真犯人フラグ

 時かけ関係のページへのアクセスもほぼなくなり、昨今の当サイトのアクセス数はゼロに等しいのだが、1月末に瞬間的にアクセスが増えたときがあった。アクセスが増えたページは類別トリック集成の中の暗号記法のページ。Googleからの送客で、検索語は「江戸川乱歩 暗号」。どうやら、「真犯人フラグ」という推理ドラマで、「数字代用法」が使われたらしい。
 類別トリック集成を元ネタにしていると見られる推理もの作品は多い。正統派の推理小説だと読者もスレており、すぐネタが割れるから使いづらいだろうが、素人が多いドラマやゲームであれば結構そのまんまのトリックが使われていたりする。

靴の悪臭対策 – 最終兵器

 そろそろ暖かくなり靴の悪臭も気になりだす頃である。
 靴の日常的な悪臭対策としては、まず第一は毎日風呂に入ること、それができなくてもシャワーで足だけでも洗うことである。これだけで全然違う。
 第二はたまにアルコールをたまに靴の中に吹き付けること。市販のアルコールを霧吹きに入れるか、元から霧吹きタイプのものを使う。前者の方が割安である。

 それでもどうにもならなくなり、もう捨てるしかないというときに試す価値がある方法がある。それは、泡タイプの酸素系漂白剤を靴の中に吹き付ける方法である。しばらく放置して泡が消えたらアルコールタオル等でよくふき取り乾かす。筆者の試したかぎり、これにはほぼ100%の効果があった。
 注意点としては、靴の中にだけ吹き付け、外にはつかないようにすること。ネットで靴に酸素系漂白剤を使うというと大抵白いスニーカーに使う話ばかりだが、これは脱色が怖いからである。これを泡タイプを使って内側にだけ付けることで回避しているわけである。内側は脱色するかも知れないが、ただ、試した限りでは革靴でもなんともなかった。
 また、靴を丸洗いできないのでふき取るだけだから、内側に薄っすら漂白剤が残ることは避けられないだろう。革靴のようなものよりスニーカーのような布張りの場合に特にふき取りにくい。筆者はなんともなかったが、ここはそれぞれで判断してほしい。少なくとも素足で履くのは避けたほうがいいだろう。

2022

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 去年もこちらのサイトの更新は低調だったが、内部的には、ドメイン名を変更したり、お名前サーバー側でマシンの入れ替えがあったりでほどほどの変化はあった年であった。

 ウェブマスタ個人のネット活動はここのところYouTubeのチャンネルが中心となっている。
 1年ほど続けてみて思うのは、動画制作はあくまで趣味でやっているはずなのだけど、YouTubeはそれを超えてプロのように金も手間もかかる方向へ誘導し、悪く言えば他人をタダ働きさせるのに最適化されたシステムになっているということである。
 車載動画というジャンルはドライブのついでに撮っているから簡単に撮れる……と思われがちだが、そうでもない。
 まず車載動画を車載動画として当たり前のクォリティで撮るだけでそこそこの技術が必要である。これは車載動画というものを手あたり次第に見てみればすぐにわかることで、画質悪い画角悪い映り込み激しい真っ暗で何も見えないなどなど、ふつうの車載動画と呼べるレベルに達してない動画がたくさんある。何も気にしないで撮ればそうなるのである。
 ちなみにガラスへの映り込みという問題はカメラを車内に設置すると必ず起こる問題で、筆者も車内設置派なので相当悩まされている。今のところ、画質重視の車載動画YouTuberの間では車外に設置するのが主流だが、直結電源供給が難しい、転落のリスクがあるなどそれはそれで問題がある。
 また撮影のときはドライブのついでということはまずない。それなりに面白そうなところを探して撮影のためにわざわざ出かけているのである。敢えて言うなら撮影のついでにドライブしている感覚である。そしてこれがカネも時間もかかる。車載というジャンルの場合やはり高速代燃料代が動画一本あたり数千~1万円程度はかかっている。しかし動画から一銭も収益は上がらない。仮に収益対象のチャンネルに育ったとしても、売上額は(再生回数×0.01)円くらいといわれており、1万再生されて100円である。高速代はもちろん燃料代にもならない。
 となるとなんだかバカバカしいようだが、YouTubeは再生回数や評価数といった数字がダイレクトに出るシステムで、大体は悲惨な数字しか出ないがたまに当たりが出て数字が伸びることがある。これはYouTubeが意図的にやっているのか知らないが、こういうのがあるからなかなかやめられない。
 また、以上のような事情を前提とすれば、YouTubeの動画というのは動画主が苦労して作った動画を視聴者に見せてあげている……ということになるはずなのだが、実際には立場が逆みたいになっており、ちょっと難があるというと平気で低評価なんて付けてくる視聴者もいる。こういった数字を通じて制作者が視聴者にコントロールされるような形になっている。こうなると、金ももらってないのにやっているのはなんだか仕事みたいなのである。そしてそのコントロールは、さらにカネも時間もかかるような方向を向いている。
 これは作品を作るという分野の趣味では多かれ少なかれ存在する問題と思われるが、YouTubeはそういうところを煽るシステムとしての側面がある。

