3D吹き替え版にて鑑賞。
- 『ロード・オブ・ザ・リング』(指輪物語)シリーズの前日譚にあたる『ホビットの冒険』の映画化三部作で、『ホビットの冒険 思いがけない冒険』に続く第二作。今回は175分の大長編となった。
- 13人のドワーフと魔法使いガンダルフとともに、はなれ山に住む竜退治の冒険に出かけたホビット族のビルボ。旅の途中、ドワーフたちの宿敵オーク族のアゾク一味に追われたり、トロルやゴブリンに捕まったりしつつも、辛くもそれらの危機を切り抜け、姿を消すことのできる魔法の指輪「一つの指輪」を手に入れたというのが前作までのあらすじ。
- 続きを旅する本作でも、一行は相変わらずオークに追われ巨大グモだの森エルフだの地元の町の人間だのに捕まるのだが、例によってなんとか危機を切り抜ける。そしてついに旅の目的地、はなれ山に辿り着き、ドワーフたちの宝を独り占めしている火吹きの竜、スマウグを倒すために奮戦する。しかし結局それは上手くいかず、怒った竜が地元の町エスガロスを襲いに行くところで話が終わる。
- 相変わらず背景美術は美しい。今回はホビット庄やエルロンドの館は出てこないけれど、ブリー村やエスガロスといった町の造形が見どころである。
- そしてまた相変わらずシナリオは今一つである。前作から、というより『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの頃から続くこの脚本家の根本的な問題として、人物の動機付けが雑という問題があって、これはある程度は原作側の問題でもあるが、アリストテレスが『詩学』で指摘しているように、文章で表現された物語と比較して、シーンそのものを再現して見せるドラマでは、出来事や行動の不自然さが露見しやすいので、小説を原作に使うなら、そこを補うのは脚色者の責任である。
- また、本作には原作にないちょっとしたロマンスの筋が追加されているが、いかんせんこちらも人物の動機付けが薄いし、そもそも本筋との関係が希薄ないかにもとってつけた風な筋で、つまるところこの試みは成功していないというほかない。
- またこのシリーズには、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズとのつながりを強調する冥王サウロンの復活に関する筋が追加されている。確かに、指輪物語の原作の追補編では、当時サウロンが着々と復活の準備を進めていたことにされてはいるのだが、それは後付けの設定であって、『ホビットの冒険』の話そのものにはあまり関係がない話である。そういう話を無理に付け加えているものだから、その筋に切り替わるたびに話が停滞してしまっているように感じられた。
- 総合評価としては、まあ、原作通りの筋の部分については、原作ファンに対しては一応の合格点をつけられるだろうけれども、前作同様、一見さんにはお勧めできない出来である。
30点/100点満点
ただし原作ファンに対しては60点