細田版(アニメ版)『時をかける少女』のあらすじ

劇場版アニメーション『時をかける少女』(脚本: 奥寺佐渡子、監督: 細田守)のやや詳細なストーリー紹介。一応ネタバレ有りですが、最後のクライマックスと結末にあたるDパートは省略してあります。なお、原作小説のストーリーはこれとはかなり違います。(2008.3.10)
短いあらすじ追加(2008.3.13)
その後も随時表現を調整しています。

こちらはDVDの限定版(オススメ)。 DVDの通常版。 Blu-ray版(2番目にオススメ)。 やっと出たBSアニメ夜話の本。

短いあらすじ

 紺野真琴は、倉野瀬高校に通う17歳の女子高校生。7月13日の放課後、真琴はその倉野瀬高校の理科実験室で、クルミのようなものが床に転がっているのを見つける。拾おうとしてそれに触れると、その途端にこの世のものとも思えない不思議な世界へと飛ばされてしまう。驚いて言葉も出ないままにそこを漂うが、やがて気がつくと理科実験室に戻っていた。
 その日の夕方、真琴が自転車で近所の商店街の急坂を下っていると、その後輪のブレーキが故障してしまう。減速できずに坂の下にある踏み切りに突っ込んだところへ、折悪しく電車がやってきて、真琴の自転車は勢いよく跳ね飛ばされる。しかし気がつくと、真琴は下り坂の途中で通行人に接触し、自転車ごと転倒しているところだった。どういうわけか1分ほど周囲の時間が戻ったように見える。このことがきっかけで、真琴は、時間を自由に跳び越える「タイムリープ」の能力を得たことに気づく。
 それからの真琴は、タイムリープし放題の日々を満喫。些細な失敗もためらいなくタイムリープで時間を戻り、都合のいいようにやり直す。周囲の人々はわけがわからずとまどうばかりだが、真琴はタイムリープがあれば私の一人勝ちと有頂天。そんなある日の放課後、彼女は親友だと思っていた同級生の男子、間宮千昭から告白される。親友としての関係を失うのに耐えられず、思わずタイムリープでそれをなかったことにしてしまうが、真琴の叔母で、良き相談相手でもある芳山和子は、それでは千昭がかわいそうだと諭す。翌日、そんなことがあったとも知らず千昭は真琴に気安く話しかけるが、真琴は罪悪感から千昭を避けてしまう。千昭はとまどうが、そうこうするうちに、千昭に密かに思いを寄せていた真琴の親友の女子、早川友梨が千昭にアタックをかけ、千昭と友梨は付き合うことになる。嬉しそうな千昭を見て、真琴は私に告白したくせにと憤慨するが、どうすることもできない。
 別の日になって、真琴は下級生の女子生徒、藤谷果穂が、真琴が以前タイムリープを使ってテストでズルをし、満点をとったせいで、真琴の親友でやはり同級生の男子、津田功介への告白に失敗していたことを知る。功介は医学部志望で、いつもはバカな真琴より低い点だったことで、もっと勉強に集中しなければと焦ったらしい。責任を感じた真琴はタイムリープでテストのあった7月13日に戻り、今度はひどい点を取る。次いで、功介が果穂にちょっとした怪我をさせるように仕向けると、功介は果穂を介抱し、二人は急接近。真琴はいいことをしたと満足する。
 しかし、その直後に偶然、実はタイムリープ回数には限りがあり、もう残りが1回しかないらしいことに気づく。その日の放課後、真琴が教室から離れていた間に、功介は果穂から告白され、今度はそれをOKするが、その後功介は怪我をした果穂を病院に連れて行くため勝手に真琴の自転車に乗っていってしまう。今日は真琴の自転車のブレーキが故障するあの日だ。不安に駆られあの商店街の坂道に駆けつける真琴。だがそこに功介たちはいない。そのとき偶然千昭から携帯に電話が掛かって来、真琴は唐突に千昭にタイムリープをしているのではないかと問いただされる。それを逃れようとついタイムリープの最後の1回を使ってしまう真琴。と、そこへ真琴の自転車が通りかかる。前席には功介、後ろの荷台には果穂。自転車はスピードを上げて坂を下っている。真琴は驚いて功介たちを止めようとするが、追いつけない。そして真琴のときとちょうど同じように、自転車のブレーキが壊れる。タイムリープはもう使えない。功介たちが死んでしまう、時の流れよ止まれと泣き叫ぶ真琴だったが…