 以上から、もしYouTubeの動画制作をこれからやるという人にアドバイスするとするなら、動画はあくまで趣味であると自覚し、それに掛ける予算と時間を趣味として妥当な範囲にコントロールすることである。月1万円くらいの予算でやりくりしてやっている分には、それなりに面白い趣味といってもいい。そこを踏み外さないことである。

詩学 (三浦洋訳)

 別にアリストテレスの研究をしているわけでもないのだが、『詩学』についてはある程度読み込んで簡易用語集という記事を書いたこともあった。そのため新訳が出るとちょっと気になる。
 近年では、岩波書店で新しいアリストテレス全集が出て、そこに『詩学』が入ったという話は聞いていたが、なにしろ高いので読む機会はないままであった。しかしそれとは別にいつの間にやら光文社の方で新訳が出ていたようで(2019年)、こちらは文庫版プライスでお求めやすく、先日購入した次第。岩波の文庫本の方は従来のバージョンのままようで、光文社としてはこの状況なら新たに出しても勝負になると踏んだのだろうか。

 この訳で目を惹いた点を箇条書きで。

  • 「筋」という訳が定番だった「ミュートス」というギリシャ語の訳が「ストーリー」になっている。わかりやすい言葉ではあるが、物語学でプロット、ストーリー、ミーメーシスといった用語を対義語の関係で捉える説も有力ななかで、大胆な訳とも言える。
  • 「エペイソディオン」の訳が「挿話」になっている。これは比較的一般的な訳し方だが、挿話という言葉はなにか本筋から外れたものという印象を与えるようで個人的には好みでない。「エピソード」なら許容範囲のように感じられるが……
  • 5章における悲劇の長さが一日以内という記述について、上演時間が一日以内という解釈を採っている。三一致の法則がこれを根拠としたというのは誤解と断じている。しかし私見では、やはりこれは劇中の時間が一日という意味だと思う。三一致の法則は現代ではあまり守られていないが、しかし少なくともシークエンス単位での劇中の時間が長すぎる構成のドラマは、ドラマというよりドラマのあらすじを見せられているような感じがするものである。これはストーリーテリングにおいてかなり普遍的に妥当する法則であって、古代ギリシャでそれが意識されていたと見ても不思議ではない。
  • 「ミーメーシス」の訳は「模倣」。オーソドックスな訳であり、また章によってはこう訳さないとおかしくなるところもあるが、しかし個人的には昔の訳語「描写」も捨てがたいところではあった。訳者による巻末解説では、訳語統一のため模倣としたとの釈明あり。また作劇論の文脈では、描写という言葉は、結論を言葉で語るのでなく証拠となる場面を直接提示するという意味で使われることが多いため、詩学のこの言葉の訳としては少しずれている面があるのも事実である。
  • 岩波文庫版では「思想」だった「ディアノイア」の訳は「思考」。わかりやすい。
  • 6章の性格についての説明。今回の三浦訳「先に述べた性格の方は、人物の行う選択がどのようなものであるかを示すような要素であるため、語り手が何を好んで選択し、何を嫌って回避するのかという内容を台詞でまったく語らなければ、性格は現れない。」。岩波文庫松本訳は「性格とは、登場人物が(何を)選び、(何を)避けるかが明らかでない場合に、その人物がどのような選択をするかを明らかにするものである。それゆえ、語り手が何を選び、何を避けるかということをまったく含まない科白は性格を持たない。」。なお「登場人物が~明らかでない場合に」の部分は後世の挿入とする説があるとの注記がある。さて三浦訳だが、岩波文庫訳より意味がクリアになった。ここは性格のうち語りとの関連について説明した箇所であるということが明確にされている。
