- WOWOWにて久しぶりに再鑑賞。
- はじめ字幕版を見ていて、あまりに情報が足りなすぎる、怪しいぞと思ってこちらも見てみたら……案の定。情報量が違いすぎる。クリストファー・ノーランの映画は吹き替えで見よ、という貴重な教訓を得た。
- とはいえ、それでもやっぱりわかりにくい面が残るのは確か。ノーラン映画全般に言えることだが、重要なことはエピソードの形にして念押しするという普通の映画に見られる配慮が足りない。尺が足りないからだろうが、セリフでサラリと説明して終わり。その結果一つのセリフの重要度が上がり、字幕の翻訳の過程で情報を削ってしまうと意味が通じなくなる。
- ノーラン映画のもう一つの特徴は、展開の意外性を重視しすぎるあまり、人物の意図が事前に十分示されないままに話が進むので、観客が、視点を持っている人物と立場を共有して次の一手を考え、その結果に人物と共に一喜一憂するという楽しみがスポイルされていること。別の言い方をすれば、(撮影技術上でなく脚本技術上の)視点という概念について意識が弱い。だから、どうしても人物への感情移入が薄くなる。この作品でもやはりそういう傾向があった。この話の場合、一応主人公のコブの視点で話が進んでいるように見えるが、実のところ、コブの身の上については観客に開示されていない秘密が多すぎるので、彼に感情移入できるような構造になっていない。それならむしろ一貫してアリアドネの視点で話を進めるべきだったろう。彼女には別に隠されるべき秘密がないのだから。
- 渡辺謙の吹き替えを本人がやっているのが面白い。その他はプロパーな声優が演じているが、比較するとやはり渡辺謙の方が上手い。俳優の吹き替えと言えば、『Mr. インクレディブル』の吹き替えも出来が良かった。
「映画短評」カテゴリーアーカイブ
『東京物語』デジタル・リマスター版
(NHK BSPにて放送)
著作権失効対策ではあろうけれど、それにしてもこれは見直す価値のある高画質。ノイズが皆無とは言わないまでも相当除去され、画面のブレもない。また、HDらしい高解像度でピントが誰の顔に合っているかがはっきりわかる。映画館で見るよりよほどよく見えるのでは。音質もよく背景の音効がよく聞こえる。
中身は従来通り素晴らしいのだけど、何度目かの再鑑賞で、やはり若干ペースが遅いように感じられたのは致し方ないところか。大阪の息子はこの話に必要だったか今でも確信が持てない。
何度見ても杉村春子の演技は頭抜けている。
名作の影に名映画音楽あり。あまり言われないけれど、この作品も音楽がいい。最近の邦画はまず音楽が安っぽくてダメだね。
この話は、「老いた父が、ひとたび巣離れした子供はもはや当てにすべきでないと気付かされる話」である。
95点/100点満点
『ハート・ロッカー』
おお神よ、カメラを揺らす撮影監督に速やかなる死を与え給え。
65点/100点満点
ボルト
WOWOWにて鑑賞(吹き替え版)。
いや相変わらずディズニーの完成度は素晴らしい。アクションシークエンスの映像の出来がいいし、CGの犬がちゃんとかわいらしく描けてたのもいいんですが、やはりなんといってもシナリオがよくまとまっています。特にあのマネージャーのセリフ。あれはなかなか書けませんよ。
ただ、中盤少し必然性なく話を引き伸ばしているような感じはしましたね。これは近時のディズニーのアニメ全般に見られる傾向で、アニメはもともと分量の割に尺が短くなりがちだそうですし、(たぶん子供向けを意識しているからでしょうが)主要人物の数も少ないので、1時間40分埋めようとするとどうしてもそうなるんでしょう。
また作品のテーゼと見られるものをハムスターがセリフで演説してましたが、そういうやり方だとどうしても臭くなります。それにラストとそのテーゼとの関連が希薄だったような。特にリタイアの決断は母親でなくペニー自身にさせるべきじゃないでしょうか。流れ的に母親にさせた方が自然なのはわかりますが。
評価: 80点/100点満点