『アルゴ』追記

 以前のレビューに次の通り追加。

  • この話の要点となる重大な決断(プロット・ポイント)としては
    1. 襲撃の際、大使館員たちは大使館に留まることもできたがそこから逃げ出したこと
    2. トニーが大使館員たちを軍による救出作戦に任せるのでなく飛行機に乗せようとしたこと

    の2つが考えられる。ところで、およそドラマの観客の関心は、登場人物が実際に選んだ方の選択が選ばなかった方と比べてより正しかったかどうかに集中し、その点をはっきりさせたうえでなければ物語は終われないはずである。しかるにこの作品ではそこが不明確なままであった、つまり、軍に任せたら殺されていたのかどうかを明確に示す必要があったはずだが、そこがあまりはっきりしないままであった。
     筆者は歴史に疎いが、ネットで調べてみると、実際の歴史では、その後行われた軍の救出作戦は失敗したものの、事件の発端となった亡命した国王が死去したことで、結局人質は全員解放されたとのことである。ということは、結果的に、無理をして大使館から逃げ出すことも、飛行機に乗せることも必要なかったわけだ。これがこの物語の結末が曖昧にならざるを得なかった原因なのだろうが、そういうことであれば、むしろ実話としてではなく、オリジナルのフィクションとして制作されるべきだったろう。あるいは、むしろ徹底してコメディとして作るべきだったかもしれない。