長いあらすじ

 紺野真琴は17歳の平凡な女子高校生。そんなに頭は良くないけれど、バカってほどじゃない。器用ってほど器用じゃないけど、人に笑われるほど不器用でもない。朝はいつも遅刻ぎりぎり、英検3級にもこの前落ちた真琴だが、持ち前の運の良さにも助けられ、どうにか高校2年の1学期を乗り切ろうとしていた。
 7月13日の朝、例によって寝坊した真琴は急いで学校に向かおうとするが、家を出る間際、母からお使いを頼まれる。叔母の「魔女おばさん」の職場に、放課後、祖母から送られてきた桃を持って行って欲しいという。その桃を持ち、自転車で家の近くの坂を勢いよく駆け下りる真琴。その猛スピードのお陰か、学校には今日もなんとか遅刻しないで済んだ。だが、1時間目はなんと抜き打ちの数学の小テスト。散々な出来に終わる。これがケチの付きはじめ、その後も家庭科の調理実習では天ぷらで火事になりかけ、昼休みにはプロレス研究会のバカな男子にぶつかられる。そして運悪く真琴はその日の日直で、放課後には理科の提出用のノートの山を教室から理科室へ持って行かなければならないのだった。
 ノートを持って誰もいない放課後の理科室にやってきた真琴。教卓にノートを置いたところでふと黒板を見ると、そこには「Time waits for no one. 」と書いてあった。理科室なのになぜ英語…、と不思議に思ったのもつかの間、真琴は隣の理科実験室の方から何かを探しているような物音がするのに気付く。それに興味を惹かれ、真琴はノートを持ったまま実験室のドアを開けて中に入ってみる。だがそこには誰もいない。そのとき不意に、真琴は机の下から足下にクルミのようなものが転がり出てきたのを見つける。真琴が腰をかがめてそれを拾おうとすると、突然、物陰から謎の人物が現れる。真琴はそれに驚いてバランスを崩し、持っていたノートをぶちまけて転んでしまう。真琴は左肘を床に衝くようにして着地したが、そのときその肘が偶然クルミに触れてしまった。するとその途端、クルミから赤い光が発し、次の瞬間、真琴は現実とも幻覚ともつかない不思議な世界を浮遊しているのだった。ふと気が付くと真琴は元の実験室に戻っていたが、謎の人物は既に逃走した後だった。
 そのあと真琴は、二人の男子のクラスメート、間宮千昭と津田功介とともに学校の近所のグラウンドへ向かう。彼らは真琴の親友で、放課後はいつもグラウンドで一緒に野球のまねごとをしているのだ。道すがら実験室での出来事を話すと、功介は心配してくれたが、千昭には「バカだなー、お前」と大笑いされた。実験室は暗かったので、真琴には謎の人物が誰だったのか判らず、二人のうちのどちらかではないかと疑うが、二人とも自分ではないという。グラウンドに着くと、三人はキャッチボールをしながら今後の進路の話をする。三人は高校2年でそろそろ進路を決める時期だ。功介は家業を継ぐため医学部への進学を狙っているが、真琴と千昭の二人ははっきりとした未来を描けていない。
