個別のシーンについて

個別のシーンについての質問と回答。別名重箱の隅つつき。

Aパート

[S1]~[S25] 「あたし跳べんじゃん!! 跳べんじゃん!!!」まで

Q2.S2.1 冒頭の夢の中のシーン[S2-1]で、真琴が「あれ?」「なんかさあ、聞こえなかったあ? 今」と言っているが、音声をいくら聞いても何も不審な音は入っていない。真琴は何を聞いたのか。

A おそらく午前7時頃にセットされていて、無意識のうちに止めたのであろう目覚ましの音のことを言っているものと考えられる。ここで夢の中の真琴が振りかぶるために手を上げていることに注意。実際の真琴の部屋では、ベッドに寝ている真琴から見て頭の上の方にある棚の上に目覚まし時計がある。
 [絵コンテ S2-1]では「いくよっ!!」のセリフの後のセリフ欄に「(SE)(目覚まし)(細工)ピピピピピ…」、内容欄に「と、不意に目覚まし時計のような音がどこからともなく聞こえ、あれ?と振りかぶりを止めて、周囲を見回す。」とある。結局目覚ましの音が入らなかったのは、ここでその音を鳴らすと夢の中であることがあからさまになりすぎ、直後の夢オチの意外性が損なわれるからではないか。
 なお、千昭が「真琴! 早く投げろよ!」といっている点につき[Q2.S112.2]。

Q2.S2.2 真琴が[S2]でプリンを食べられた話をすることにどういう意味があるのか。

A もちろん第一には12日へのタイムリープの伏線を張っているのであるが、第二には、「ぐすぐずしていたらチャンスを逃した」話をすることで本作品のテーマの要約をしているのである。
 (特にアヴァンタイトルの場合の)ファーストシーンを作品全体の要約のような形式にするやり方は、アニメの世界ではわりに一般的である。このような構造は、物語学では象嵌(mise en abyme)と呼ばれる。一方この用語は、映画の世界では、夢の中の夢という意味でも用いられる。このことは夢オチ説[Q1.3.7]のさらなる傍証となるかも知れない。

Q2.S2.3 真琴の目覚まし時計[S2-22]のモデルは。

A 本作の真琴の目覚まし時計の外見は[大林版]に出てくるものと似ているが、直接のモデルは無印良品[絵コンテ S2-22][作画コメンタリ 00:18:40]のおそらくはPCT-1[ノートブック p.5]だろう。ただし、側面が黒い、前面に「ALARM」のシルク印刷がある、電源ケーブルが付いている、文庫本サイズである(本編では微妙にそれより大きく見える)、といった違いはある。なお、[S78-1]の時計はボタンの形など微妙に違う。
 ちなみに、遅刻の朝、真琴が起きたのは8時3分、[大林版]の和子が起きたのは8時8分。ただし和子が寝坊したのは前の晩火事があったから。

Q2.S3.1 7月13日は本当に「ナイスの日」に制定されているのか。

A 現在は登録が消滅しているが、以前日本記念日協会にその旨登録されていた。
 なお、ナイスの日のことは2006年7月13日のTBS「はなまるマーケット」で実際に紹介されたそうである(「ビチュ~なクローン病徒然日記」参照)。ただ、残念ながら、同番組は午前8時30分からの放送である。
 本編中、出だしのテレビのシーン[S3-4]ではテレビに「7 月 13 日はナイスの日」と表示され、TVキャスターも「今日7月13日はナイスの日なんですね」と言っているが、踏切で真琴が落下していくシーン[S16-46]では、真琴は「ナイス日なのに」と言っている。セリフの位置は違うが[絵コンテ S16-41]では「ナイスの日なのに」となっている。

Q2.S3.2 遅刻しそうな真琴が牛乳を飲む場面[S3-5]にはなにか見覚えがあるが。

A [大林版]に同様な場面がある。ただしこちらで和子が飲んだのはまだ食事中の妹(良子)の牛乳。
 なお、真琴の父は出版社勤務で朝は遅いとの設定[パンフ]。

Q2.S3.3 台所方面から玄関方向に向かって廊下を映すショット[S3-6][S78-3]にはなにか見覚えがあるが。

A 「小津の構図」であるとの指摘がある[ハンドブック p.27]。なお、[アッコ]。また、[野沢 「小津安二郎の文体」の章]も参照。
 小津といえば、本編の土手のモデル[Q1.2.17]は、[東京物語]に出てくる土手と大体同じ場所と思われる。また、[S110-20]の背景にある三本の煙突は、「お化け煙突」のように見えなくもない。

