WOWOWにて昨年放映されて録画してあったものをやっと鑑賞。
- とある高校のバレー部のエース桐島が大会を目前にしたある日突然部活をやめ、学校にも来なくなった。一方、映画部の部長である前田はゾンビ映画の制作を開始する。そんな1週間ほどの間の、学校を舞台とした等身大の友情と恋愛とを、数人の生徒の視点から描いた青春ものドラマ。
- オムニバス形式だった原作小説を一本に結合したようなシナリオで、全体的にははっきりとしたストーリーが存在しない。シナリオ形式としてはグランドホテル形式に近いが、視点が切り替わったときに時間も戻ることがあり、その意味ではループものに近いとも言える。また桐島なる人物は最後まで明確な形ではシーンに登場せず、不条理演劇の代表作『ゴドーを待ちながら』を思い起こさせる。
- 桐島はなぜ部活を辞めたのかという疑問が、この話のテーマとなる。そしてその答えは最後まで明確な形では示されない。しかしヒントはちりばめられていて、おそらく「いくら部活を頑張っても、結局何者にもなれないと考えたから」というのが答えだというのが一応無難な解釈かと思う。桐島がいたように見えた学校の屋上に前田がいたことは、その屋上シーンにおいて前田が桐島を代理する象徴であることを意味する。その前田がそのような考えを述べていることは、この解釈の最大の決め手となる証拠である。少なくとも、この話の語り手である菊池はそのように解釈したはずで、さもないと最後の屋上シーンからラストにかけての彼の行動は説明がつかない。また、屋上に駆けつけたバレー部員たちの前田に対する態度も、桐島の辞めた別の理由の一つを説明しているかも知れない。
もっとも、映画を見ている間は、むしろ桐島はいつ現れるのかの方に気を取られる。そのせいで、この話の重点が「なぜ」の問いの方にあるということを理解しにくく、話の展開の先を読みにくくなっており、それがプラスにもマイナスにも作用している。 - 2012年度の日本の映画賞を総なめにした作品。まあ、リアリティ重視の演出もあって、確かに昨今の日本映画の中では観られる方だし、キャラクター描写など優れているところもあるので、それが不当とは言わないが……全体としては率直に言って退屈な作品で、見終わるのに1年もかかったのも一つにはそのためである。前述の疑問をもっとわかりやすく観客の関心を引き付ける謎として提示できないと、映画としての面白さが足りない。
50点/100点満点