iOS版『逆転裁判123HD 成歩堂龍一編』にて引き続きプレイ。
- 前作の追加シナリオを除いた部分と同様に、本作もチュートリアル1話、ライトな雰囲気の2話、シリアス風の大詰め1話の計4話構成。
- 初めの3話については相変わらずなライトコメディ風ミステリーなのだが、第4話の『さらば、逆転』については若干の問題を感じないでもなかった。
これまでのシリーズで、主人公の成歩堂龍一は、受任時点では罪を犯しているとしか思えない被告人の無罪を主張し続けてきた。それは前作の第1~2話によると、弁護士は常に孤独な被告人の味方であるべきであって、被告人が無罪を主張するならばそれを信じるべきだ、という信念に基づくものであったはずである。ところがその後、早くも前作第4話の『逆転、そしてサヨナラ』あたりからこの原則が揺らぎ始め、『蘇る逆転』では被告人自身が有罪を認めているのにも関わらず無罪を主張するようになった。本作第1話『失われた逆転』と第3話『逆転サーカス』では被告人が無罪を訴えるパターンに戻ったものの、第2話『再会、そして逆転』はやはり被告人自身が有罪を疑う出だしであり、以上要するに、成歩堂龍一の信念が被告人を信じるというところにあるのかどうかがシリーズを通して混乱していたと言える。
そして『さらば、逆転』のストーリーだが、これは要するに、成歩堂龍一が被告人の主張に合わせて無罪を主張していたら、やがてそれは嘘で実際には罪を犯していたことが判明したので、検事と共に有罪を立証するという筋であった。結末では、実体的真実の重要性が強調されて話が終わる。
しかし本当にこれでいいのだろうか。確かにこの話の被告人は悪人ではあったが、それでも被告人の敵に回るのだから、明らかにシリーズ当初の信念と相いれない。成歩堂龍一に対する読者の支持の根拠はこの信念にあったと思うが、今までもあまり信念が一貫していなかったものの一応被告人の味方ではあったものが、ここで決定的に矛盾してしまった。明らかに有罪なら無罪を主張すべきでないというのは確かにその通りだが、それにしても弁護の方法は無罪の主張だけではないはずである。世の弁護人の大半は有罪の被告人を弁護しているのであって、有罪だから敵に回るというのでは弁護人失格であろう。以上要するに、常に被告人の味方であるような弁護人こそが立派だと褒めるシリーズのはずなのにそれと矛盾するようなストーリーであった。
いやこの事件では真宵が誘拐されるなど決定的に被告人との信頼関係が破たんしたのだから、コロシヤが言っていたのと同様に成歩堂龍一も被告人に対する義理はなくなったのだという反論がありうるかもしれない。確かにそのような状況では成歩堂龍一といえどもそうせざるを得ないのはそうなのだが、しかしそういうシリーズのテーゼに反するような出来事をそもそもシリーズの一話として語るべきでないということなのである。
それにあくまでも被告人は冤罪だから無罪を主張するのだということにしてしまうと、成歩堂龍一のところに舞い込む事件はどれもその時点ではどう見ても有罪にしか見えないものばかり(という設定)なのだから、今後何も事件を受けられなくなってしまうのではないだろうか。