設定

Q1.2.4 魔女おばさんとは何者か。

A 真琴の叔母で[公式サイト キャラクター&声優][DVD通常版 ライナーノーツ][週アス][ぬるヲタ]、本名は芳山和子[ノートブック p.72][エンドロール]。[原作]や[大林版]の主人公と同姓同名であり、本編での彼女は概ねその約20年後の姿という設定で描かれているようであるが、細かく見ると問題もある([Q1.1.2][Q2.S100.1]など参照)。彼女の名前は、同僚らしき女性に内線電話を取り次がれる場面[S18-2]で苗字が一度呼ばれるのみで(ちなみに、[大林版]のラスト付近にこの内線電話のシーンに類似したシーンがある)、真琴の母も魔女おばさんとしか呼んでいない[S3-6]ため、この点での本編と[原作]や[大林版]とのつながりはやや分かりづらい。一説には当初声優に[大林版]でヒロイン芳山和子を演じた原田知世が起用される予定であったとされており、これが実現していれば両者の関係は自明であったろう。
 本作品の下敷きになった作品の一つである[どれみ]には、魔女の「未来さん」が準主人公として登場するが、この未来さんの声を原田知世が担当している。「魔女おばさん」という言葉はこれに由来するものと思われる。
 和子の年齢は30代後半とされている[公式サイト キャラクター&声優][DVD通常版 ライナーノーツ](なお、本編公開当時の原田知世は38歳。実際に和子役の声を担当した原 沙知絵は28歳)。[原作][大林版]では和子に妹がいるが([原作]では名前不明。[大林版]では良子)、姉がいる様子はなく、この点本作品では設定が変更されたことになるが、これはおそらく、和子が30代後半で、真琴の母が妹となると、真琴の出産時の年齢が若くなりすぎるからだろう。ただ、真琴が美雪に対して姉であるという意味では設定に変更はない。

Q1.2.6 真琴ら三人が野球をしているグラウンドの名前は。

A 哲学堂グラウンド[絵コンテ S2]。モデルとなったのは、東京都中野区の哲学堂公園の野球場[談話ノート 00:31:40][談話ノート 00:37:18][ロケ地ガイド]。グラウンドの両端に1つずつダイヤモンドがあり、それぞれA面とB面と呼ばれている。真琴たちの使っているのはA面(現地の様子(A面ホームベース側から))。その出口付近に水飲み場がある。
 ちなみに、本編中でグラウンドと名の付くものには、ほかに学校のグラウンドもある。芝のグラウンドと土のグラウンドの2つがあり、芝のグラウンドの方には裏門がある[絵コンテ p.189]

Q1.2.7 担任の福島先生の担当教科は。

A 数学IIの小テストを実施したことから数学と解するのが普通だが、国語辞典を真琴に落した[S79-3]ことを根拠とする現代国語説[検定上級]などもある。[パンフ]では数学説に立つ説明と現代国語説に立つ説明とが併存している。現代国語説は、[大林版]の福島先生が国語教師であったことの影響を受けたものかも知れない(ただし、こちらの劇中では「総合国語」の教科で漢文・古文を教えている)。
 福島先生は、立ち位置の違う和子を除けば、唯一[原作]から名前を引き継いだキャラクターである。とはいえ、[原作]では中学の理科教師で、タイムリープについて和子の相談相手にもなるなど、やはり大分設定が違う。また、[原作]でも一時限目は数学であるものの、その担当教師は福島先生ではなく小松先生である。

Q1.2.8 倉野瀬高校のモデルは。

A 正門付近([S4-13]など)や真琴の教室([S5]など)、中庭([S8]など)など、かなりの部分は東京都杉並区の東京女子大学善福寺キャンパスがモデルとなっている[はとろん]。[WP東女]によると、「キャンパスは1920-30年代にかけてアントニン・レーモンド設計の建築群によって構成され、正面の本館を含む計7棟の建造物は国の登録有形文化財に登録されている」。ただし、建物の配置は若干コンパクトに変更されているようである。なお、現在では東京女子大正門の守衛室は新しくなり見かけがかなり変わっている。
 その他、都立国分寺高校など、いくつかの高校も部分的にモデルになっている。[エンドロール][ノートブック p.76][かわさき][作画コメンタリ 00:41:33][O.N.][日詰]参照。
 なお、倉野瀬高校は「中堅進学校」[週アス]という設定。

Q1.2.9 倉野瀬高校でポロシャツを着ているのは真琴だけなのか。

A 面談の直後のシーン[S69]などで他の女子もポロシャツを着用しているのが見られる(他にわかりにくいが[S63-3][S87-7])。とはいえポロシャツを着ている女子が真琴のほかに少ないのは確かで、これは真琴らしさを際だたせたいという演出上の理由からだろう。なお、男子は高瀬がポロシャツだが、その他は判別が難しい。

