IMAX 3Dにて鑑賞。
- 地球上空の衛星軌道上でハッブル宇宙望遠鏡の修理に当たっていたNASAの宇宙飛行士たちが、スペース・デブリの嵐に巻き込まれて遭難する。果たして主人公たちは無事地球に生還できるのか、という話。なお、原題は『Gravity』で「ゼロ」は付いてない。まさか日本のワーナーがあの映画を意識したわけじゃないよね。
- CGと物理シミュレーションによるリアルな物体の動きとか、緻密な取材に基づくと思われるスペース・ステーションや宇宙船のディテールとかからくる映像のリアリティと美しさが圧倒的。宇宙空間で思うように動けない感じもよく伝わってくる。身体感覚というのだろうか、臨場感というのだろうか、そういったものが優れていて、久し振りに映画らしい映画を見たなという印象。この作品は劇場で見るべきである。
- シナリオそのものは、古臭いというか、一難去ってまた一難という感じの話で、昔の娯楽映画ってこんな感じだったなと思わせるようなストーリーである。危機がやってくるのもそれを切り抜けるのもかなり偶然に頼っているようなところがあって、冷静に見ると大したことがないシナリオである……いや、フィクションでは、偶然物事が起こっていけないわけではないのだけど、その場合、それが何かを描写する手段になってないといけない。この話の場合、そういう危機そのものが目的になってしまっているように見えた。それは単なるご都合主義である。ただ、映像の方が圧倒的なので見ている最中はあまり不自然に感じない。
- 昨今のハリウッド映画のように、無理やりに観客に媚びたような話にしようとしていないところは潔いと言えば潔い。セルフプロデュースだからこういう話にできるのだろう。ただやっぱり、筆者がシナリオを書くとしたら、主人公にジョージ・クルーニーを助けに行かせたと思う…というより、あんなに早い時点でああいう風にはしないで、クライマックスの方で彼に見せ場を与えて(いや、実際の作品でも一応あるにはあるんだけど…)、ジョージ・クルーニーを讃える話にしたと思う。そういう風にするとこれはもう『ポセイドン・アドベンチャー』そのものだけど、まあパニック映画の型はすでに完成されていて変えようがないということかも。
- シナリオということでいえばやはり検討しなければならないのは死んだ娘とかの話だろうが、あれは褒めるべきかけなすべきか判断しかねる。別にあの話がなくてもほとんど結果は変わらないように思え、また大した教訓になっているとも思えないので、そういう意味では本質的に取ってつけた話のような気もするのだが、ただそれをネタにしたダイアローグの出来はまあまあだったような気も…。登場人物があれだけ少ない中でセリフで場を持たすのは一つの腕といえば腕かも知れない。
- 町山智浩言うところの「元ネタ」動画はこちら。確かにこんなシーンがあった。
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80点/100点満点