  • 岩波文庫で「単純な(筋)」だったものは「単線的な(ストーリー)」。この訳の方がいい。「複雑な筋」の方はそのままで、これはなかなか難しいところ。「複線的」ではなにか別物のようになってしまうかも。
  • アナグノーリシスは「再認」。比較的一般的な訳。
  • 一般的には「苦難」と訳されてきたパトスは「受難」。これは悪くない。しかし、11章の定義部分の訳は「『受難』とは、破滅的であったり、苦痛に満ちていたりする行為を指す」となっており、岩波文庫版同様「パトスは行為」説を採っている。簡易用語集に書いた通り、私見は反対。
  • 岩波文庫版の「普遍的(筋書)」はそのまま。簡易用語集に書いたように私見ではこれは事件の真相のことを指すが、『詩学』の原文から離れすぎるので、訳本でそう訳すわけにもいかないだろうとは思う。
  • 18章の悲劇の2部構成の前半は「縺れ」。私見では、これは謎が深まっていく過程の部分を指しており、個人的には大正時代の訳「葛藤」を支持したいのだが、作劇の世界での用語「葛藤」は意味がだいぶ違ってしまっているので、今更難しいかもしれない。個人的には、「葛藤」の今の用法は、詩学のこの箇所の誤解に基づくものではないかと思っている。
  • これは翻訳云々の問題でなくむしろ原文の解釈の注意点だが、24章の後件肯定の誤謬の箇所について。ここで説明されている原理は、フィクションにおいて実際にはあり得ない設定を観客・読者に納得させるテクニックの基本であり、作劇上極めて重要な原理であるにも関わらず、この『詩学』以外のテキストではほとんど説明されているのを見かけない。この一節を読むためだけでもこの本を買う価値がある。しかしちょっと分かりづらいのが、足洗いの例示で、これは後件肯定の誤謬の例ではあるが、あり得ない設定を観客に信じさせる例ではない。ここはホメロスからの伝聞で書いた話なのでアリストテレス自身理解が甘かったのかもしれない。

 最後に、カタルシスについて。本書の解説でカタルシスについての訳者の解釈が詳説されており、それによるとカタルシスとは「憐れみと怖れから快を分離する……作用」のこと。この定義だとなんのことやらという感じだが、その他の箇所も参照して当ブログ筆者が解釈するならばこういうことらしい。つまり、悲劇は、観客が憐れみと怖れを味わう不快な経験としての面もあるが、一方でドラマを楽しんでいる快としての面もある。その「快としての面」を不快な面から分離して指す言葉がカタルシスだと。この解釈だと、「ドラマの結末で観客が味わう晴れ晴れとした気持ち」みたいな意味の現代的なカタルシスという言葉とは、全然関係ないということになる。
 確かに『詩学』本文のカタルシスという言葉をそういう意味の言葉に置き換えても意味は通るかも知れない。でもこれだとカタルシスという古代ギリシャ語の単語の意味から離れすぎてはいないだろうか。訳者によればカタルシスに近い単語には分離という意味で使われた用例があるとのことなのだが、分離(による快さ)という意味に解釈してもちょっと苦しい気がする。

