映画短評」カテゴリーアーカイブ

『未成年』(TVドラマ)

 DVDにて第1~2話を鑑賞。

  • 桜井幸子はいいけど……シナリオはすっごい退屈で見るのが苦痛。
  • 記憶の限りでは野島伸司ってこんなじゃなかったはずだけど……喜劇っぽいのは苦手なんですかね。

ベストシーン

  • 敢えていうなら1話のラストシーンなんだけれど、赤い傘さしたらってのはあまりに根拠なさ過ぎなんだよなあ。

30点/100点満点

『ラン・ローラ・ラン』(1998)【ネタバレ】

 レンタルDVDにて鑑賞。

  • なぜそれが可能なのか一切の設定の説明がないタイムリープ(ないしループ)もの。そのアイデア自体はよかったと思うのだが、シナリオにしても映像にしても技術が不足している感あり。
  • 序盤のあらすじは次の通り。主人公ローラの恋人マニは、麻薬を売却して現金に換えるようギャングに依頼される。マニが取引の場所へ向かうと、無事麻薬を売却できたが、その後迎えに来るはずのローラが現れなかった。これはこのときたまたまローラがバイクを盗まれたからであった。マニはやむを得ず電車に無賃乗車して帰宅するが、その途中、車内で検札に出くわしあわてて電車を降りた際に、その大金の入った袋を座席に置き忘れ紛失してしまう。午後の約束の時間までにギャングに現金を渡せなければ殺されると恐れたマニは、かくなるうえは近くのスーパーマーケットに強盗に入って金を作るしかないとローラに電話で相談するが、ローラはなんとか金を工面するからそれは止めるようにと説得する。しかしマニは20分後の正午までに金が用意できなければ強盗に入ると宣言する。そこでローラは父親のもとに金策に向かう。実はローラの父親は銀行の頭取なのだ。
  • そこから正午過ぎまで、ローラが東奔西走する時間が、この作品中で3回繰り返される。前述のように、なぜ時間を戻ってやり直すことができるのかについて何らの説明もないのだが、意外にこれは不自然に感じない。1回目の結末はローラが警官に撃たれて死亡、2回目はマニが車にはねられて死亡、3回目は置き忘れた現金が出て来てハッピーエンド。
  • このシナリオの主な問題点は次の通り。
    1. マニが大金を失う理由があまりにアホらしすぎてサスペンスとして成立していない。大金を手にしているのになぜわざわざ無賃乗車などというリスクを冒すのか。なぜ大金をしっかり身に着けずに座席に置くのか。そもそもなぜ麻薬取引などに手を出すのか。観客にとってこれらは「自分ならあり得ない」ことであって、その結果マニが困ったことになっても他人事のようにしか感じられない。またしたがって、ローラも「どうでもいいことのために走り回っている女」でしかなくなってしまう。
    2. 残り時間が20分しかないのでは、例え自分名義の普通預金口座に十分な残高があったとしても間に合うかどうか疑わしい。これでははじめからまともな金策など成功するわけがないのであって、葛藤にならない。時間のカセが必要なのはわかるがやりすぎである。
    3. 不幸ないし幸福な結果が偶然生じている。例えば、ローラが死ぬのは偶然警官が誤って発砲してしまったからだし、マニが死ぬのは偶然通りがかった車に引かれたからである。これはご都合主義そのものであって、教訓も何もあったものではない。物語においては不幸や幸福は人間の行為から蓋然的な因果を辿って生じなければならないのである。
    4. おそらくそういう風に作者が因果関係の重要性に鈍感なことと関係するが、結末と因果関係を持たない冗長なシーンが挿入されている。例えば「すれ違った通行人のその後の運命」が描写されたりするのだが、こんなものに興味などないのであってまったく不要である。
  • 映像の面でもあまり褒められない。なんといっても画面の疾走感が不足しているのが最大の不満点である。それにどういうわけか主人公も含めて出てくる女優に美人がいない。

本作のベストシーン

  • この映画短評の記事ではどうも苦言ばかりになる傾向があるので、バランスを取る意味で、このサイトを参考に、今回から作品からベストシーンを一つ選んで記しておくことにする。
  • 銀行の警備員が、ついてないローラに「こんな日もあるさ」と言って慰めるシーン。脇役ながらこの警備員が本作でもっとも魅力的なキャラクターである。

