『ラン・ローラ・ラン』(1998)【ネタバレ】

 レンタルDVDにて鑑賞。

  • なぜそれが可能なのか一切の設定の説明がないタイムリープ(ないしループ)もの。そのアイデア自体はよかったと思うのだが、シナリオにしても映像にしても技術が不足している感あり。
  • 序盤のあらすじは次の通り。主人公ローラの恋人マニは、麻薬を売却して現金に換えるようギャングに依頼される。マニが取引の場所へ向かうと、無事麻薬を売却できたが、その後迎えに来るはずのローラが現れなかった。これはこのときたまたまローラがバイクを盗まれたからであった。マニはやむを得ず電車に無賃乗車して帰宅するが、その途中、車内で検札に出くわしあわてて電車を降りた際に、その大金の入った袋を座席に置き忘れ紛失してしまう。午後の約束の時間までにギャングに現金を渡せなければ殺されると恐れたマニは、かくなるうえは近くのスーパーマーケットに強盗に入って金を作るしかないとローラに電話で相談するが、ローラはなんとか金を工面するからそれは止めるようにと説得する。しかしマニは20分後の正午までに金が用意できなければ強盗に入ると宣言する。そこでローラは父親のもとに金策に向かう。実はローラの父親は銀行の頭取なのだ。
  • そこから正午過ぎまで、ローラが東奔西走する時間が、この作品中で3回繰り返される。前述のように、なぜ時間を戻ってやり直すことができるのかについて何らの説明もないのだが、意外にこれは不自然に感じない。1回目の結末はローラが警官に撃たれて死亡、2回目はマニが車にはねられて死亡、3回目は置き忘れた現金が出て来てハッピーエンド。
  • このシナリオの主な問題点は次の通り。
    1. マニが大金を失う理由があまりにアホらしすぎてサスペンスとして成立していない。大金を手にしているのになぜわざわざ無賃乗車などというリスクを冒すのか。なぜ大金をしっかり身に着けずに座席に置くのか。そもそもなぜ麻薬取引などに手を出すのか。観客にとってこれらは「自分ならあり得ない」ことであって、その結果マニが困ったことになっても他人事のようにしか感じられない。またしたがって、ローラも「どうでもいいことのために走り回っている女」でしかなくなってしまう。
    2. 残り時間が20分しかないのでは、例え自分名義の普通預金口座に十分な残高があったとしても間に合うかどうか疑わしい。これでははじめからまともな金策など成功するわけがないのであって、葛藤にならない。時間のカセが必要なのはわかるがやりすぎである。
    3. 不幸ないし幸福な結果が偶然生じている。例えば、ローラが死ぬのは偶然警官が誤って発砲してしまったからだし、マニが死ぬのは偶然通りがかった車に引かれたからである。これはご都合主義そのものであって、教訓も何もあったものではない。物語においては不幸や幸福は人間の行為から蓋然的な因果を辿って生じなければならないのである。
    4. おそらくそういう風に作者が因果関係の重要性に鈍感なことと関係するが、結末と因果関係を持たない冗長なシーンが挿入されている。例えば「すれ違った通行人のその後の運命」が描写されたりするのだが、こんなものに興味などないのであってまったく不要である。
  • 映像の面でもあまり褒められない。なんといっても画面の疾走感が不足しているのが最大の不満点である。それにどういうわけか主人公も含めて出てくる女優に美人がいない。

本作のベストシーン

  • この映画短評の記事ではどうも苦言ばかりになる傾向があるので、バランスを取る意味で、このサイトを参考に、今回から作品からベストシーンを一つ選んで記しておくことにする。
  • 銀行の警備員が、ついてないローラに「こんな日もあるさ」と言って慰めるシーン。脇役ながらこの警備員が本作でもっとも魅力的なキャラクターである。

40点/100点満点

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