- 本日封切。アカデミー脚本賞・作品賞・監督賞等受賞作。
- 主人公リーガンは、20年前のアクション映画『バードマン』シリーズで主役を務め人気者になったことがあったが、今や売れない中年俳優である。彼は財産をはたいてブロードウェイの舞台をプロデュースし、自ら脚色主演を務めて本格派俳優として復活を図ろうとする。だが試演公演を終えてみると、注目されるのは準主役を務めた今が旬の人気俳優マイクのことばかり。マイクは傲慢な男で、舞台の上でも外でも好き勝手をし、リーガンの娘で今は付き人をしているエマにも手を出す。しかし経済的にも後がないリーガンはマイクをクビにすることもできない。一方、ブロードウェイ興行の成否は批評家のレビュー次第と、リーガンはマイクの助けを得てNYタイムズの著名批評家タビサにアプローチするが、彼女は低俗なアクション映画俳優の舞台など嫌いだと言い、舞台を見もしないうちから酷評することに決めていると言い放つ。さらに、エマには今どきの俳優はネットで話題になるような派手なスキャンダルが必要だが、そのことをわかっていないとなじられる。あれやこれやでリーガンは自信を失い、やはり自分はアクション映画しかできない俳優なのだろうかと迷う。試演公演の最終日、リーガンはふとしたことから公演中に劇場から締め出されてしまい、裸でブロードウェイの通りを駆けて劇場に戻るが、その様子を映した動画がネットで話題になり、翌日の初日公演は大入り満員となる。その初日の劇のラスト、主人公が拳銃自殺するシーンで、リーガンは本物の拳銃を使って自殺を図る。だがそれは観客に大いに受けた。リーガンは病院に運ばれ、辛うじて一命を取り留める。だがそこで目にしたNYタイムズのレビューはやはり酷評。「無知にも意外な長所がある(The Unexpected Virtue of Ignorance)」との見出しで、演劇を何も知らぬ俳優がまぐれ当たりしたと皮肉るものだった。リーガンは病室から投身自殺する。
- とにかくわかりづらいシナリオで、実際何が起こっているのか、何が言いたいのか、特に終盤において明らかでない点が多い。上記ストーリーは筆者の解釈によるもの。監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが共同脚本としてクレジットされているが、内容を見る限り、脚本の中身を理解せずに演出したか、あるいは内容が内容だけにわざとわかりづらくしたのか、とにかく悲劇的な脚本に見合っていないどこかあっけらかんとした演出になっていて、それがわかりづらさを増している。おそらく話の趣旨は、ドラマ作品に対する批評家や大衆の態度を批判するものなのだと思うが、とにかく見終わったときそれに共感しリーガンに同情するような構造になっていないわけで、シナリオの出来という面から言えばやはり失敗作だろう。また作品の趣旨について言えば、作品をリスクを冒して一生懸命作ったんだからソコを評価してよというのは気持ちはわかるが、それを客に向かって言うのは無意味であり、やはりプロ意識に欠ける主張というしかない。
- 役者の芝居は悪くないし、ワンシーンワンカット風の映像やカッコいい音楽は一度鑑賞してみる価値ありとは思う。
60点/100点満点