WOWOWにて鑑賞。
- メインプロットは古典的悲劇の基本に忠実で、目新しさはあまりないが結末において悲劇的な効果がよく出ている。
- 中学生は集団になると厭わしいが、一人一人はやはり可愛らしい。
- 松たか子はあまりうまい女優ではないが、それでも現在の日本の女優の中ではましな方ではある。日本の若手の平均レベルが低すぎるのである。
- 初めに犯人を明らかにした以上は、それを使ってなにかしら葛藤を作らなければ話が持たない。中盤そこのところがまったくできてなかった。いじめをどう解決するかという話かと思ったらそうでもなかった。それなら犯人を明かすのは後回しにすべきだった。
- 少年Bに関する部分はこの物語にとってまったく不要、蛇足。ここをカットすると本編が1時間30分を切ってしまうかも知れず、そうなると長編映画としての公開にはやや足りないということになるのかも知れないが、『クローバーフィールド』などは85分で公開にこぎつけているのだし、なんとかならなかったものだろうか。
- 一見社会派のようだが、物語の本筋の因果関係だけを取り出してみると「母親へのゆがんだ愛情が多数の死を生んだ」という話で、あまり蓋然性も普遍性もありそうでなく、またそれらを感じさせるように語ろうともしていない。観客に何を求めているのかもはっきりしない。物語の語る意義という面から評価するような作品ではないというべきだろう。
- この話の内容を前提とするならば、少年Aの犯したことは、少年法があろうがなかろうが起こったことである。また森口先生の犯したことは、少年法がなければ起こらなかったかも知れないが、いずれにせよ、結果は必ずしも不幸でなかった。したがって、この話が少年法の不当性とその改正を訴えるものだと解釈することはできない。もし実際のラストシーンのあと、森口先生が処刑されるシーンで物語が終わっていたら、話は違ってくるかもしれないが。
- (追記)改めて検討すると、この話は「女性のキャリア志向は不幸を生む(ことがある)」と言っていると解釈することが可能なようである。とすると、現代の価値観のもとではなかなか過激な主張ではある。この立場からすると、少年B(の母親)のエピソードは無用なばかりか有害だということになる。
70点/100点満点