NHK BSPにて鑑賞。
- 倉本聰脚本。高倉健主演。脇役も豪華キャスト揃いであり、日本映画全盛期の最後の残り火といった感のある作品。
- 倉本聰の書くドラマは非常に独特で、どれも皆基本的に主人公の罪の懺悔をその内容としている。失敗(ハマルティア。ちなみに倉本聰は東大でギリシャ悲劇の同好会にいたそうである)が描かれるという意味では悲劇に似ているが、あくまで罪を告白するだけで、贖罪のためにそれ以上何かするわけではないのが特徴である。こういうドラマを書く脚本家はほかにあまりいないと思うが、敢えて言えば『秒速5センチメートル』などと似ていなくもない。本作でも主人公の男の、3人の女性に対する罪の意識が、半ばオムニバスのような構成で語られる。
- 実際の人生では贖罪の機会などなく過ぎていくのがむしろ普通だから、このようなドラマはある意味でリアルであるとも言えるが、いわゆるドラマチックさに欠け、結末らしい結末を付けづらいという欠点もある(贖罪のための行為が語られるのならそれが済んだ時点が結末になるのだが……)。本作も話が終わったような終わっていないような曖昧なラストシーンとなっている。なお、『北の国から』のTVシリーズなども同様の問題を抱えていた。
ベストシーン
最後の酒場「桐子」でのシーン。対比効果がこれ以上ないくらいに強烈に効いていた。気まずいシーンを描かせたら倉本聰の右に出る者はない。
68点/100点満点