 水飲み場で一休みしているとき、真琴は母に桃を持って行くよう頼まれていたことを思い出す。千昭は引き留めようとするが、真琴はとりあわず自転車で叔母の職場へ向かう。その途中、真琴は下りきったところに踏み切りのある急な下り坂に差し掛かる。そこは真琴の通学路でもある駅前商店街で、道を跨いで設置されたアーチ型のからくり時計から、ちょうど午後4時を告げるからくり人形が現れたところだった。その下を例によって勢いよく下っていく真琴。下の踏切は閉まっており、もうすぐ列車が通過しそうだ。減速のため真琴がブレーキを掛けると、なんとワイヤーが切れ、後輪ブレーキがまったく掛からなくなる。慌てて必死に止めようとするが、その努力もむなしく自転車はむしろ加速していく。ほどなく踏切のバーに衝突した真琴は、踏切待ちの人々の目の前で、自転車ごと上方へ投げ出され、真っ逆さまに線路へと落ちてゆく。ちょうどそのとき列車が踏み切りを通過し、からくり人形の打つ鐘の音と同時に、真琴の自転車は勢いよく跳ね飛ばされる。
 ところが、気がつくと真琴は坂の途中で通行人の小母さんと衝突し、自転車ごと転倒していたところだった。小母さんに怒られ、とまどいながらも謝る真琴。するとからくり時計から午後4時を告げるからくり人形が現れる。そして何事もなかったかのように踏切を通過していく列車。「な…なんで?…なんで!?」と真琴は驚く。
 魔女おばさんこと芳山和子の職場である東京国立博物館に着いた真琴がその出来事を話すと、和子はこともなげに「それ、タイムリープよ」と言う。タイムリープとは時間を跳び越える能力で、真琴くらいの年頃の女の子にはよくあること、私にもあったという。その話を信じられない真琴。和子は、コツさえわかればまたできるのではと言うが、真琴にはわからない。夕方、帰宅した真琴は、踏切のときのようにベッドの上でジャンプしてみる。しかし時間は戻らない。そこで、真琴の部屋の2階の窓から飛び降りてみようとするが、真琴の妹に見つかり、自殺と間違われて止められる。実は前日、妹は冷蔵庫にとってあった真琴の分のプリンを食べてしまっていた。それが自殺の動機かと妹は心配するが、煩わしい真琴は家を出て近くの河原にやってくる。土手に座り、水面に石を跳ねさせて遊んでいる子どもたちを眺めながら、真琴は物思いに沈む。あり得ないよ、時間を跳び越えるなんて。そんなこと、わたしにできるわけないんだから。そう諦めて土手を登り、家へと帰ろうとするが、突然そこで意を翻し、真琴は川面へ向かって土手を猛然と駆け下りる。
 子どもたちが石を投げるのと同時に、水際で大ジャンプする真琴。その石が跳ね損ね、沈もうとしたかと思うと、一瞬の静止ののち、リバース再生のように逆向きに動き出し、次の瞬間、真琴はデジタル数列の並ぶ異次元空間の中にいた。真琴はそこを後ろ向きにクルクルと回転しながら落ちていく。そして気が付くと真琴は自宅のダイニングの床をゴロゴロと転がり、なすすべもなく食器棚に頭をぶつけていた。家の中には誰もいないが、居間のテレビからは「7月12日火曜日。今日は日本標準時制定記念日なんです…」というお昼の番組の音声が聞こえてくる。台所へ行き冷蔵庫を開けてみると、食べられたはずのプリンがある。「ということは…?」。と、買い物から帰ってきたのか玄関の方から両親と妹の声がする。妹が真琴の分の「プリン食べていいの?」と言っているのが聞こえ、思わず「ダメよ!!これあたしんだからっ!!」と叫んだ真琴だが、その瞬間真琴は元の河原に戻っていた。
 プリンは持って帰れなかったが、これでコツをつかんだ真琴。早速再度7月12日の自宅にタイムリープする。また冷蔵庫を開けるとプリンがある。それをスプーンですくって口にいれた真琴は一言、「うまい!」これで真琴はタイムリープ能力を得たことを確信する。
