全員サービス」について

(2008.9.22)(追記を除き基本的には2005年11月にmixiの日記に書いた内容です)

 私が毎週のように漫画誌をせっせと読んでいる人間であることは、面識のある方々には先刻承知のことであろう。買っているのは大体一般誌と呼ばれる層のもので、月2回刊が多い。それが3誌だから大体5日に1回。しかし妙に集中することもあり、実感としてはもう少し購入の頻度は低い。1冊の価格は大体300円弱。

 さて、今年の春頃から、それらの中のある雑誌で、「フェイスタオル応募者全員サービス」なるものが度々告知され出すようになった。表紙を見るとそう書いてあるので、なにかもらえるのかしらと思って買ってきて、中を見てみると、申込用紙とともに定額小為替で800円(送料・手数料込)を送付すると全員にフェイスタオルを頒布すると書いてあった。
  それは単なる販売じゃあないのか。「全員サービス」と言われたならば、ふつうの人は、やはり精々送料くらいの負担で手に入れられるとおもうだろう。送られてくるものが例えば一万円もするものならば800円払っても納得できるかも知れないが、タオルなんて安いものなら数百円からありそうだ。
  念のためGoogle先生に「全員サービス」でお伺いを立ててみた。すると意外にも、現在の出版業界では、「全員サービス」という場合、小冊子など比較的原価の安いものを無料で配布する文字通りの全員サービスを意味するだけでなく、比較的原価の高いもの(例えばテレカ)を一定の負担と引き替えに送付することをも意味する場合がある、という考え方が共通認識となりつつあるらしいことがわかった。
  果たして、私の持つ「応募者全員サービスと聞けば当然無料」という言語感覚はおかしいのだろうか? しばらく考えてみたが、とてもそうは思えない。だとすれば、このような告知を表紙に掲載することにより顧客を本誌購入へと誘引しようとすることは、公正な販売方法とはいえないのではないか。

 そういったわけで、公正取引委員会のWebサイトからこの件について「景品表示法違反被疑事実についての申告」を行ったのが4月のこと。
  その後、一度問い合わせがあったきり音沙汰がなくなっており、こちらも忘れかけていた今頃になって、突然「景品表示法第7条第1項により適用する独占禁止法第45条3項の規定に基づく通知」が届いた。
  それによると、「調査の結果、法律上の措置は採りませんでしたが、景品表示法違反につながるおそれのある行為がみられましたので、同法違反を未然に防止する観点から、関係人に対し注意しました」とのこと。
  「景品表示法違反につながるおそれ」という、結局違反なのか違反ではないのか意図的に断定を避けた官僚的レトリックが使われているが、まあこんな細い案件でも対応してくれたことには感謝しなければなるまい。ともかく注意はしてくれたようだし、これで良くなるだろうか。そういえば最近は、件の雑誌で「全員サービス」という表現を見ていない。

(2008.9.22追記)
…ということだったのだが、いま「応募者全員サービス」で検索してみると、業界からこの商法が完全に放逐されたわけではないように見える。純粋に送料だけ負担するとか、そうでないにしても表紙上に負担額を明記するとかといったケースならば必ずしも不当ではないと思うが、どうなっているのか気になるところである。

(2009.11.12追記)
 以下も参照されたし。
 日本雑誌協会 日本書籍出版協会50年史 Web版 p.77 「応募者全員にプレゼントする,いわゆる『総付け景品』で,応募者になんの金銭的負担のない場合は『プレゼント』 表記,なんらかの負担がある場合は『サービス』表記とするように解説書にも明記している。しかし,公取委から『サービス』表記の場合も一般消費者に金銭負担がある旨が伝わらないので,応募者負担がある旨を具体的に明記するように,との指摘があった。」
 2007年11月刊行の書籍のWeb版である。

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