『ゲッタウェイ』(1972)

 WOWOWにて久しぶりに再鑑賞、といっても以前観たのはTV放映された短縮版で、ノーカット版はこれが初めて。

  • 服役中の強盗犯である主人公が、仮出獄させてもらう代わりに、ある有力政治家のために銀行強盗をすることになる。主人公の妻の尽力もあり仮出獄が認められた主人公は、さっそく妻や仲間とともに銀行強盗をやり遂げる。事が済んだ後、仲間の一人が裏切り主人公は殺されそうになるが、反撃が成功し辛くもそれから逃れる。その後政治家に盗んできた金を渡そうとすると、今度はその政治家にも殺されそうになる。一緒にいた主人公の妻がその政治家を射殺。主人公とその妻は裏切った仲間と政治家の手下たちの双方に追われることになる。果たして二人は無事メキシコへ逃走することができるのか。
  • ストーリーといい音楽といい、アニメの『ルパン三世』を連想させる作品。ルパンのアニメ化は第一シリーズが1971年、第二シリーズが1977年。時期的には大体同じ頃である。
  • この話の葛藤構造はやや複雑である。基本的には奪った金を誰が取るべきかという問題で、(1)主人公 (2)主人公の妻 (3)銀行ないしその代理人的立場にある警察 (4)主人公を出獄させた政治家ないしその手下 (5)裏切りはしたが仕事をした仲間 などに少なくとも幾分かの権利がありそうであり、それらの権利に対応する主人公の金の引き渡し義務が葛藤になっていると見ることができる。そしてさらに、主人公を出獄させるために尽力した妻のために捕まることなく逃げ切る義務がこれらに対立する。この話の筋では、(3)についてはもともと頭取の不祥事隠しのために仕組まれた強盗だったから返されても困るという理由で、(4)と(5)については権利者が正当防衛により死亡したのでもはや引き渡す義務が消滅したという理由で、それぞれ解決され、(1)と(2)について、及び逃げ切り義務については、結末において二人でメキシコへ逃げ切ることで解決されている。
  • それにしてもあの裏切った仲間が延々付いてきて最後に主人公にあっさり倒される筋は必要だっただろうか。以前見たときもこれは要らないと思ったが今度もやっぱり要らないと思った。