 二度目の7月13日。真琴はタイムリープで得た知識を活用してツイてなかった一日をやり直す。早く登校して予習しておき抜き打ちテストで満点を取る。調理実習では天ぷらの火事騒ぎをクラスメートの高瀬君におしつける。プロレス研究会の男子は華麗な体捌きで回避する。それだけでは飽き足らない真琴。放課後には千昭・功介とカラオケボックスに行き、規定の時間が来たら時間を戻って追加料金無しでさらに歌い続ける。いつものグラウンドでは球が捕れなければ時間を戻って捕り直し、球が打てなければやはり戻って打ち直す。家に帰れば晩のおかずが気に入らないといって好物の焼き肉の晩へタイムリープする。周りの人々は何が起こっているのかわからずとまどうばかり。私に読めないことはない、どんな試合も一人勝ち、もう笑いが止まらないと大喜びの真琴に、和子は、大したことに使っていないようで良かったが、真琴の代わりにひどい目に遭っている人がいるのではないかと気になることを言う。だが、真琴は「いないよね! 何があっても大丈夫、また戻ればいいんだもん、何回だってリセットできるもんね」と楽観視する。

 7月14日の放課後。いつものように三人で学校からグラウンドに向かおうとすると、功介の所属するボランティア部の後輩、藤谷果穂と、そのクラスメートの女子、盛子・析美が功介を呼び止める。先にグラウンドに行った真琴と千昭は、その後遅れてやってきた功介に事情を聞く。すると、功介は果穂に告白されたが断ったという。千昭と真琴はそれを惜しむが、功介の意思は固いようだ。夕方になり三人は帰途につく。分かれ道でまず功介と別れた真琴は、千昭の自転車に乗せてもらい自宅へ向かう。真琴の自転車はプレーキに問題があるから家に置いてきてあるのだ。千昭の自転車はこの前真琴が跳んだ河原の土手に差し掛かる。千昭の後ろで真琴が言う。功介に彼女ができたら一緒に野球ができなくなるから、功介が果穂に興味がないのにはちょっとホッとした。でも、「なんだかなー…ずっと三人でいられる気がしてたんだよね…」。いずれ親友のこの三人の関係もなくなってしまうのだろうか。すると前で自転車を漕ぐ千昭は、なぜか緊張の面持ち。そしてチラチラと真琴の方を振り返って、突然言う。もし功介に彼女ができたら、「真琴。…オレと…付き合えば? …オレ、そんなにカオも悪くないだろ?」 驚いた真琴は「…マジ?」と訊くのが精一杯。だが千昭の答えは「…マジ」。ショックを受けた真琴は、タイムリープで時間を遡り、分かれ道に逃げ戻ってしまう。再び千昭の自転車に乗る真琴。なんとか話題を逸らそうとするが、またも千昭から告白される。再びタイムリープして逃げた真琴は、結局自転車で送ってもらうことを諦め、分かれ道から一人で歩いて自宅に帰るのだった。ことの顛末を聞いた和子は、つきあっちゃえばいいのに、ダメならつきあう前に戻ればいいじゃない、と言う。しかし真琴は「千昭と友達以上になってるとこなんか全然想像できない」と答える。和子は、せっかく想いを伝えたのに、それをなかったことにされた千昭くんがかわいそうだと言う。
 翌日の昼休み。真琴がクラスメートの女子、早川友梨と庭でお昼を食べていると、彼女が千昭のことをあれこれ訊いてくる。最近の友梨はいつもこうなのだ。真琴は千昭と仲がいいからと友梨は言う。真琴は自分で訊けばと言うが、友梨は携帯のアドレスを知らないと言う。同じクラスなのだから直接訊けばいいようなものだが、友梨は千昭に話しかけづらいらしい。お昼が済んで二人で教室に戻る途中、真琴が天ぷらの調理を押しつけた高瀬が、中庭でいじめっ子の加藤たちにホースで水を掛けられているのに出くわす。あの調理実習のとき、真琴の代わりに火を出してしまった高瀬が消火器を使ってそれを消そうとしたが、手元が狂って消火剤が少し加藤にかかってしまったことで因縁を付けられたらしい。気弱な高瀬は抵抗できず、なすがままされるがままだ。と、なぜかホースの水が止まる。蛇口の方を見ると千昭が水を止めていた。