『太陽の帝国』(1987)

 WOWOWにて鑑賞。

  • 香港に生まれ育った英国人少年の目を通して綴った、香港への日本軍の進駐と彼の孤児としての収容所での生活の体験記。
  • 自伝的小説が原作で、ストーリーの細部にリアリティを感じるが、その代わりあまりまとまりのある話にはなっていない。葛藤やテーマやカタルシスや意外性といったドラマの定番の道具立てが不足していても、状況そのもの(とその画面)の物珍しさが確保されていればなんとか話が持つことを実証した作品。その意味でスピルバーグらしい。
  • 日本の軍人役で日本人が多数出演しているのだが、その芝居が大変な大根。日本語がわからない演出者が日本人の演技を演出するのが誤りであるのがはっきりわかる。ただ、伊武雅刀の演技はまずますだった。
  • 結局主人公の少年は日本と英米のどちらを選ぶのか(さらに言えばイギリスとアメリカのどちらを選ぶのか)という問題が最後まで混乱したままであった。このシナリオの最大にして致命的な問題である。

65点/100点満点

  • ところで、この放送では、前枠・後枠部分にWOWOWで制作したタレントたちの座談会のようなものを付加してあったのだが、その中身が低俗なバラエティのようでどうも今一つである。地上波のこの手の番組にうんざりしているからWOWOWを見ているという面があるわけで、これはWOWOWに求めているものと違う。
  • この手のものは見苦しくないものを作るのが見かけよりずっと難しい。タレントの類を出演させて成功している例をほとんど見たことがない。彼らは所詮うわべだけの盛り上がりを作ろうとするだけで視聴者の思っていることを代弁する能力はないし、視聴者に披露する価値ある知識にも乏しい。映画評論家という職業が存在するのは伊達ではないのである。