Q2.S7.1 調理実習のシーン[S7]に千昭と功介の姿がないのはなぜか。

A このシーンには確かに映っていないし、2回目[S30]のときも同様である。高校では1994年から家庭科が男女共必修となっているが、学習指導要領によると家庭科の中にも細分化された項目があり、「食生活の設計と調理」の内容は選択制のようである。千昭と功介は別の項目を選択したために別室で授業中だったのではないか。
 なお、本編中、高瀬やいじめっ子の加藤らの姿は授業中この家庭科室には現れるが、真琴の属する2年2組の教室には現れたことがない。[ノートブック p.73][ノートブック p.108]では真琴と同じクラスとされているが、別のクラスと考えた方が自然かも知れない。

Q2.S8.1 真琴がパフォーマンス中のプロレス同好会の男子に押し潰されたとき[S8-2]、友梨の方がそれに近い側にいたのに無事だったのはなぜか。

A 友梨は直前に危険に気づいて立ち止まったから。真琴は前髪を気にしていて気づかなかったのである。
 ところで、真琴は基本的に学校内では友梨とともに過ごし、千昭や功介と一緒に行動することはほとんどないようである。「イケメン」2人と親しくしていることから立たされるかも知れない真琴の女子の間での立場について、世間ではいろいろと考察されたようであるが、真琴としても校内では目立たぬよう気を使っていたのかも知れない。

Q2.S10.1 7月13日の日直は誰か。

A 黒板には「紺野」と「桑島」と書いてあるようである[S10-2][S32-2][S87-2]。桑島が誰かははっきりしない。

Q2.S10.2 教室を掃除中の真琴が外から功介に「早くしろよ」と言われたとき[S10-4]に座っている机は誰の机か。

A 位置が微妙だがおそらく千昭の机だろう。この時点から無意識のうちに好意が現れたものと解釈すべきものか。また、功介の机ではないこと、友梨は座っていないこと、千昭が走り去ること、直前で、真琴たちが進路を決められないという話をし、そこに千昭が割り込んできて真琴を急かしていることなども考え併せると、ここはさりげないが本作の結末とテーマが凝縮されたシーンになっている(象嵌)。
 ちなみに、真琴ら三人の机の教室内の配置は[大林版]と似ているが、[大林版]では吾朗の机は和子を挟んで窓と反対側。
 [絵コンテ S10-4]には、「……千昭くん、どうするのかな。」のセリフの前に、友梨「いいなー、真琴はモテて。」真琴「そんなんじゃないよ」友梨「モテてんじゃん」真琴「ちがうって」というやり取りがあるが、本編では削除されている。

Q2.S11.1 「音楽室」「図書室」「体育館」「ピロティの自販機」「守衛室の時計」の順に続く一連の画面[S11][S83]は何か意味があるのか。

A 直接にはもちろん時間が経過して放課後になったことと、ピアノのメロディが「音楽室」から流れてくるものであることを示す画面である([原作]では、放課後、誰かが音楽室で弾いているピアノのメロディが聞こえていることになっている([大林版]も同様))。また、これらの画面が現れることは、その時点が7月13日の午後2時過ぎであることの印になっている[Q1.3.9]。[時間軸]ではこの一連の画面の流れを「5画面シーケンス」と記してある。

Q2.S12.1 真琴は理科室でノートの束を提出用の箱の横に置いたはずなのに[S12-2]、なぜ理科実験室にノートを持って入っているのか。

A 提出用の箱に入れようと何冊かのノートを手に取ったところで理科実験室から物音がしたので[S12-5]、それを持ったまま理科実験室に入ったのである。置いてから行けばいいようなものだが、余程気を取られたのだろう。
 もちろんストーリー構成上は、(1)実験室に居た千昭の姿をノート越しにしか見えなくして見えづらくさせるため (2)最後のタイムリープで戻ってきたのが[S104]、[時間軸 No.1]のこの時点であることを示すため に、真琴にノートを持って入らせる必要があったのである。[Q1.3.2]も参照。

