マンガ雑誌の月刊「IKKI」(小学館)、以前から名前は聞いていたもののどこで買えるのかよくわからずにいましたが、ヴィレッジ・ヴァンガードに売られているのを発見。購入して読んでみました。
この雑誌、講談社でいうところの「アフタヌーン」に相当する位置にいるマンガ誌で、新人・準新人の作品が中心、しかしそれだけだと売れないのでベテランの作品も若干載ってます、という感じのラインナップになってます。
マスターショット
載っていた作品をいくつか読んで、読者の立場から一つ新人の方々に言いたいことがあります。
シーンが変わったら早めにきちんとしたマスターショット(エスタブリッシングショット)を入れてください!
マスターショットとかエスタブリッシングショットというのは映画の用語で、マンガの世界では用語が異なるかも知れませんが、要するに場所全体を入れてロングで撮ることにより、そのシーンの登場人物等の位置関係をはっきり描写するショットのことです。人間というものは新しい場所に来たらまず周囲を確かめたい生き物のようで、この欲求が満たされないとイライラします。それに、周囲が見えないということは人物の置かれている状況もわからないということなので、そのまま登場人物間の対話が進むとなんの話をしているのかわけがわからないという感じも受けます。マスターショットを一つ入れることで、これらの問題に効果的に対処できます。
以下の例をご覧下さい(画像は著作権法32条1項により著作権者に無断で引用しています)。
まずは良い例。「ビックコミックオリジナル」1022号(2008.8.20号)掲載、石塚真一作『岳』第66話「指令塔」p.134より。シーン頭(場面転換直後)からの1ページ分。
つぎに改善を要する例。「IKKI」66号(2008年9月号)掲載、オノ・ナツメ作『さらい屋五葉』第33話「相酌」p.110より。この話の最初のページ。
ひょっとすると始めにマスターショット的なものを入れるという意識自体はあったのかも知れませんが、始めのコマには玄関の様子が含まれていません。これでは、腕を怪我している人物が道場の玄関で二人の道場破りに応対しており、庭にはもう一人の人物がいてその様子を見ているという状況が分かり易く描写されたとは言えません。
『五葉』を例として使ってしまいましたが、同じような問題を抱えている新人作(オノさんが新人かどうかは不勉強にして存じ上げませんが)は他にも多いように感じられます。
ぼくらの
IKKI掲載作のなかで、『ぼくらの』は異彩を放っていました。これはアニメ化もされているそうで、新人作中心のIKKI掲載作といっても、これはむしろメジャー作品と言った方が近いのかもしれません。私も時々題名を目にすることはあったのですが、実際に読んだのは初めてでした。
たった一話読んだだけなんですが、細やかな心理描写に引き込まれます。良くできた物語ってのはこういうものなんですよねえ。
ただ、なんだかエヴァンゲリオンに似ているような気がするのと、人物の顔にヴァリエーションが乏しいのは残念。
でも今度単行本買ってじっくり読んでみます。
というわけで、恒例のAmazonアソシエイトリンク。どうか一つよろしくお願いします。