 蛇足ながら当ブログ筆者の私見によるカタルシスの定義を再度説明する。まず前提となるドラマの構造として、登場人物には過ちを犯す人とそれにより被害を受ける人がいる。前者は観客と似た人物として描かれ、原則としてストーリーはその視点から語られる。前者は、観客なら犯しそうな過ち(ハマルティア)を犯したがために後者に犠牲(苦難、受難)を強いることになる。これゆえに、観客に憐れみ(罪悪感)と怖れが生じる。以上の展開を前提として、前者が後者から赦しを得るか、後者が窮地を脱するかして(両方の場合もある)、観客が罪悪感から解放されるときの感情が、カタルシスである。赦しを得るのは、言葉で赦すと言われるというパターンよりも、行動で示されることの方が多い。例えば、後者がすべてを知った上であえて自分が犠牲になる行動を選ぶことにより前者を救ったなら、それは前者を赦したことになる。赦さないで恨んでいるならそんな選択はしないからである。
 ただ、古代ギリシャの名作悲劇がすべてこのパターンに当てはまっているかいないかは、筆者の知識ではなんとも言いかねる。

tec.jpn.ph

 ieServer.netのサービスを利用していたtec.jpn.phは、jpn.phドメイン自体が失効しているようで、アクセスできなくなっている(ドメイン業者の設定した広告が表示される)。管理者である@agoraincさんのTwitterでの活動も昨年から見られなくなっており、少々心配な状況だが、いずれにせよtec.jpn.phでのアクセスが復活する可能性は低いように思われる。
 Twitterで検索すると、myDNS.jpあたりに移行した人が多いようだ。サイトがUSにあるらしいのが応答速度の点でちょっと気にはなるが、こちらも無料のサービスである。やはり個人運営らしい。

ns.mydns.jp [2604:180:f4::28b]に ping を送信しています 32 バイトのデータ:
2604:180:f4::28b からの応答: 時間 =116ms
2604:180:f4::28b からの応答: 時間 =109ms
2604:180:f4::28b からの応答: 時間 =109ms
2604:180:f4::28b からの応答: 時間 =109ms

2604:180:f4::28b の ping 統計:
パケット数: 送信 = 4、受信 = 4、損失 = 0 (0% の損失)、
ラウンド トリップの概算時間 (ミリ秒):
最小 = 109ms、最大 = 116ms、平均 = 110ms

 RTTは国内の10倍くらいあるようである。とはいえ、趣味の範囲なら実用性に問題はないだろう。

GoPro Hero9 Black

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 さて近況だが、最近GoPro Hero9 Blackを購入して、車載動画を撮ってみている。酷道・険道を中心に撮ろうと思ってはいるが、YouTubeではもはや掘りつくされた鉱脈というところもあり、有名どころの道は今更感が強い。とりあえず行止まりの道に目を付けたが、需要があるかは謎。
 GoProはアクションカムとして近年世界的に有名になったブランドで、GoPro Hero9 Blackはその今年……いや去年出た最新機種である。旧モデルのGoPro Hero8と比べると、5K動画が撮れるようになったのがウリらしい。GoProを選んだのは、車載撮影用に車のガラスに簡単に取り付けられるようだったからである。サクションカップ(要は吸盤)のマウントを使用するとかなりガッチリとフロントガラスに貼り付けることができる。
 いくつか撮ってみての感想だが、まず取り付けについては上述の通り問題なかった。ただし、吸盤の取り付け面が少しでも曲面になっているとすぐ剥がれるので要注意。また、アクションカムの特徴である手振れ補正とGoPro Hero9から搭載の水平維持補正機能もなかなか強力で、車載動画では必ずしも必須ではないかもしれないが、見た目がスムーズで悪くない。水平維持は、カメラの取り付け角度がややいい加減でも補正してくれるのが便利である。
 一方、カメラの画質については今一つといったところ。補正を効かせるから悪くなっているのもあるとは思うが、とにかくせっかく4Kで撮っても画質面であまり感動がない。また、暗いところではノイズが乗りやすい。これは多くのYouTuberのレビューでも指摘されている。さらに、ソフトウェアの品質が全体的によくなく、度々問題に遭遇する。
 概して、まだまだベンチャー企業の製品の域を出ない。最近、iPhoneの付属カメラの質が相当高くなってきており、YouTubeの比較動画などを見ていると、GoProを脅かす可能性は十分にある。ただ、どこにでも取り付けて撮影するというのは、iPhoneには無理だろう。