Q2.S16.1 真琴の後輪ブレーキが故障するシーン[S16]で、前輪ブレーキはどうしたのか。

A [S16-23]を見る限り前輪ブレーキも掛けている。前輪ブレーキも同時に壊れたという描写はないし(確率的にも不自然)、朝の踏切シーン[S4-10]の止まり方を見る限り前輪ブレーキが元から故障していた可能性も低いものと思われる。結局、前輪ブレーキは効くには効いていたものの、それだけでは止まりきれないほどスピードが出過ぎていたということだろうか。

Q2.S16.2 真琴の自転車をはねた電車は上野行と大和田行のどちらか[S16-46]。

A 上野行の方。
 ちなみに[絵コンテ S16-43]では大和田行きに「特急」、上野行きに「快速」の表示があるが、本編[S16-43]では大和田行きが「快速」であり、上野行きは種別表示部分が白く潰れている。また、冒頭の朝の踏切の方でも、[絵コンテ S4-10]では「上野行き特急」と指定されているが、本編の画面[S4-10]では「快速 大和田」と表示されている。

Q2.S17.1 真琴の踏切事故直後の倒れた自転車のシーン[S17]で、前カゴに載っていたはずの桃はどこへ行ったのか。

A 合理的な説明に困難を覚える点だが、その後の博物館のシーン[S18]では真琴は桃を持っているから、必ずどこかにあるはずである。敢えていえば自転車の先の方で、画面には映っていないあたりに放り出されたのだろう(ぶつかった瞬間[S17-1]の描写からすると若干疑わしいが)。

Q2.S17.2 真琴の踏切事故直後[S17-4]におばさんが「目がなんで前についてるかわかる!? ちゃんと前見て歩くためよ わかった!?」と言っていることの意味は。

A 第一にはもちろん真琴がよそ見をしていたと思ってそう注意しているのであるが、第二には本作のテーマをさりげなく伝えているのだろう[yonabe]。タイムリープは「前見て歩くため」にあるというわけである。

Q2.S19.1 和子の部屋で桃が置いてある場所[S19-1]はどこなのか。机の上にはないようだが。

A 流しの横。最後の和子の部屋のシーンで紅茶を淹れた[S100-1]のと同じ場所(同ポ)である。
 なお、真琴が持って行った桃の数はなんと20個前後もあり[S16-40]、相当重たかっただろうし、和子一人で食べるには明らかに多すぎるが、ここで映っている数はそれよりやや少ないと見られる。同僚にお裾分けしたのかも知れない。
 ちなみに、[絵コンテ S19-1]では、このカットは、畳の上の作業台(本編にはない)に載った件の「絵」が画面中心に映り、その下に袋に入ったままの桃が覗くようなレイアウトになっている。
 なお、持って行った果物が桃なのは、一つにはこの時期が旬だからということもあるだろうが、もう一つ、「モモクリ三年カキ八年」という歌詞が鍵となっている[大林版]へのオマージュなのかも知れない[ブーブーz]。

Q2.S19.2 和子に「いつになったら結婚するのか」[S3-7]を訊くのはどうなったのか。

A 物語構成上は和子が未だ独身であることを観客に示せればよく、実際にそれを訊くシーンは重要でないと考えられたために用意されなかったのだろう。一般に、物語の導入部では、脚本家はいかにセリフに説明的な響きを持たすことなく物語の設定を説明するかに意を凝らしている。
 物語世界に閉じた説明としては、真琴は踏切事故とタイムリープの件でそれどころではなかったために訊き忘れたと考えてはどうか。
 なお、最後の和子の部屋のシーン[S100]でそれに関連した話題について和子が話すが、別の日である。

Q2.S21.1 [S21]で河原の子供達が石投げ遊びをしているのは何か意味があるのか。

A もちろん跳ねていく石がタイム「リープ」を表わしているのだろう。
 ちなみに、[S21-18]では3回石が跳ね、4回目で水面下に沈む(そしてその直後時が戻り始める)が、[絵コンテ S21-18]では4回目も跳ねている。
 なお、[S110-13]で最後に彼らが千昭に追い散らされて帰っていくことの象徴的意味に注意。

