『殺人者はバッヂをつけていた』(1954)

 WOWOWメンバーズオンデマンドにて鑑賞。

  • 銀行強盗犯の情婦を監視していた刑事が彼女に惚れてしまい、彼女にそそのかされて、強盗犯を殺して金を奪うことになる。結局この目論見は失敗し、刑事が撃たれて話が終わる。
  • なんだかずいぶん説明的な邦題だが、原題は”Pushover”(「楽勝の仕事」「だまされやすい人」「すぐに寝る女」等の意)。
  • この頃に流行っていたいわゆるフィルムノワール、つまり悪女もの。だからこの話の結論は、この悪女の教唆行為は許されざることで、彼女に唆されて身を滅ぼしたこの刑事は哀れだ、というものになるはずだが、実際のこの作品の結末だとそのあたりが中途半端で、悪女を非難したいんだかそうでないんだかよくわからない、なんだかメロドラマ風な終わり方になっている。
  • 筋の中身は、同じ頃に作られたヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ!』や『裏窓』の影響を感じさせる。特に、殺人行為を行う側の視点でそれがうまくいくかどうかを観客が見守るという構造が『ダイヤルM』と似ているのだが、どうも『ダイヤルM』と比べるとこちらは今一つサスペンスが盛り上がらなかった印象である。いかんせん刑事の動機が純粋に私的利益の追求に過ぎないので特別肩入れする理由を感じられず、かといって殺されてしまう強盗犯の方にも同情しがたいので特別嫌う理由もなく、という具合で、刑事のすることが成功したとしても、それが観客にとって大して望ましいことにも望ましくないことにもならないため、結局話の先行きが観客にとってどうでもいいことになってしまったためではないか。また、犯行の計画があまり練られたものでないため、観客がそれならうまくいくだろうと確信できにくかったのもよくなかった。

50点/100点満点