相変わらずゲーム動画を観ている。
ゲーム動画には小中学生あたりを相手にしているタイプと、もう少し上の層を狙っているタイプがあって、前者は任天堂のゲーム機やスマホで動くゲームを、後者はPS4やPCで動くゲームを取り上げることが多い。有名なヒカキン氏は前者だが、筆者が見ているのは後者のタイプである。
その後者のタイプのゲーム実況者の間で、ここ数週間トレンドとなっているゲームが表題の2作品。いずれも10月に発売されたゲームだが、両者ともぼちぼち最後までクリアする実況者が出てきた。
『サイコブレイク』(英語版の名称は”The Evil Within”)は、『バイオハザード』のディレクターだった三上真司氏の率いるゲーム会社が制作した、現代風バイオハザードといった雰囲気のTPS。基本的には例によって、ゾンビが大量発生しているのをピストルや猟銃で倒しつつ、アイテムを集めて扉を開け、先に進んでいくゲームなのだが、最近の流行を採り入れて多少ステルスゲーム的な要素も入っている。ステルスゲームというのは要するに『メタルギア』風の、敵の目を忍んでかくれんぼしながら進むゲームのこと。本作では、敵に気づかれなければスニークキル(いわゆるバックスタブ、つまり背後にこっそり近づいてナイフで一突きにして殺すこと)ができるので、弾薬の節約になるというシステムになっている。
公式にはホラーゲームというジャンルになっているものの、筆者の見たところ、サスペンスフルではあるものの、ホラー要素はほとんどない。ジャンルとしてのホラーは、対抗方法がわからない正体不明な脅威に襲われることを指す言葉であるところ、このゲームに登場する敵は大体武器で対抗できるからである。銃や罠で頭や体を吹っ飛ばされたり、スニークキルで頭にナイフを突き刺されたりといったグロテスクな死にざま表現などは山ほど出てくるが、それはホラーというよりスプラッターというべきであろう。このゲームがホラーなら、ホラーゲームでないゲームを探す方が難しいことになる。過去に実況界で流行ったゲームで言えば、『Five Nights at Freddy’s』やSlender Manのシリーズなどが典型的なホラーゲームである。
多くの実況者はPS4版でプレイしているものと思われるが、やはり今どきのゲームだけあって、映像表現のレベルはかなり高い。特に汚しの表現が凝っている。素晴らしいとは思うが、一体どれだけの開発費が掛かったことか。ゲーム開発費の高騰がゲーム界にもたらす悪影響を考えると心配になる。
その一方で、ストーリー面については、相変わらず進歩の歩みが遅いように感じられた。主人公に正当な行動の目的を与えるという基本的なところすら満足にできていない。結局、敵が出てきたから倒す、鍵がかかった扉が出てきたから開ける方法を探すという初代バイオハザードの頃のレベルから何も変わっていない。一通りステージ内でやることをやったら大した意味もなく建物が崩壊して別のステージにワープするのみである。また、事件の背景が話を通じて思わせぶりに示唆はされるものの、結局結末まで見ても真相が十分明らかにならない。これでは何のためのストーリーかわからぬ。
とはいえ、それでも飽きずに動画を観ていられるのだから、アクションゲームのストーリーなんてものはこんなもんでいいのかも知れない。アクション映画のシナリオみたいなもので、付けたしなのである。
ところでこのゲームは、はっきりとそう言明されているわけではないが、どうも制作側自ら、実況動画がアップロードされるように著名な実況者に対して働きかけているような節がある。バイオハザードの開発者が作ったとはいえ、新しいシリーズなので知名度がないわけで、そうすることで露出を増やしていこうという戦略なのかも知れない。実況動画というものが、ゲームの売り上げにプラスになるのかマイナスになるのか、今のところ業界的にはっきりとした答えは出ていない。今回は新シリーズであることもあって、一か八か試しにプッシュしてみてどうなるか見てみようということなのだろう。果たしてこの結果が吉と出るか凶と出るか、業界的にも注目されるところだろう。個人的には、平均的にはアドベンチャー性の高い作品の場合マイナスとなる可能性の方が高いのではないかと思っているが、知名度のないタイトルだとなんとも言えない。また、違法な動画などのファイル共有をしている手合いがよく言う言い訳「無料で手に入るから手に入れたまでで、もともと購入してまで見たいものではなかったので、ソフト商品の売り上げに損害は与えてない」は、ある程度当たっているところもあり、同様なことが実況動画にも言えるかも知れない。つまり、発売前から楽しみにしているような層は実況動画など見ずにさっさと手に入れて自分でプレイするので、売上に与える悪影響は少ないのかも知れないのである。
『Alien: Isolation』は、その名の通り映画『エイリアン』(1979)の世界設定を元にした、TPSステルスゲーム。『エイリアン』で主人公のリプリーが行方不明になってからしばらくあとの時代が舞台。リプリーの乗っていたノストロモ号のフライトレコーダーが見つかったらしいというので、リプリーの娘の主人公アマンダがそれが置いてある巨大宇宙ステーション調査に行くのだが、そこにはあのエイリアンが住み着いていた……というストーリー。ゲーム中ではノストロモ号そっくりの宇宙船を歩き回れるほか、シガニー・ウィーバーの音声が聞けるシーンもあったりして、エイリアンシリーズのファンには気になる作品。
しかし、SEGAが開発した作品であるにも関わらず、なぜか日本語版が発売されておらず、今のところその予定も発表されていないとのこと。そのため実況もすべて英語版でされており、ストーリーの把握が不十分になってしまうのが残念。
とはいえ、ゲーム部分だけ見てもなかなか興味深い作品で、とにかくエイリアンが怖い。もともと武器の数が少ないうえに、エイリアンに対してはほとんど武器による攻撃が効かないというシステム。ゲーム中盤以降は火炎放射器で一時的に追い返すことだけはできるようになるが、燃料がすぐ尽きるので、結局モーショントラッカー(オリジナルの映画にも出てきた周囲で動くものを表示するレーダーのような装置)を見ながらこっそり忍び歩くのを基本にするしかない。その点『サイコプレイク』と比べて、ステルス要素やホラー要素が大きいとも言えそうである。
ただ個人的にステルスゲームは、ストレスフルなばかりで気持ちよさがないので、敢えて購入してまでプレイしてみたいとは思えないジャンルである。何度も捕まったりしていたらすぐに投げ出しそうで、実況動画で見るのに適したジャンルであると思う。