千昭は新学期早々加藤らと大立ち回りを演じ、それ以来加藤らは千昭にあまり関わろうとしない。加藤らが去っていくと、千昭は高瀬に声を掛ける。「ひでぇな、びしょびしょだ」。それを見ていた友梨も高瀬と千昭の方へ駆け寄っていく。友梨は高瀬に優しい声を掛けるが、どうも本当は千昭の方を意識しているようだ。しかし、千昭は真琴を見つけると、それに気づかぬ様子で真琴の方へ歩いていく。寂しそうにする友梨。千昭は真琴に声を掛けるが、真琴には昨日のことで罪悪感があり、つい目を逸らしてしまう。千昭はそれを訝しがる。と、突然高瀬が怒って真琴に怒鳴り始める。「紺野、お前なんであのときボクに天ぷら揚げろって言ったんだよっ!!おまえのせいだバカッ!!」たじたじとなる真琴。だが傍にいた千昭は「あぁ!?誰がバカだ?グダグダいってっと投げっぞ!」と言い返し上履きを投げつける構え。高瀬は「おぉ投げろよ!」と精一杯の反抗をするが、千昭は上履きを投げてしまう。見事に顔面に命中する上履き。高瀬は泣き出さんばかりになって千昭に「バカ!」と言い残し敗走する。千昭は「失礼な奴だな、人をバカ呼ばわりかよ」と呟く。それを聞いて真琴は「千昭も私のことバカバカ言うじゃん」と言うが、千昭の「オレのは愛情表現だから」の答えに固まってしまう。その様子を不審がる千昭と友梨。「つっ込めよおまえ。寒いだろオレが。こいつ今日調子悪くない? 早川さんもそう思うでしょ?」と千昭は気さくに友梨に話しかける。「そ…そうですね!」と友梨の答えは緊張のあまりぎこちない。その後真琴は一人その場を離れるが、少し行ったところで振り返ってみると、二人はとても楽しそうに話をしていた。
 そののちの午後。千昭は真琴に話しかけようとするが、その度に真琴は千昭を避け続け、しまいにはグラウンドにも行かずに隠れて帰宅してしまう。学校で真琴を捜していた千昭は、結局グラウンドにやってくるが、そこには功介しかいない。真琴に避けられる心当たりのない千昭は、昼にアドレスを聞いた友梨に真琴のことでメールを打つ。それに大喜びの友梨。
 その後の休み明けの火曜日。昼休みになり真琴がいつものように友梨にお昼の誘いを掛けると、友梨は今日はちょっと調子が悪いと言って来ようとしない。真琴は一人で庭に行きお昼を食べる。教室に戻ろうとしたところで真琴は、手作りのサンドイッチが入っていると思しき紙袋を友梨が千昭に渡しているのを目撃する。千昭は驚いた様子だが、まんざらでもなさそうだ。呆然とそれを見詰める真琴。と、中庭の方で騒ぎが起こる。真琴が行ってみると、加藤らにラーメンを頭から引っ掛けられたらしい高瀬がマジギレし、消火器を彼らに向けて吹きかけていた。消火剤まみれの加藤らは許しを請うが、激怒している高瀬は聞き入れようとせず吹きつけ続ける。真琴は高瀬に「やめなよ高瀬くん!」と叫ぶが、それを聞いて高瀬が真琴に憤怒の目を向ける。「紺野ぉ、お前オレに命令しただろぉ」。そう言って高瀬は消火器のホースを真琴の方に向けるが、ちょうどそのとき中身が切れて何も出なくなる。だがそれでは収まらない高瀬は、高さ1メートルはあろうかというその大型の消火器を高々と持ち上げ、真琴に向かって投げつける。真琴は体が固まって動けない。と、そのとき脇から突然千昭が現れ、真琴の前に立ちはだかる。驚く真琴。不気味に迫る消火器は千昭にぶつかりそうだ。次の瞬間、真琴は数秒前にタイムリープし、脇から千昭を押し倒す。すんでのところで千昭たちの上を掠め飛んでいった消火器は、だがそのとき千昭の方に駆け寄ろうとして前に出てきた友梨にぶつかってしまう。悲鳴を上げて倒れる友梨。真琴はそれを見て罪悪感に苛まれる。
