福本次郎氏の見方

こちらとかこちらで話題になっている福本次郎氏の批評に対する批判についてなんですが。

私が見た映画についていうと、『スカイ・クロラ』で押井監督がアニメばかり見ている現代の若者へのメッセージを込めて作品を作ったとか、『ポニョ』は宮崎監督が子どもに喜んで貰うための映画として作ったとか、『ダークナイト』のジョーカーはバットマンシリーズの伝統として狂人キャラである(らしい。実は筆者もよく知らない)とかといったことはですね、すべて見る前の予備知識として映画の外で得られたものでして、もしこれらの予備知識抜きに作品を見た場合に、上記の記事で示されているような解釈が期待可能かというと、私の見た限りでは、少々心許ないところがあるものも存在すると思うのですね。

プロとして批評するならある程度の予習は当然しておくべきという批判はあり得るところですが、プロとして大量に見ているからこそいちいち調べていられないということも実際にはあるかも知れない。まあそれはともかくとして、福本氏の評論はそういう予備知識なく見に行くような一般の人々基準の感想がどういうものか観測するという意味での価値はあり得るんじゃないかという気もします。そしてまた、『スカイ・クロラ』はともかく、残りの2作は純然たる娯楽映画たることを期待される作品ですから、予備知識なく見たときに福本氏のような誤解を生じる余地があったということは、それ自体が作品の瑕疵であり、それが示されたことに価値があると考えることも不可能ではないと思うわけです。

追記: というこれだけの記事なんですが、どういうわけかGoogleで一ページ目に表示されていることと、ネットでは唯一(?)の擁護論であることもあってか、このブログではダントツにアクセス数の多い記事となってます。大したことなくてスミマセン。
ちなみにこのページに来られた方には、福本次郎氏がどのような方なのか、プロフィールをお知りになりたい方が多いと思われますが、私が検索した限りでは批評が載っているcinemaonline.jp上にあるもの以外は見あたらないようです。

よつばと!8巻

やっと出ました。

この巻を代表するセリフは、よつばのじゃないけれど、

綾瀬母「よつばちゃん食べてるとこかわいいから見るの好きなの」

ですかね(p.103)。子どもがものを食べてるところは確かにかわいいんですよ。ただ、そのかわいらしさがこの直後のコマで十分に表現されたかというと…ちょっと微妙でしたが。

以前書いた分析と予測が悉く外れているのには苦笑しました。まさかここにきてジャンボ-あさぎの軸が復活するとは…

よつばと! 8 (8) (電撃コミックス)(Amazonアソシエイト)

押井守

アニメ界のダブル守といえば細田守と押井守。『スカイ・クロラ』公開の関係でTV放映されたこともあって、押井守作品をいくつか久しぶりに再見する機会に恵まれましたが、漠然と、押井守オリジナル脚本の作品ってなにかが足りないなあという感じがしました。具体的にそれは何だろうとしばらく考えていたところ、一つ思い当たることがありました。

登場人物が広い意味での「義務感」で動いてますよね。パトレイバーでは、警官の職責だから犯人を捜すのだし、ビューティフルドリーマーでは全員参加必須の学校行事だから生徒の義務として学園祭に参加する。これは物語の辻褄を合わすという意味では説得力はありますけど、反面、キャラクターの欲望が見えてこない。欲望が見えてこないと本人の性格が見えない。性格が見えないと人物の印象や魅力が薄くなる。

パトレイバー2では南雲隊長の行動原理に若干欲望の要素が垣間見えたかなというところまではいったのですが、結局2度ある柘植との邂逅で、南雲隊長は彼と駆け落ちするのでなく彼を逮捕するという選択をする。やっぱり結局、警察官としての職責、義務を優先するストーリーになってるわけです。

ところが、スカイ・クロラではその一線を越えたようにも見えます。ストーリーはほぼ原作小説通りなんですけど、小説では恋愛の要素はごくほんのりと香る程度に過ぎないのが、アニメの方ではかなり前面に押し出されてます。とはいうものの、スカイ・クロラでは押井守監督は脚本を担当すらしていないのですよねえ…

IKKI

マンガ雑誌の月刊「IKKI」(小学館)、以前から名前は聞いていたもののどこで買えるのかよくわからずにいましたが、ヴィレッジ・ヴァンガードに売られているのを発見。購入して読んでみました。

この雑誌、講談社でいうところの「アフタヌーン」に相当する位置にいるマンガ誌で、新人・準新人の作品が中心、しかしそれだけだと売れないのでベテランの作品も若干載ってます、という感じのラインナップになってます。

マスターショット

載っていた作品をいくつか読んで、読者の立場から一つ新人の方々に言いたいことがあります。

シーンが変わったら早めにきちんとしたマスターショット(エスタブリッシングショット)を入れてください!

