新宿バルト9にて鑑賞。
- 新海誠の最新作。興収好調との由で、バルト9も平日朝のわりに数十人くらいは入っていた。
- 45分の中編。それに5分の短編のオマケ付きで特別料金1000円。45分の興行というものが許されるようになってくれば映画制作にだいぶ自由度が出てくると予想される。本来その程度が適切な話を無理矢理1時間40分に引き延ばしたような作品も見受けられる中で、良い傾向である。
- 話の中身は新海誠の十八番、恋愛ドラマである。新宿御苑でたまたま出会った男子高校生と年上の女性とのひと夏の出会いと別れの話、といったところか。そういう意味では、バルト9での鑑賞がおすすめである。
- シナリオ技術についてだが、アナグノーリシスまでの前半部分が少々キザで退屈なのがこの話の最大の問題である。どうしてこうなってしまうかというと、一つには説明すべき設定が薄いからである。これは新海作品全般にみられる弱点である。どこにでもいそうなふつうの男女を描いた現代劇となると、説明することが少ないのですぐ終わってしまう。そこを引き延ばそうとするからこうなるのである。靴づくりの話は、突っ込みが足りない。
- また、説明の仕方の問題もある。少々淡々と説明しすぎているのである。もう少しひっかかりを作って観客をひきつけるような仕方を考えるべきだろう。
- アナグノーリシス後は切なさを煽るおなじみの新海節でまあ悪くはない。ただ、なんというか……ベタな恋愛ドラマの展開すぎるような気はした。また、この前の『シュタインズゲート』の劇場版のときもそうだったが、話に大義がなくてどこまでも「2人にとっては重要」なだけの話なので、メロドラマの域を出ない感がある。新海誠は元祖セカイ系の旗手だったはずなのに。しかも、『シュタインズゲート』の方では一応義務と愛情の間での葛藤があったけれど、こちらはそこも弱いような……?
- とはいうものの見終わった後の感触は悪くない。それは、「物語は、語り手がこの話を語る動機となった重要で意外な出来事で終わらなければならない」というルールをそこそこ守れているからである。
68点/100点満点