Q2.S23.1 真琴の河原からのタイムリープ後[S23-9]、TVの男性キャスターが「7月12日火曜日」と言っているが。

A 作品で描写されている出来事の起こったのが、本作品の公開年や[公式サイト]の記述に合わせて2006年だと考えるならば、「7月12日水曜日」が正当で、これは誤りということになる([絵コンテ S23-9]も同様)。一方、7月12日が火曜日であることを逆に根拠として使えば、作品で描写されている出来事は2005年に起こったと考えることもできる。[S74-4]の背景にポスターのある第52回全国高等学校剣道大会が2005年8月に行われていることも、2005年説の補強証拠となる。ただし2005年説では、7月13日の教室の黒板に木曜日と書かれていることとは矛盾する。

Q2.S23.2 [S23]で、母と妹はともかく、父まで揃って平日の真っ昼間に帰ってきたのはなぜか。

A 不明。たまたま休みだったとでも説明するほかない。

Q2.S23.3 [S23]で、真琴が自然に河原に戻ってしまったのはなぜか。

A 本編で真琴がどのようにするとタイムリープできるのかについては曖昧な点が多い。ジャンプするだけでいいのではないことは[S20-11]で示されている(ただし、このシーンでの1分の経過が早すぎる点を重視し、ここで「数十秒未来にタイムリープした」と解する場合にはそうとも言えないことになるが、一般的な見解とは言えない)。一方、ジャンプなしにタイムリープしたと見られるシーンは多々ある。[原作]では、危険な目にあってひやりとしたとき、あるいは強く念じたときにタイムリープすることになっているようで、例えば、福島先生に鉄骨が落ちてくると嘘をつかれて和子が驚いたためにタイムリープが起こるという場面が存在する。そこで、一つの解釈として、本作でもこれに準じ、激しい心の動きがタイムリープ発動の一つの要件になっていると考えることも可能だろう。
 そうだとすると、プリンを食べようとした美雪(又は母?)に対する真琴の怒りが河原へ戻るタイムリープに繋がったと考えられる…のかも知れない。

Q2.S23.4 [S23]ではプリンを食べようとしたところで家族が帰ってきたのに、[S25]では同じ時点で帰って来なかったのはなぜか。

A 本作では、世界には常に不確定な部分が存在するので、歴史をそのまま繰返しても結果は同じにならないという解釈を採っているようである(なお、[ノートコメント p.36])。カラオケのシーン[S33]で功介が注文する飲み物の内容が変わっているのもそういうことなのだろう。しかし[S25]の場合、真琴がタイムリープで戻った時点では、家族は既に坂の途中あたりまで帰ってきているはずである。この条件から出発して異なる結果が生じる因果経過はいささか想定しにくいが、敢えて言えば真琴を「マコちゃん」と呼ぶ近所のおばさん[S4-4]にたまたま家族が呼び止められたのだろうか。

Q2.S23.5 一度目の紺野家へのタイムリープ[S23]のときは、棚にぶつかったときに缶のようなものが落ちてきていないのに、二度目のタイムリープ[S25]のときは落ちてきている。なぜか。

A ややわかりにくいが、一度目と二度目とではぶつかったものが違うから。一度目はダイニングの食器棚、二度目はリビングのTV横の茶箪笥。

Q2.S23.6 真琴のプリンのモデルは。

A [S23-7]の箱のマークとプリン容器の形状を見る限りモロゾフのカスタードプリンのようである([かわさき 第十一話]も参照)。現在販売されているモロゾフのカスタードプリンには、小さめのミニプリン(210円)とやや大きめの通常のプリン(315円)があるが、両者にはサイズ以外の点にほぼ違いがなく、真琴が食べていたのがどちらなのかはかなり微妙である。また、現在モロゾフで使われている持ち帰り用の箱のシールは、賞味期限でなく購入日が記されているなど、書式が異なっている。
 箱のシール上には「杉並店 〒162-0043 東京都杉並区西荻 2-1」とも表示してあるが、この店名は実在しない。近いところでは、東京都杉並区上荻1-7-1の荻窪駅ビルのルミネ内にはモロゾフの荻窪ルミネ店が存在する(荻窪駅は制作会社マッドハウスの最寄駅)。また、杉並区には西荻北・西荻南という町名はあるが、西荻は存在しないようである。郵便番号の162-0043は新宿区早稲田南町のもの。
 なお、[絵コンテ S23-7]では「ケーキ屋の箱」という表現になっており、モロゾフのマークもない。

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