マスターショットとかエスタブリッシングショットというのは映画の用語で、マンガの世界では用語が異なるかも知れませんが、要するに場所全体を入れてロングで撮ることにより、そのシーンの登場人物等の位置関係をはっきり描写するショットのことです。人間というものは新しい場所に来たらまず周囲を確かめたい生き物のようで、この欲求が満たされないとイライラします。それに、周囲が見えないということは人物の置かれている状況もわからないということなので、そのまま登場人物間の対話が進むとなんの話をしているのかわけがわからないという感じも受けます。マスターショットを一つ入れることで、これらの問題に効果的に対処できます。

以下の例をご覧下さい(画像は著作権法32条1項により著作権者に無断で引用しています)。

まずは良い例。「ビックコミックオリジナル」1022号(2008.8.20号)掲載、石塚真一作『岳』第66話「指令塔」p.134より。シーン頭(場面転換直後)からの1ページ分。

『岳』からの例1

『岳』からの例

つぎに改善を要する例。「IKKI」66号(2008年9月号)掲載、オノ・ナツメ作『さらい屋五葉』第33話「相酌」p.110より。この話の最初のページ。

『五葉』の例

『五葉』からの例

ひょっとすると始めにマスターショット的なものを入れるという意識自体はあったのかも知れませんが、始めのコマには玄関の様子が含まれていません。これでは、腕を怪我している人物が道場の玄関で二人の道場破りに応対しており、庭にはもう一人の人物がいてその様子を見ているという状況が分かり易く描写されたとは言えません。

『五葉』を例として使ってしまいましたが、同じような問題を抱えている新人作(オノさんが新人かどうかは不勉強にして存じ上げませんが)は他にも多いように感じられます。

ぼくらの

IKKI掲載作のなかで、『ぼくらの』は異彩を放っていました。これはアニメ化もされているそうで、新人作中心のIKKI掲載作といっても、これはむしろメジャー作品と言った方が近いのかもしれません。私も時々題名を目にすることはあったのですが、実際に読んだのは初めてでした。

たった一話読んだだけなんですが、細やかな心理描写に引き込まれます。良くできた物語ってのはこういうものなんですよねえ。

ただ、なんだかエヴァンゲリオンに似ているような気がするのと、人物の顔にヴァリエーションが乏しいのは残念。

でも今度単行本買ってじっくり読んでみます。

というわけで、恒例のAmazonアソシエイトリンク。どうか一つよろしくお願いします。

ぼくらの

さらい屋五葉

東京アニメアワード フィルムフェスティバル

去年時かけの上映があった「東京アニメアワード フィルムフェスティバル」なんですが、今年は開催されないのでしょうか。開催は昨年は8月でしたから、今年もそのとおりにやるならばもう告知されているはずなんですが。

相変わらず授賞リストのページも更新されていないし、どうしちゃったんですかねえ。やらないとなると、商業アニメ部門はともかく、公募部門の受賞者の人たちが気の毒な気もしますが。

ANA特割1とビジネス特割の違い

メモ

ANA特割1とビジネス特割の違い。

  • 特割1には適用除外期間があるが、ビジネス特割にはない。
  • ビジネス特割は新幹線との競合区間にのみ設定。

購入・変更条件などは特割1と同じ。便ごとに値段が違うのも同じ。

なぜにはじめからちゃんとこういう風に説明しないかねえANAは。こんな説明で理解できる?

追記: なにげにアクセス数の多かった本記事ですが、2009年の4月からビジネス特割の名称は廃止して特割1に戻すようです。その方がいいでしょうねえ。

ハチクロ

『ハチミツとクローバー』ですが、その後5巻まで手に入れました。

読んでみた感想なんですが、いわゆるラブコメとしてはよく出来ていると思います。かなり笑えます。

ただですね、

  • ストーリーの先行きに期待を持たせるような要素が弱いので、いつでも読むのを止められる
  • 主人公が誰だかわからん。BSマンガ夜話で群像劇という表現があったが、誰も主人公がいないと言った方が近い。特にはぐみの人となりがよく分からないのが痛い
  • 男が全員同じ人物に見える(少女漫画を読み慣れてないから?)

といった欠点も見受けられました。あくまで5巻まで読んだ時点の感想ですが。

ハチミツとクローバー

ハチミツとクローバーなんですが、どこへ行っても売り切れです。

Amazonにはあるんですが、1500円以上でないと送料がかかりますので、差し当たり1巻・2巻あたりだけ読んでみたいという用途にはあまり都合がよくないのですよねえ。