 YouTubeに動画をアップロードするというのも初めてに近い経験だが、いろいろ勉強になる。とにかくYouTubeにただ上げると相当画質が悪くなるのには参った。上述のように4Kで撮っても本来大してきれいには撮れないのだが、それでもYouTubeに上げるなら4Kがマストのようである。森の中のようなシーンでは圧縮が掛かりづらく、なかなか満足な画質にはならない。
 そもそもクルマのガラスが思った以上に汚いということもある。せっせと拭いたつもりでも後で見ると汚れている。
 YouTubeの収益化は登録者数1000人以上が条件だそうである。一般人にはとんでもない数である。

ひぐらしのなく頃に 業

 『ひぐらしのなく頃に』のアニメ第二期の放映が始まっているようだが、てっきり今回は解決編をやるのかと思ったらそうではなく、初めからやり直している風である。といっても放送は見ていないので、公式サイトのあらすじを読んだだけなのだが。鬼騙し編という名前だが、これはどう見ても鬼隠し編……と思わせて分岐するのだろうか? 謎解き編がきちんと書かれたのは綿流し編に対する目明し編だけだったので、もし鬼騙し編が新たに書かれた鬼隠し編の謎解き編だったりしたら面白い。
 鬼隠し編といえば、鷹野の登場が異常に早いことでも有名だが、鬼騙し編ではどうなったのかちょっと見てみたい気もする。

 いずれにせよ、真相まとめ記事へのアクセスが増えているのだが、こんな序盤からあれを読んでしまったら台無しである。文字を大きくしておいたが……

OCN

 筆者が自宅で使用しているISPはOCNである。昔このサーバーを固定IPアドレスで自宅に置いていたときは別のISPを利用していたが、お名前サーバーに引っ越した時に切り替えた。
 OCNの最大のウリは、ネットワークエンジニア憧れの(?)tier 1ネットワークだという点だろう。OCN曰くアジア唯一だそうである。tier 1ということは、どこからもトランジットを買う必要がないということだから、その他のISPのように上流とのトランジットの費用をケチってボトルネックを作る心配がない。
 ただ考えてみると、このことにどの程度の価値があるかには微妙なところがある。
 まず国内での通信についてみると、大抵のISPはIXに繋ぎこんでピアリングしているはずなので、よほど零細のISPやDCとのトラフィックでない限り、トランジット回線は経由しないはずである。
 一方、海を跨いだ国際通信については、KDDIなど余程の大手以外はトランジットか、外注のリモートピアリングに頼るしかないはずなので、自前でケーブルを持っているtier 1たるNTTが有利なはずである。
 ……がしかし、実は、海を跨いだ通信というのは想像以上に少ないのである。Google、YouTube、Twitter、Amazonといった著名外資系サイトはもちろん、直接にはあまり日本を意識していなさそうなサイトでも、大手のサイトであれば大抵、CDNを利用しているため、海外サイトに繋いでいるようで実際の接続先は国内ということが多い。
 例えば、筆者の自宅からYouTube.comへの経路は次のようである(tracertの6ホップ目以降。以下同じ)。

6 6 ms 5 ms 5 ms 2001:380:0:25e8::2
7 6 ms 6 ms 6 ms 2001:4860:0:1000::1
8 6 ms 6 ms 6 ms 2001:4860:0:1::199f
9 7 ms 7 ms 7 ms nrt12s02-in-x0e.1e100.net [2404:6800:4004:801::200e]

 6ホップ目からなのでこれだとわからないのだが、5ホップ目までNTT外のアドレスは(宅内のルータを除いて)なく、 2400:4000::/22のNTT Communicationsのアドレスを持ったルータを経由している。以下の例でも同様。
 2001:380::/32と2001:218::/32はNTTで、2001:4860::/32と2404:6800::/32はGoogleである。nrt12とあるのは、おそらく多摩市唐木田にあるKDDIのデータセンターで、そうだとするとどうやらパケットは東京都から外に出ていない。

 cnn.comへの経路は次の通り。

6 5 ms 5 ms 5 ms 2001:380:a110:5::1
7 6 ms 5 ms 6 ms ae-6.r03.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [2001:218:2000:5000::841]
8 5 ms 19 ms 23 ms ae-4.r30.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [2001:218:0:2000::11a]
9 6 ms 6 ms 6 ms ae-2.r01.tokyjp08.jp.bb.gin.ntt.net [2001:218:0:2000::2db]
10 6 ms 6 ms 6 ms 2001:218:2000:5000::40a
11 6 ms 6 ms 6 ms 2a04:4e42:1a::323

