コードレスアイロン

 筆者は物持ちのいい方で、アイロンは東芝のTA-601Sという1980年代製の骨董品を使い続けていたのだが、先日ついに電源ケーブルが断線して火花が散るようになってしまった。ケーブルだけ取り換えればまだ使うこともできたけれど、まあさすがに買い替えることにした。
 購入したのは同じく東芝のTA-FLW910である。TA-601Sからの30年以上の時の力は大きく、まるで別物のように進歩していたのだが、特に大きな違いと思われるのが、本体に電源ケーブルの付かないコードレス型になっていることである。製品には台座が付属しており、本体をそこにセットしておいてある間、給電される。
 ここでポイントになるのが、コードレスだからといって充電式ではないということである。つまり、加熱されるのは台座に置いてある間だけ。いわゆる蓄熱式であり、アイロンを掛けている間は余熱で熱くなっているだけである。実際にアイロンを掛けてみるとわかるが、アイロンをずっと服に押し当てているということはほとんどなく、アイロンをかけている服をひっくり返したりずらしたりで何かとアイロンから手を離すことが多い。そのたびに台座に戻せば加熱し直せるので、余熱だけでも充分実用になるようである。この発想には感心した。とはいえ、大昔のアイロンは火鉢で加熱して使っていたとのことであり、先祖返りの発想とも云える。
 コードレスアイロンの給電中の最大消費電力は、多くの機種で1400~1200W(一部低価格品は1000W)で大差なく、エネルギー保存の法則により、設定温度に達するまでの時間はほぼ蓄熱量で決まる。つまり、冷めにくいように蓄熱量を大きく設定している機種は温度が上がるのに時間がかかる。温度がすばやく上がる機種はすぐ冷める。一般的な傾向としては、高級機種ほど蓄熱量の設定が大きくなっている。しかしそういうものでも、設定温度に達するのに2分もかからない。
 また昔のTAS-601Sと比べるとTA-FLW910はかなり軽く、1.1kg程度となっているが、これでも今時のアイロンとしては重たい方のようである。シワを伸ばすならやはりある程度の重さは必要である。

 さて、ここからが本題なのだが、Googleで「コードレスアイロン」で検索して出てくる家電系の製品紹介サイトの記事は、質が低いものが多い。そもそもコードレスアイロンが充電式だと勘違いして書かれているものが多いし、立ち上がりが早いと冷めやすいこともわかっていない。また、ハンガーに掛けたまましわ取りする衣類スチーマーと、あくまでアイロンの一種であるスチームアイロンを一緒くたにしているものもある。スチームの噴出の勢いがいいから高性能みたいなことを書いているサイトもあるが、スチームアイロンでそんな使い方をするのは例外的ではないだろうか。重いし。
 要はアフィリエイト目当てでよく知らないものを書き散らしているように見える。筆者にもまだ何回かの実機の使用経験と1日ネットで調べた程度の知識しかないのに、これらのサイトはその知識すら抑えずに記事を書いているのだろうか。あまりにもあてにならない。