WOWOWにて鑑賞。
- この話はどう見てもシナリオの構成がおかしい。大手映画会社に持ち込んだら修正を要求された(のでそれを拒否して自主製作した)とのことだが、大手映画会社の判断の方が正しそうである。
- この話は誰が主人公なのか、つまり誰の最終的な決断の理由を説明したものなのか明らかでない。キックアスのそれでないことは明らかである。彼が最後にしたことは、指示された通りにヒット・ガールを助けたというだけのことなのだから。そこで物語構造上は、どちらかといえばヒット・ガールが主人公に近いと考えられるが、その割にビッグ・ダディとヒットガールの動機の描写が薄すぎる。要するに、キックアスが語り手になっている意味がない。そのために視点もふらついている。
- そのこととおそらく関連しているが、ところどころで人物の動機についての前振りが不十分なところが見られた。
- キックアスがマフィアとは関係ないとあっさりと判明してしまうが、それなら何のためにキックアスが誤解されるという要素を入れたのかわからない。一般論として、後に続く人物の決断と因果関係を持たない要素を物語に入れてはいけない。たとえそのようなことが物語世界中で起こっていたとしても、そこは省略しなければならない。
- ヒットガールたちが必ずしも必要でない殺人を犯しているのに、最後までそれを償わずに幸福になっているため、そのような殺人を推奨・賞賛する意味が発生してしまい、倫理的な問題がある。
- コメディがやりたいのかシリアスなヒーローものがやりたいのか焦点が定まってない。
- シリアスがやりたかったと解釈した場合、本当に言いたいことは最初の30分ですべて言い切ってしまって、残りの1時間30分は埋め草に別の話を付けたしたという感が否めない。本来は、この最初の30分はラスト30分に回して、なぜキックアスが誕生したかを説明する物語とすべきであったように思われる。
- 『Mr.インクレディブル』の強い影響を感じる(少年の側から描写した『Mr.インクレディブル』と言ってもそれほど違和感がない)が、『キック・アス』の原作コミックとどちらの公表が先だったのか興味がある。
55点/100点満点