 2a04:4e42:1a::323はcnn.comである。直接所在地を示すホスト名などは表示されていないが、NTTの東京にあるルータと一つ隔てているのみで、RTTもほとんど変わらないことから、国内(おそらく都内)のサーバーに接続しているものとみられる。

 www.whitehouse.gov

6 5 ms 5 ms 5 ms 2001:380:a110:5::1
7 5 ms 5 ms 5 ms 2001:380:a110:6::2
8 5 ms 5 ms 6 ms 2001:380:0:21cc::2
9 5 ms 6 ms 5 ms g2600-140b-8800-018d-0000-0000-0000-0fc4.deploy.static.akamaitechnologies.com [2600:140b:8800:18d::fc4]

 アメリカを代表するこのサイトもAkamaiの国内(おそらく都内)サーバーにつながる。

 Google Mapsでアメリカを表示させて適当に見つけたWebサイト(ソルトレーク市のコンベンションセンター)への経路。

6 10 ms 20 ms 16 ms ae-3.r31.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [129.250.3.29]
7 8 ms 8 ms 8 ms ae-3.r01.tokyjp08.jp.bb.gin.ntt.net [129.250.6.133]
8 11 ms 7 ms 8 ms ae-0.edgecast-networks.tokyjp08.jp.bb.gin.ntt.net [61.213.160.214]
9 10 ms 8 ms 8 ms ae-66.core1.tkb.edgecastcdn.net [152.195.113.131]
10 7 ms 7 ms 7 ms 152.195.37.65

 こんなところまで国内にミラーがある。CDNを利用しているためである。GeoLocationだとアメリカと出るが、そうならこんなRTTのわけはない。

 アメリカは望み薄なのでヨーロッパで、ドイツのミュンヘン中央駅Webサイト(ドイツ国鉄)のサーバーへの経路。

6 10 ms 7 ms 7 ms ae-3.r31.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [129.250.3.29]
7 127 ms 123 ms * ae-4.r23.lsanca07.us.bb.gin.ntt.net [129.250.3.193]
8 121 ms 118 ms 118 ms ae-2.r00.lsanca07.us.bb.gin.ntt.net [129.250.3.238]
9 111 ms * 110 ms be3025.ccr41.lax04.atlas.cogentco.com [154.54.9.29]
10 124 ms 123 ms 123 ms be3271.ccr41.lax01.atlas.cogentco.com [154.54.42.101]
11 134 ms * 131 ms be2931.ccr31.phx01.atlas.cogentco.com [154.54.44.85]
12 145 ms 143 ms 143 ms be2929.ccr21.elp01.atlas.cogentco.com [154.54.42.66]
13 * 158 ms 158 ms be2927.ccr41.iah01.atlas.cogentco.com [154.54.29.221]
14 172 ms * 170 ms be2687.ccr41.atl01.atlas.cogentco.com [154.54.28.69]
15 185 ms 182 ms * be2112.ccr41.dca01.atlas.cogentco.com [154.54.7.157]
16 169 ms 167 ms * be2806.ccr41.jfk02.atlas.cogentco.com [154.54.40.105]
17 253 ms * 251 ms be2317.ccr41.lon13.atlas.cogentco.com [154.54.30.186]
18 263 ms * 262 ms be12194.ccr41.ams03.atlas.cogentco.com [154.54.56.94]
19 277 ms * 276 ms be2815.ccr41.ham01.atlas.cogentco.com [154.54.38.206]
20 278 ms * 275 ms 149.6.142.74
21 262 ms * 261 ms 62.214.38.53
22 262 ms * 261 ms 213.182.150.202
23 * * * 要求がタイムアウトしました。
24 * * * 要求がタイムアウトしました。
25 * * * 要求がタイムアウトしました。
26 * * * 要求がタイムアウトしました。
27 * * * 要求がタイムアウトしました。
28 251 ms * 251 ms 81.200.196.44

