WOWOWにて鑑賞。
- 舞台は1932年、東欧にある名門ホテル、グランド・ブダペスト・ホテル。そのコンシェルジュ、グスタヴは、裕福な侯爵夫人の未亡人マダム・Dのお気に入りの愛人だった。ある時マダム・Dが亡くなり、グスタヴは遺言により高価な絵画『リンゴを持つ少年』の遺贈を受けることになる。マダム・Dの財産の大半を相続することが見込まれる息子ドミトリーは、グスタヴへの遺贈に憤慨してそれを妨害しようとするが、グスタヴはマダム・Dの館からその絵画を黙って持ち帰り、ホテルの金庫に保管する。だがその直後ホテルにやってきた警察により、彼はマダム・Dの殺人の疑いで逮捕されてしまう。どうやら館の執事セルジュ・Xが誰かに脅されて嘘の目撃証言をしたためらしいが、彼はその後行方不明で問いただすこともできない。無実の罪で収監されたグスタヴだが、やがて監獄の仲間と共に脱獄に成功し、ホテルマンたちの人脈を駆使してセルジュ・Xを探し始める。一方、何者かに雇われた殺し屋ジョプリングは、相続書類に不審な点があるのに気付いた遺言執行人のコヴァックスや、証言が嘘であることを認めたセルジュ・Xを殺す。結局グスタヴは、弟子のゼロとその恋人アガサの助けを借りて、ホテルの金庫にある絵画を取り戻して逃走しようとするが、そこへ偶然ドミトリーがやってきて、絵を巡っての銃撃戦となる。駆けつけた警察が関係者全員を拘束して調査した結果、ドミトリーがすべての黒幕であったことがわかり、グスタヴの疑いは晴れる。さらに絵画に隠されていた新たな遺言状により、グスタヴがマダム・Dのすべての財産を相続することになる。
- 『ダージリン急行』(2007)のウェス・アンダーソン監督・脚本・製作作。絵本のような漫画のような独特の絵作りが目を惹く作品で、アカデミー賞の美術系を含む4部門で受賞。とにかく映像だけでも見ておく価値はある。
- 一方、脚本面ではあまり出来がいいと思われない。語りが3重になっている若干技巧的な構成なのだが(そのことにあまり必然性を感じない)、メインプロットは上述のあらすじの通り、ミステリーを狙ったと思われる内容である。しかし、話の中に怪しい人間は最初からドミトリー一人しか出て来ないのだから、謎も何もあったものでない。その点で失敗作と言うほかないと思う。ただキャラクターは個性的だし、上のあらすじでは説明しなかったが、最後にグスタヴが死んで寂しさを感じさせる終わり方になっていて、見終わった後の感じは悪くない。それが評価されたのか英国アカデミー賞などでは脚本賞を取ったようだ。個人的には、それも少々評価し過ぎのようにも思われたが。
65点/100点満点