あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
WOWOWにて鑑賞。
- 高村薫デビュー作が原作。井筒和幸監督。
- 井筒和幸監督の言いたい放題レビューは深夜バラエティーでよく見ていたものの、監督作を見るのは初めて。どんな映画を撮るのかと思っていたが、本作の出来から判断するに、日本の現役映画監督としては実力のある方と言っていいと思う。ただ、主演の妻夫木聡の演技は、もう少し演出(=演技指導)すべきところがあったようにも思われる。
- さて例によってシナリオだが、まず話の中身をざっくり言うと、6人の男たちが銀行から金塊を強奪する話である。オーシャンズナントカとかミニミニナントカとかの日本版と思っておけば大体問題ない。実際に銀行強盗をするシークエンスは全編125分のうちラスト40分間で、残りの85分のうち開巻からの30分程度は人物紹介、続く50分ほどは準備行為のエピソードに費やされる構成である。
- まず、ラスト40分の強盗のシークエンスは、若干視点の置き方に混乱が見られたものの、まずまずよくできていた。犯罪の手口というものは、常に興味深いものである。なお、シナリオとは関係ないけれど、火薬の量も最近の邦画にしては奮発した方と思われる。この手の映画の映像の迫力は撮影で使用した火薬の量に由来するといって過言ではない。
- しかしその前の85分がどうも今一つ退屈である。大きく言えば葛藤の作り方に関して問題が2つあって、第一の問題は、男たちの強盗の動機をきちんと観客が共感できるように説明しないままに話を進めていることである。こういう話の場合、なるほどそのやり方ならうまくいくかも知れない、またそのような状況なら強盗を実行すべきだ、と観客にまずはじめに思わせることが必要で、さもなくば主人公たちがどんなピンチに陥っても観客にとって他人事になってしまう。
- 第二の問題は、強盗の準備を阻む障壁となっている事情が話の中身に対して本質的でなく、とってつけたようであることである。この話では、強盗の準備行為を繁華街を仕切る愚連隊や北朝鮮の工作員が邪魔しようとするのだが、なぜこの話に愚連隊や工作員なのか、必然性が感じられない。この話が直接に説明しようとしているテーマは、要するになんとかして銀行から金塊を盗み出すことは可能かなのであって、その問いに対して「工作員や愚連隊がいたら難しくなる」などというのはそもそも話題から外れたことだし、興味もないことである。銀行強盗には一般に工作員や愚連隊の妨害がつきものだというのなら別だが、そんな話は聞いたことがない。
- また、冒頭いきなり工作員がらみの話から始まっているが、この話は本筋ではないのだから、こんなところに置いてはいけない。これではまるでモモが主役みたいではないか。
60点/100点満点