Q1.2.10 真琴の制服のスカートはずいぶん短いようだが。

A この点は特に女性の観客の間で好みが分かれたようだが、積極的な性格の雰囲気を出すためにそのようにされたのだろう。現実にはもちろん丈が短いから積極的とは限らないが、[ノートブック p.107]の身長比較図などを見ると、スカートの丈と各女性キャラクターの積極性とが面白いように対応しているのがわかる(なお、[ノートブック p.73])。アニメの世界での一つの様式と考えるべきかも知れない。
 ちなみに、多くあるゴロゴロと転がるシーン、椅子に座って足を組み替えるシーン[S38-3]、踏切事故で真っ逆さまに落ちていくシーン[S16-46]なども含め、中が見える瞬間は本編中一度もない[作画コメンタリ 00:21:56]。アニメ界ではこういった不自然さを一般に「鉄壁ガード」等と呼んでいるようである。

Q1.2.11 倉野瀬はどの辺りにあるのか。

A 倉野瀬は架空の街であるが、東京にあることは間違いなさそうである。細田監督は、「モデルは上野近郊、商店街の坂道は中井付近」[ノートコメント p.41]と説明しており、モデルとなった場所は分散している。しかし敢えて倉野瀬の位置をいずれかに定めるとするとどうなるか。それぞれの立場から有利な事情を挙げると大体次のようになる。

1. 上野近郊説 上野の近郊にあるとする立場。
(考えられる理由)
  • [ノートコメント p.41]で「モデルは上野近郊」とされている。
  • [DVD通常版 ライナーノーツ][公式サイト]でも真琴が「東京の下町にある高校へ通う高校2年生」と紹介されている。
  • 電車の行き先表示が「上野」「大和田」であったことから京成本線沿線と考えられる。
  • [絵コンテ S17-15]に描かれている川に「隅田川」との指定がある。
  • 東京国立博物館[S18-5]に歩いていける距離である。
  • 河原の風景のモデルが荒川である[ノートブック p.79][Q1.2.17]。
2. 豊多摩説 豊多摩地域ないしその周辺にあるとする立場。
(考えられる理由) なお、豊多摩地域にモデルの場所が多いのは、制作会社であるマッドハウスが杉並区荻窪にあることと無関係ではないものと思われる。本編の試写会が行なわれたなかのZERO(もみじ山文化センター)もこの地域にある。また、本作公開時には、西武鉄道で本作のポスター2種の絵柄を用いた「西武線 夏休み親子1日フリーきっぷ」が販売されたこともあった。

3. 確定不能説 モデルとなった地域は分散しており、東京であるという以上に位置を確定することは困難であるとする立場。

Q1.2.12 倉野瀬の駅はどこにあるのか。

A 果穂が「駅向こうの南町」[S85-2]という表現をしていることから、倉野瀬には駅があるものと思われる。倉野瀬商友会のモデルとなった中井商友会は踏切すぐ傍にある西武新宿線中井駅の駅前商店街であり、倉野瀬商友会の設定資料にも駅前商店街と書かれている([ノートブック p.109][アートブック p.46])。しかし、倉野瀬の件の踏切傍に駅は見あたらない(上野方面につき[S17-15]、大和田方面につき[S16-40])。ただ大和田方面はあまり遠くまで描写されていないので、こちらの方向に少し行ったところに駅があるのかも知れない。
 なお、あの踏切の通過速度から考えて、優等列車はあまり停車しない駅と見られる。

Q1.2.13 倉野瀬商友会にある喫茶店の数は[作画コメンタリ 01:01:52]

A からくり時計のある側の坂に上から「マロニエ」[S16-1][S90-17]「お日様喫茶店」「砂漠の喫茶店」[S90-2]の3軒が確認できる。このほか、喫茶店といえるかは不明だが、「軽食 吹風庵」[S16-9]なる店が1軒、また、本編冒頭で朝自転車を急停止させた側の坂には、踏切そばに軽食店のようなものが1軒[S4-7](名称不明)存在する。

Q1.2.14 千昭が見に来た絵は古美術作品として実在するのか。

A 千昭が見に来た「白梅(はくばい)椿菊図(つばききくず)」は、本作品のためにマッドハウスの演出家(アニメーション監督)平田敏夫が描いたもので、古美術作品としては実在しない[ノートブック p.34][公式ブログ 2006/9/4](ただし、[エンドロール]では他に「染谷 洋」の名前もクレジットされている)。[究極映像]も参照。
 なお、劇中では作者不詳であり、この名称も和子が命名したものとされている[かわさき 第十八話]。

 劇中のあの展示は常設展ではないようで、展覧会の名称が設定されている。[作画コメンタリ 01:09:35][日本の美術][公式ブログ 2007/06/26]によると、その名称は「アノニマス―逸名の名画―」。「アノニマス」は英語の「anonymous」で、「匿名の,無名の,名を伏せた;作者[製作者など]不明の」(ランダムハウス英語辞典)の意、「逸名(いつめい)」(佚名とも)は、ここでは作者の「名前がわからなくなってしまっていること」(大辞林)をいう。

