『キャプテン・フィリップス』

 吹き替え版で鑑賞。上映時刻の都合だったが、劇場で吹き替え版を見たのは初めてかも。もっとも、シナリオの評価には吹き替え版の方が優れている。

  • フィリップス船長が率いる大型貨物船がソマリアの海賊に襲われる。海賊たちはその後救命艇で脱出するが、その際に彼が人質になる。果たして米国海軍は彼を救出できるかという話。後に船長自身が書いた手記を原作にした実話ベースの話。
  • したがって、彼が助かるという結末はわかったうえで見る映画である。だから葛藤を作るという面では、いかに彼が助かりそうにないように見せるかが勝負だが、そのあたりの出来は、可もなく不可もなく。いかんせん史実に縛られるので制約があり、若干の不満は残るが、まあその割によくやったほうではあろう。それなりにスリリングな話になってはいる。
  • 商船の海賊対策というものがいかに頼りないかはよくわかる映画である。
  • しかし全体的・本質的なところでいうと、どうも薄味な印象の話であった。何か毎回似たようなことを書いているような気がするが、すべからくドラマが直接目的とすべきものは、主人公の成したある特定の決断を倫理的に賞賛又は非難することである。で、この話におけるその決断はなんだったかというと、これが今一つよくわからないのである。フィリップス船長は、海賊たちの脅しにさらされていることもあって、決断らしい決断をしたように見えない。どうも素直に見ると、かえって、この話が称賛しているのは米国海軍の武力の方であるように思われるのだが、これだと主人公はフィリップス船長というより米国海軍ということになってしまうし、倫理でなく技術面・能力面に関して称賛しているにすぎないようにも思われる。といって、海賊たちの海賊行為を非難するものかというと、どうもそんな感じでもないのである。というのは、一つには何か少し海賊の側の事情にも中途半端に理解を示すような描写があること、またもう一つには、こちらが本質的な理由であるが、海賊行為を行わないという選択肢を選んだらどうなったのかをうかがい知ることに焦点があたったつくりになっていないことからである。そのあたりのピンボケ感が、薄味さにつながっていると思う。
  • ラストシーンの診察のシーン、あそこのセリフは大変リアルで、こんなセリフが書けるならかなり手練れの脚本家なんじゃないかと思ったが、実はあの医官はホンモノで、彼女に任せたシーンだったらしい。なあんだ。

68点/100点満点