『ゴールデンスランバー』

 WOWOWにて鑑賞。

  • まず初めに言っておきたいことは、ビートルズの楽曲の使用料が高いなら、そのお金が貯まってから製作すべきだということである。どうしてもその金が用意できないなら、その人にその作品を撮る資格はなかったということである。わざわざこういう作品を原作に選んでおきながらビートルズの音源は使えませんでしたというのは本来許されない話である。最近の邦画界はこのあたりの意識がルーズになっているようなので苦言を呈しておく。
  • この話を一言で言うと、かつての仲間たちとの絆に助けられる逃走劇なのだが、逃走劇としての部分はまずまずよくできているものの、絆を描く作品としてはどうも薄味である。そういう作品ならラストシーンがもっと印象深くなるはずなのだが、そうなってない。単に大学時代よくつるんでいたとか、付き合っていたとかというだけではあまり強い絆とは言えないからだろう。また、かつての仲間とは関係ない人々にも大いに助けられるのは一貫していない。特にあの通り魔は、少々都合がよすぎる存在である。
  • 回想シーンの使い方は上手いとは言えない。そもそも、なぜ回想という手法がしばしば退屈だと言われ避けられる傾向にあるかというと、そのとき観客が知りたいと思っていない情報を無理に与えようとするからである。回想を使いたいならここのところをうまく処理しなければならない。もっとも、過去に何があったかを現在の状態(の描写)で示すのが物語の本来のあり方で、そもそも回想は物語にとって必要不可欠な表現手段ではない。現実世界でわれわれが過去を理解するとき、「回想シーン」に頼ってはいないのである。
  • 最後、死体が上がったのはどういう経緯なのか? 本来なら撃たれた後の主人公の行動は観客に対して隠しておいて、ミステリアスに処理しなければならないのではないか。プロットが混乱しているように思われる。
  • 以上、苦言が多くなったものの、最近の邦画としては見れる方と言っていいだろう。

65点/100点満点

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