 やっとそれらしい経路になった。ロスのIXでピアリング先のCogentのネットワークに入り、アメリカ大陸を横断したあと、大西洋を渡っているようだ。Cogentはヨーロッパのtier 1。サーバーがCogent配下のネットワークに置いてあるのだろう。ちなみに、NTTは東京からあっさり太平洋を渡っているのに対し、Cogentは細かく刻んでいてホップ数が多いのが興味深い。
 ここでも、カットしてあって申し訳ないのだが、5ホップ目までの間もNTTの外に出ていない。tier 1でないISPだと、そのISPのルータがtier 1(ここでいうNTT)のルータの手前に入り、そことtier 1との間がボトルネックになることがある。そういう心配がないのがtier 1のメリットということになる。
 しかしとにかく、海外サーバーにつながるサイトというのは、探しだすのが大変なほどに少ない。

 OCNは、アクセス回線にフレッツ網を利用するISPの中では、シェアがトップだそうだが、料金で云うとやや高い方である。価格コムの価格表によると、最安のプロバイダと比較して月額費用が700円ほど高い。それに見合うだけの価値があるか、ここまでの実験結果を見ると微妙である。昔は、ここまでCDNだらけではなかったのだが……。
 ただ、アメリカ以外の海外については、大手サイト以外にはまだそれほどCDNが普及していないようなので、接続先次第ではある。また、海外とWeb会議したいといった用途では、CDNは無力である。
 なお、ここまで区別していなかったが、厳密に云うと、tier 1なのはNTT communicationsというよりはNTT Ltd(NTTグループ)である。そういう意味では、ぷららでも同じなのかも。

ドメイン変更

当サイトは永らくieserver.netさんの動的DNSサービスを利用してtec.jpn.phとして運用してきましたが、jpn.phドメインのDNSサーバーの運用状況が不安定となっているようなので、tec-jpn.netに移行しました。tec.jpn.phでアクセスしたときは転送されるはずですが、jpn.phが不安定なときはそうならない可能性がありますので、ブックマークの修正をお願いいたします。

IPv6

 自宅のルータをIPv6対応のものに変更。IPoE/MAP-Eで接続し、ついにIPv6環境へ移行した。
 各種OSでのIPv6のサポートが2000年ごろから始まってもう20年。実際にIPv6が使えるようになるのにこんなにかかるとは思わなかった。最後まで日本の有線インターネットの一般利用者のIPv6化を遅らせる原因となったのは、ブロードバンドルータが対応しなかったことである。主要ISPがIPoEの接続サービスを開始することになり、またIPoEは利用者側からの需要もありそうだということになって、どんくさい日本メーカーもやっと重い腰を上げたようだ。やっと体制が整ったのが2018年ごろらしい。もっとも、筆者の使っているOCNでIPoEが無料で使えるようになったのは今年の6月(それまでは有料オプション)。そういう意味では、プロバイダが本気になったのもつい最近と云えるかも知れない。
 なぜIPoEが急に盛り上がっているかというと、これはよく宣伝されているように、フレッツ網のPPPoEの終端装置が容量不足になってしばしば輻輳しているところ、それを回避して回線を高速化する手段として使えるからである。フレッツのNGN網はIPv6ベースであり、IPoE/MAP-EはIPv6でIPv4パケットを伝送する技術なので、IPoEを使うと必然的にIPv6化することになるのだが、IPv6が使いたくてIPoEを導入する人は案外少ないかもしれない。
 実際使ってみると、確かにある程度高速化の効果があるようだ。従来YouTubeなどは夜のゴールデンタイムだとHD画質では度々途切れていたのが、IPoEに換えてからはほとんどなくなった。一つ注意が必要なのは、ブロードバンドルータによっては、IPoEを使うとMSS clampが効かないものがあるらしいことで、jumbo frameを有効にしているPCに限って、PMTU Discovery Blackholeの問題がある一部サイトにつながらないというわかりにくい問題が発生することがある。当面の回避策はjumbo frameを無効にするしかない。

