アニメ界のダブル守といえば細田守と押井守。『スカイ・クロラ』公開の関係でTV放映されたこともあって、押井守作品をいくつか久しぶりに再見する機会に恵まれましたが、漠然と、押井守オリジナル脚本の作品ってなにかが足りないなあという感じがしました。具体的にそれは何だろうとしばらく考えていたところ、一つ思い当たることがありました。
登場人物が広い意味での「義務感」で動いてますよね。パトレイバーでは、警官の職責だから犯人を捜すのだし、ビューティフルドリーマーでは全員参加必須の学校行事だから生徒の義務として学園祭に参加する。これは物語の辻褄を合わすという意味では説得力はありますけど、反面、キャラクターの欲望が見えてこない。欲望が見えてこないと本人の性格が見えない。性格が見えないと人物の印象や魅力が薄くなる。
パトレイバー2では南雲隊長の行動原理に若干欲望の要素が垣間見えたかなというところまではいったのですが、結局2度ある柘植との邂逅で、南雲隊長は彼と駆け落ちするのでなく彼を逮捕するという選択をする。やっぱり結局、警察官としての職責、義務を優先するストーリーになってるわけです。
ところが、スカイ・クロラではその一線を越えたようにも見えます。ストーリーはほぼ原作小説通りなんですけど、小説では恋愛の要素はごくほんのりと香る程度に過ぎないのが、アニメの方ではかなり前面に押し出されてます。とはいうものの、スカイ・クロラでは押井守監督は脚本を担当すらしていないのですよねえ…