『サンセット大通り』(1950)

 WOWOWにて鑑賞。

  • ビリー・ワイルダー監督のフィルム・ノワールもの(この時期にアメリカで盛んに作られた画面・ストーリー共に暗い雰囲気の悪女ものB級犯罪映画)。ビリー・ワイルダー監督作としては比較的初期の作品。アカデミー脚本賞受賞作。
  • あらすじを一言でいうと、自信過剰な往年の大女優が、映画界に復帰しようとするが相手にされず、たまたま痴情のもつれから売れない脚本家である若い男の愛人(彼が語り手)を撃ち殺す事件を起こしたことで、やっとカメラの前に立つことができた(報道のカメラだが…)という話である。サンセット大通りは彼女の住む豪邸のある住所。
  • 一応脚本賞受賞作ではあるのだが、葛藤もテーマも弱い。ここでいう葛藤とは、どちらかに決めなければならないがどちらを選ぶのが正しいのか迷う状況(“To be or not to be. That is the question.” [Shakespeare])のことである。またテーマとは、その背景にあり正当性を決める根拠についての問いである。この話に出てくる決断らしい決断と言えば、話の中盤以降に出てくる、老大女優の下に愛人として留まるか、それとも友人の婚約者と駆け落ちするかという点くらいだろうか。しかし3人はいずれも独身なのだから、これはあまり規範的問題を含まない問題で、まあ言ってしまえば観客にとってはどちらでもいいような話である。いわゆる「本人たちにとってのみ重要な話」であり、その意味でメロドラマ的である。いや、そもそもそれ以前の問題として、主人公はあのオバサンのことをどう思っていたのか曖昧である。すぐ自殺しようとするから同情していただけなのか? 少しは愛していたのか? しかし見た目から言えばそれはちょっと無理がありそうな気がするのだが。
  • また、語り手が既に死亡しているという構成は矛盾だし、結末も弱い。物語における語り手の位置づけに関する理解が曖昧なのであろう。
  • 結局のところ、シナリオ面でそれほど秀でている作品とは思われない。

50点/100点満点