 ここでIPoE関係の用語をまとめておくと、まずIP over Ethernet(IPoE)は、LANで使用するのと同じ方法で普通にIPを使うという意味合いの言葉である。LANで使うIPという本来の意味でのIPoEは一応RFC 894という短いRFCで規定されている(ちなみに、jumbo frameは厳密に云うとこのRFCに違反する)。しかし通常、このような普通のIPoEはわざわざIPoEとは言わない。IPoEという言葉が使われるのは大抵WANの文脈である。NGN網のIPoEも、基本的には普通の使い方でIPv6を使う。ただ、NGNでのIPoE接続には、回線に対して割り当てるIPv6アドレスを、NGN網からインターネットに接続する業者(VNE)からNTTが預かって配るとか、ユーザーからのパケットをVNEのルータに送るためにソースアドレスを用いたポリシールーティングを使うとかといった、特有の運用上のルールがあり、IPoEという言葉はそれらを併せて意味するものとして使われているようである。
 IPv4をIPv6のIPoEに載せる技術をIPv4 over IPv6と総称し、これを使うとIPv4だけPPPoEを使うといったことなく、IPv6/v4両方に対応したWANをIPv6だけで構築できる。ユーザー宅内施設でプライベートIPv4アドレスを使用することを前提とした場合の具体的な技術としては、MAP-E、MAP-T、DS-Liteなどがある。MAPは、IPv6アドレスの中にIPv4アドレスが埋め込まれ、かつNAPT処理をユーザーのブロードバンドルータ側で行うのが特徴。また、NAPTで使用するグローバルIPv4アドレスは、1つをポート番号範囲(1つとは限らない)で分割して複数ユーザーで共用する。MAPのうちMAP-Eは、IPv4ヘッダをいじらずにIPv4パケット(データグラム)をそのまま丸々IPv6にカプセル化する方式。丸々載せるのでMTUは小さくなるが、IPv6区間のみでフラグメント化処理が完結するので、ユーザーから見たMTUは1500で変わらない。もっとも、IPv6ヘッダはIPv4ヘッダより大きいので、MAP-TでもMAP-EほどではないにしてもMTUが小さくなるのは同じである。

 IPv6を使ってみて新鮮な感覚を受けるのが、DHCP相当機能が標準搭載なので、LAN内の機器に自動的にIPアドレスが配布されること(v6アドレスは長すぎるので手入力があまり現実的でない)、そしてそのアドレスがグローバルアドレスであることである。プライベートアドレスにどっぷりつかってきた今までの感覚からすると違和感もあるが、これが本来のIPネットワークなのだろう。もちろんセキュリティ確保のためフィルタの設定は必須であるが、一般消費者向けルータでは標準で設定されている。また、Windowsのデフォルトでは、MACアドレスベースで生成された伝統的なIPv6アドレスではなく、乱数で生成した一時アドレスが使用される。
 Firefoxでアドオンを入れるとv6とv4のいずれで接続しているか表示できるのだが、それで見ていると、YouTubeなどGoogle系のサイトはv6で接続している。しかしそれ以外にはv6対応しているサイトはまだ少なく、あったとしてもCDNと思われるサーバーから画像などをダウンロードする部分だけがv6化されている程度である。AmazonやTwitterなど著名サイトもメインのサーバーはv6になっていない。また例によってどんくさい日本企業は、Yahooなど著名サイトも含めてまだまだv4のみのところが多い。もっとも、通信事業者はさすがにほぼv6対応しているが…。なお、高速化の恩恵はv4でもv6でも等しく受けられるはずである。
 Googleの統計によると、日本からGoogleにIPv6でアクセスしている率は35%とのことである。モバイル網ではIPv6が早くから普及しているのが影響していると思われるため、有線インターネットでどうなのかはわからない。こちらには日本のフレッツ光ネクスト利用者のIPv6化率が74.5%という数字もあるが、これは実際に末端でIPv6を利用している(ブラウザなどのクライアントアプリがIPv6アドレスを使ってサーバーに接続している)率ではないものとみられる。また、NGN網に限って言うと、2019年末で過半数がIPoEを使用しているという資料もある。