 真琴に付き添われ保健室に連れて行かれた友梨は、キズが残ったらどうしようと泣く。それを聞いた真琴は、その時はわたしがなんとかするといって部屋を出ていこうとする。タイムリープでやり直せばいい。しかしそのとき千昭が保健室に入って来、友梨に優しい言葉を掛ける。いい雰囲気の二人。真琴のことはもはや目に入らないようだ。真琴は静かに保健室から出て行く。
 その日の放課後、グラウンドでキャッチボールする三人。千昭は友梨とデートするという。真琴はやけくそ気味に千昭に「よかったじゃん!!」と叫ぶ。その後帰宅した真琴。千昭は私に告白したくせに。そう憤慨しつつ入浴するが、そのとき偶然、左の肘のあたりに数字のような形のアザがあるのに気づく。それは「90」と読める。
 翌日。友梨と千昭はすっかり仲良くなり、教室でも楽しそうに二人で話をしている。放課後、真琴は沈んだ表情で帰宅しようとするが、功介に捕まりグラウンドに引っ張っていかれる。功介は、真琴を励ますように明日は千昭も連れてこようと言うが、真琴は友梨に悪いよと言う。功介は、千昭は真琴に振られたから友梨にしたんじゃないのと訊くが、真琴は振ってないよと答える。それを聞いて「へぇー」と言う功介。真琴が、そういう功介は彼女つくんないのと訊くと、功介は「オレが彼女つくったら、真琴が一人になっちゃうじゃん」と思わせぶりな返事をする。その後、真琴はまた博物館に行き、和子にその話をする。すると、今度は和子は功介くんと付き合っちゃえばと言う。和子曰く、「うまくいかなかったらまた元に戻せばいいんだって」。それを聞いた真琴は、そんなこと絶対にしない、人の気持ちもてあそぶなんてと言う。すると、和子はやっと気づいたのかと言わんばかりに「ちょっと過去に戻れるからってやりたい放題。いままでさんざんやってきたじゃないの」とキツいことを言う。二人は展示室を歩き、和子が先日まで修復していた絵が展示されている一角に来る。その絵は作者不明だが、何百年も前の歴史的な大戦争と飢饉の時代に描かれたものだという。長く観ているとなんだかとってもゆるやかな気分になる不思議な絵だ。和子は感慨をこめて、どうしてこの絵がそんな時代に描けたのだろうかと言う。
 次の日。その日行われた模試が終わった後の進路の面談で、真琴は先生から進路希望書を提出していないのはお前だけだと言われる。ところが真琴はさっき左肘の数字が「50」に変わっていることに気づいたものだから、そのことが気になって仕方がない。とはいえ、タイムリープを使ったので模試の成績は万全。先生にもあまりうるさくは言われなかった。その後、廊下で真琴は果穂と盛子・析美の三人組に捕まる。彼女らが言うには、果穂は先日功介に告白したが、功介の方は、真琴が数学のテストでいい点を取ったことで不安を感じたらしく、勉強に集中しなければならないからと言ってそれを断ったらしい。それを聞いた真琴は責任を感じたか、果穂の告白が上手くいくようタイムリープで手助けする決意をする。何度かの失敗のすえ、真琴は7月13日のテストの日まで戻り、そのテストでひどい点を取ること、そしてプロレス研究会の男子を利用して果穂に怪我をさせ、功介にそれを介抱させることで、功介と果穂をいい雰囲気にすることに成功した。いいことをしたと満足気な真琴。だがその直後、真琴は左肘の数字が「10」に変わっていること、そしてそれは逆さまに読めば「01」と読めることに気づく。面談の後にしたタイムリープの回数は4回。あのときの数字を「05」と読むとすると、ひょっとしてこれはタイムリープの残り回数なのだろうか。そういえば、タイムリープで戻ってきたので、今日は放課後実験室で真琴がタイムリープ能力を得たあの日だ。あのときの謎の人物ならばなにかこのことについて知っているかもしれない。そこで真琴は放課後実験室に行き、件の人物を探すが誰もいない。早く来すぎたのかと物陰に隠れてそのまま待っていると、果たしてドアが開き誰かが入ってきた。姿を現しその人物に話しかける真琴。だがその人物は友梨だった。日直の真琴がノートを持って行くべきところだったが、真琴がそれを忘れているようなので代わりに持ってきてやったのだという。すると謎の人物はどこへ行ったのだろう。と、そこへ功介から真琴の携帯にメールが入る。そこには「なんかオレ、告られたみたい。うらやましいだろ。自転車借ります」とあった。