 展示の配置は、「白梅ニ椿菊図」の向かって左が「玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)」(玄奘三蔵はいわゆる三蔵法師)、右が「後鳥羽院(ごとばいん)隠岐(おき)配流図(はいるず)屏風(びょうぶ)」(Google Cultural Institute版)。これらは絵との間を隔てるガラスの壁と相まって、千昭の置かれている状況の象徴になっている[演出解説 00:16:12]。いずれも実在する美術品だが、現在同博物館を訪れても見ることはできない。
 その他の作品の配置は[日本の美術][公式ブログ 2007/06/26]参照。配置を決めた松嶋雅人は東京国立博物館の主任研究員で、細田の美大時代の同級生。[エンドロール]にもクレジットされている。

Q1.2.17 河原(土手)[S21][S43][S110]のモデルは。

A 荒川下流の土手のようで、[ノートブック p.79]には荒川グラウンド周辺の川原のロケハン写真が掲載されている([談話ノート 00:01:13][ロケ地ガイド]も参照)。ただし、劇中の描写よりも現地の河原はずっと広いし、背景の風景だけを見てもぴったり同じとは言えない。特に、背景の高速道路は、現地では川から見て東にあるため、高速道路の側に日が沈むことは有り得ない。なお、[Q2.S3.3]。
 ただ、[絵コンテ S17-15](真琴が踏切事故でなぜか助かった後、東京国立博物館のシーンに移る直前、走っていく電車の様子をフォローしつつ上野方面の遠景を映すショット)に描かれている川に「隅田川」の指定があることから、設定上は隅田川である可能性もある。

Q1.2.18 分かれ道[S42]のモデルは。

A 東京都豊島区高田1丁目26分かれ道と見られる[談話ノート 00:23:30][談話ノート 00:46:30][ノートブック p.79][かわさき][ロケ地ガイド]。見ての通り若干見かけは違い、特に現地に二股の標識(指定方向外進行禁止)が存在しないこと、劇中の分かれ道はどうやら少なくとも4叉路だが、こちらはY字路に過ぎないことは大きく違う。本編中の分かれ道がY字路でないのは、[S42-2]等での功介のハケ方の関係もあっただろうし(参考: 現地で功介がハケた方向を撮影したもの)、Y字路のままでは二股の標識が表面的には無意味になるという事情もあっただろう。なお、この分かれ道は[どれみ]に現れる分かれ道と非常によく似ているが、[どれみ]のそれは5叉路。
 ところで、二股の標識が、斜め左右のどちらかにしか進めないことを表わし、それが真琴がどちらかを選択しなければならないことの象徴であることは言うまでもない。この指定方向外進行禁止の標識に「ここから」の補助標識が付くことは実際にはありえないが、細田は主人公の物語が実質的にここから始まるという意味合いで付けたと説明している[演出解説 00:09:07]
 また、この分かれ道で、[どれみ]での友人たち同様、功介は斜め左右のいずれにも進まず、別の左の脇道へ進んでいく。それは、功介の家の方向が違ったから[倉野瀬図]というだけのことではなく、大きく見れば、功介は将来の進路(医学部進学など)を決めているが、真琴と千昭はそうでない[S14]こと、及び、その反映として、功介は進学のために告白を断ったが、千昭は未来に帰らなければならないのにも関わらず真琴に告白しようとしていることの対比的な象徴である。この観点からすると、最後に真琴が選んだ道が功介の道に近い左寄りであることも無意味ではないように思える(もっとも、[どれみ]の5叉路では左斜めが自宅、右斜めが魔女の未来さんの家の方向で、自宅の方向は単にここから取ったと見ることも可能)。
 この種の象徴的表現は細田の持ち味の一つである(なお、[Q1.1.5][記号論])。
 以上につき、[詳説どれみ p.36]

Q1.2.19 真琴が登校時[S4-4]や最後のタイムリープ[S102-3]で駆け下りた坂のモデルは。

A 東京都豊島区目白台富士見坂と見られる[談話ノート 01:11:15][ロケ地ガイド](下から見上げたところ。なおこの角度からの画は倉野瀬商友会のからくり時計のある坂のモデルにもなったとされる[ノートブック p.80])。[Q1.2.18]の分かれ道を左に進み数分歩いたところにある。実際に行ってみると見た目以上の急坂である。
 なお、紺野家が面している坂は富士見坂ではない。紺野家からその坂を下った突き当たりで富士見坂に接続する位置関係にあり、その突き当たりを左折すると富士見坂を下ることになる[S4][倉野瀬図]。このような坂は現実の富士見坂周辺には存在しない。

Q1.2.20 登場人物の持っている携帯電話が揃いも揃ってVodafoneばかりなのはどういうわけか。

A 本作の出資企業のひとつ「G.T.エンターテインメント株式会社」がソフトバンクグループの子会社であることとおそらく関係があるものと思われる[Q1.5.6]。ソフトバンクグループがボーダフォンを買収したのは2006年4月だが、ブランド変更は同年10月。なお、[週アス][ぬるヲタ]。
 なお、真琴役の仲は過去にSHARPのVodafone端末(903SH)のCMに出演していたことがある。出資はこのコネによるものだったのかも知れないと想像されないでもないが、実際のところは不明である。

Q1.2.21 その他、本編のモデルになった場所は。

A ロケハン地については拙著細田版『時をかける少女』ロケハンマップ(Google Maps)及びロケハン地写真集を参照。

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