『セッション』(2014)

 WOWOWにて鑑賞。

  • 名ドラムス奏者になることを夢見て、ジャズの名門シェイファー音楽大学に入学したニーマン。彼は入学早々、大学の最上級クラスにあたる「スタジオバンド」を指揮するフレッチャー教授の目に留まり、同バンドのドラムスの副演奏者を任される。だがフレッチャー教授の指導法はスパルタ式の非常に厳しいものだった。そのうえ、主演奏者の座を巡って奏者の間でも競争を強いられる。ニーマンは文字通り血の滲むような練習をこなしてようやく主演奏者の座を確保する。だがそのお披露目の演奏会に運悪く遅刻したことで、奏者から外されてしまった彼は、それに激怒してフレッチャーに殴り掛かかり、退学になってしまう。ニーマンの父はそれに憤慨し、フレッチャー教授の行き過ぎた指導を密告して彼を退職に追い込むのだった。しばらく音楽から遠ざかった生活をしていたニーマンだが、偶然通りかかったジャズバーでフレッチャーに出会う。フレッチャー曰く、誰かに密告されて大学を辞めさせられたが、あの指導は名演奏者を生み出すためにしたことで間違ったことをしたとは思っていないという。その別れ際、フレッチャーは今率いているバンドの次のライブで、スタジオバンドでニーマンと練習していた曲をやるので、ドラムスを担当してくれないかとニーマンを誘い、ニーマンはそれに応じる。このライブはJVC音楽祭といい、多数のスカウトもやってきていて、いい演奏をすればプロとして契約できるチャンスもあるが、逆にひどい演奏をすれば悪名が知れ渡り一生プロにはなれなくなるかも知れない。意気込むニーマンだったが、当日いざステージが始まってみると、曲目は事前に云われていたのと異なり、演奏したことすらないものだった。フレッチャーは、ニーマンが密告したことはわかっていると云い、どうやらニーマンに致命的な失敗をさせるつもりらしい。
     果たして、ニーマンの運命は? そして、フレッチャーは名教師なのか、それともただのサイコパスなのか?
  • 冒頭10分だったか、公式サイトで出だしだけ動画で公開されていて、それを観て以来、映画館で観なきゃなと思っていながら上映期間が過ぎてしまっていた作品。WOWOWで放送されるのをずいぶん待っていたが、やっと放送された。でも実際観て見ると、やっぱりこれは映画館で見たかったと思う。
  • 基本的には音楽映画みたいなものだけど、鑑賞してみるとシナリオも意外にしっかりしているのに驚いた。上のあらすじだとあまりうまく表現できなかったが、「フレッチャーの指導は褒めるに値するか、それとも逆に非難に値するか」(別の云い方をすれば、「フレッチャーは名教師なのか、それともただのいやな奴か」)というのがきちんと葛藤になっていて、焦点がそこからあまり外れずに話が進行し、そしてそれに答えが出た瞬間に話が終わる。綺麗なストラクチャになっていて感心した。アカデミー賞は助演男優賞、録音賞、編集賞の3つを取ったそうだが、脚本賞も取ってよかったのではないかと思う(実際には、規定上脚色賞のほうになるらしく、実際そちらにノミネートはされた。この年の脚本賞は『バードマン』、脚色賞は『イミテーション・ゲーム』が取ったとのこと。筆者は『イミテーション・ゲーム』はまだ見ていないが、『バードマン』よりはこちらがいい)。

85点/100点満点