 自転車という言葉に青ざめる真琴。この後あの自転車のブレーキは壊れるはずなのだ。真琴は全力で教室に走っていくが、そこにいた同級生たちは功介は果穂と一緒にもう帰ったという。自転車置き場へ急ぐが、そこにも功介はおらず、真琴の自転車はなくなっていた。真琴は功介に電話をかけるが、話し中で留守電になってしまう。不安に駆られた真琴は、まさかと思いつつあの踏切へと走る。しかし踏切に着いてみると、功介も自転車も見あたらず、事故が起こったという様子もない。そこに真琴の携帯に電話がかかってくる。功介からかと電話に出ると、相手は千昭だった。千昭は、功介から自宅にいると連絡があったと言う。気抜けした真琴。真琴は荷物も持たずに飛び出してきた学校の方へと無意識に商店街の坂を上りながら、久しぶりにわだかまりなく千昭と話す。坂の上まで来たあたりで、千昭が一つ訊きたいことがあるという。真琴が何かと訊くと、驚いたことに千昭は「おまえ…タイムリープしてねえ?」と言う。なぜ千昭がタイムリープのことを? 告白をなかったことにしてしまったことも千昭は知っているのだろうか? 思いがけないことに気が動転した真琴は、思わずタイムリープで数分前に戻ってしまう。再度電話に出る真琴。また千昭が質問しようとするが、今度は話題を逸らすことに成功した。坂の上で電話を切る真琴だが、左肘の数字はついに「00」に。どうやらこれでタイムリープの回数は使い切ってしまったようだ。真琴はくだらないことに最後の一回を使ってしまったと後悔するが、功介も無事だと判ったことだし、と気を取り直す。ところがそのとき、真琴の側を真琴の自転車が通り過ぎる。前席には功介、後ろの荷台には包帯を巻いた果穂。功介の自宅の病院で昼間の怪我を治療したあと、果穂は家まで送ってもらうところらしい。自転車は果穂の家がある線路の向こう、つまりは坂下の踏切へ向かって速度を増しながら下っている。それを見て愕然とする真琴。からくり時計からは午後4時を告げるからくり人形が現れた。踏切は閉じている。真琴は携帯を取り落とし必死に叫びながら自転車を追うが、追いつくはずもない。やがて功介はブレーキの異状に気づいたようだが、なすすべもなく、あの日の真琴とちょうど同じように、功介と果穂は踏切のバーに衝突し、踏切待ちの人々の目の前で、自転車ごと上方へ投げ出される。ちょうどそのとき列車が通過しようとし、もはやタイムリープできない真琴は時の流れよ止まれと叫び続ける。

この続きは…

ここから物語はクライマックスと結末を迎えますが、この物語はこれらの部分が特に秀逸です。ご興味をもたれた方は、是非本編をご覧になることをお勧めします。

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一応この先のあらすじも作りました。ここにリンクは置きませんが、このサイト上にありますので、既に本編を鑑賞された方は、ご興味がおありでしたら探してみてください。

既に作品をごらんになった方は、こちらのページもどうぞ。ストーリーの内容について解説しています。

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