BS TBSにて久しぶりに再鑑賞。
- 父から受け継いだ名門ワイナリーでワイン一筋の人生を歩んできた兄が、安物ワインを大量生産する大衆ワインメーカーにそのワイナリーを売却しようとした弟を殺してしまう。倒叙ものミステリの代名詞刑事コロンボシリーズの中でも印象深い一本。
- 倒叙ものは犯人に対していかに共感を感じさせるかの勝負である。観客が犯人側に立つからこそコロンボに追いつめられるスリル(サスペンスないしパトスと呼んでもよい)を味わうことができるのだからである。この話で観客が犯人に共感するポイントは、経済原理に抗して伝統の職人気質を守ろうとする信念である。1973年の作品だが、この信念への観客の共感は今なお変わりない。ワインという題材そのものが変化の穏やかな分野であることもあるが、今見ても古さを感じさせない作品であった。