40点/100点満点

『映画「けいおん!」』

 WOWOWにて鑑賞。

  • 人気テレビアニメシリーズの結末にあたる劇場版。だがそのテレビシリーズの方はほぼ未見。
  • 主人公たち高校軽音部の3年生4人が卒業するにあたり、可愛い後輩の2年生中島梓……じゃなくて中野梓に曲をプレゼントする話。
  • あれだけネットで話題になっただけのことはあって、確かに梓の可愛らしさはよく描けている。
  • ドラマの構造としては典型的な喜劇型であり、周囲の状況から来る刺激に人物たちがどのように反応するかを描写するエピソードの積み重ねで話が進んでいく。つまり人物の行動は受動的である。その点で人物が能動的に周囲の状況に対して働き掛けるシリアスドラマ型と対照的であり、いわゆる「ドラマチックさ」には欠ける。したがってその分喜劇型ドラマでは展開や人物の性格に強烈なパンチが必要だが、この作品ではそのあたりがちょっとユルく、梓の可愛らしさに頼りすぎのように思われた。また、どうしてもこのタイプの話では、話の先行きに対する関心が薄くなりがちであり、今回この作品を鑑賞し終わるのに休み休みで1か月近くを要した。1話が20分強で終わるTVシリーズならこれでもいいのだろうが。
  • 卒業旅行として軽音部のメンバーたちがロンドンに行くというのが今回の話のウリになっているのだが、この話だとそれに必然性があったか微妙なところである。すなわち、この話のテーマは、直接には梓にどんな曲をプレゼントするべきかということだが、それに対して「いつも通りの曲でよい」という答えを得たことと、ロンドンに行ったこととの関連が弱いような気がするのである。極端な話、ロンドン部分をまるごとカットしても話の理解になんら影響を与えないのではないだろうか。
  • 卒業の日やその前日の描写はやや冗長である。筆者がシナリオを書くなら、この日の出来事は梓の視点で彼女から見えた部分だけを描くし、別れの寂しさをもう少し強調したところである。先輩たちが梓に曲をプレゼントしようとしていたことも、ラストまで観客にも隠すべきだったかも知れない。
  • それに、梓への曲が始まった時点でエンドロールにして、梓の反応は観客の想像に任せる形にすると思う。せっかく梓への想いを嫌味なく伝えられたいいシーンだったのに、そのあとにごちゃごちゃつけたのでは余韻がぶち壊しである。梓が先輩たちをどう思っているかがそこまでで充分描写されていれば、梓がどういう反応を示すかはわざわざシーンとして描くまでもなく自明なのだし、またそうなるようにそこまでのプロットが作られているべきであった。
  • ただ作者たちの彼女らへの愛情が感じられる作品ではあったと言えよう。これで最後なのだから愛すべき彼女らをロックの聖地イギリスに連れて行ってあげたかった……などと言われれば非難はしにくい。

55点/100点満点

『トゥルー・グリット』

 WOWOWにて吹き替え版で鑑賞。

  • 2011年公開の西部劇。コーエン兄弟監督。1969年にも同じ原作が映画化されている。
  • 主人公の少女をはじめ役者の演技はよくできている。
  • 例によってシナリオについていうと、この話にはテーマ、テーゼがない。ゆえに観終わった後の「中身のなさ感」に強烈なものがある。その他の点の出来がまずまずなので余計に残念。西部劇だとこういう娯楽性一本やりみたいな話は多いけれど、やっぱりとってつけたようなものでもいいから物語には全体を貫くテーマと、結末において示されるテーゼ、教訓がないとまずいのだ。それがはっきり確認できるという意味で反面教師として貴重な作品。
  • また、この話のように追跡する側に視点が置かれると、どうしてもサスペンス性に欠けるため、話の駆動力が弱くなる面がある。

50点/100点満点

『ホビット 思いがけない冒険』

 字幕・3D版にて鑑賞。

  • 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚である。トールキンファンのためのファンムービーで、前シリーズ同様一見さんお断り。これを見に来る観客の7割は既にストーリーを知り尽くしており、いかに映像が原作のイメージ通りに再現されたかをチェックするために劇場に足を運んでいる。
  • ファンとしては、まずまず満足できる出来である。ホビット庄(という訳語が復活した)や裂け谷の美術や、大自然の風景は、前シリーズ同様に美しい。話の中身も原作に忠実である。また、次回作送りかと思われた「指輪」のシークエンスもこの第一作に入っていた。一方、ピーター・ジャクソンお得意のモンスターが絡む映像の造形は、前シリーズ同様、過剰に醜く作られており、原作の雰囲気にふさわしくないし、真実味にも欠けると思う。だいたいモンスターの数も多すぎる。あんな過密状態で普段どうやって生活しているんだ。
  • 前シリーズ同様、独立した一つの作品として見た場合の完成度は、あまり高いとは言えない。特にシナリオの出来は、相変わらず稚拙であるといっていい。原作の内容を尊重したからということもあるだろうが、むしろフラン・ウォルシュとフィリッパ・ボウエンの脚本技術の問題が大きいと思う。彼女らの他の作品も見たことがあるが、彼女らの脚本は、どうしても語り手の決断に至る心情でなく出来事の方を追ってしまうようである。今回の話で言えば、ビルボはいくつかの決断をしている。一行とともに冒険に出るかどうか、足手まといと言われて家に帰るかどうか、オークからトーリンを救うかどうか。この作品のプロットで観客はこれらについてビルボが下した決断にもっともだと共感できただろうか。私には疑問に思われる。また同じ原因により、ラダガストやトーリンに絡んで視点が混乱しているシークエンスも見られた。
  • とはいえはじめに記したように、観客はストーリーはもう知り尽くしているのだから、シナリオの欠点はあまり致命的ではない。ただ、残り3割の一般客には憐れみの念を禁じ得ないのである。
  • ところで当たり前のようで今まで気づかなかったのだが、ビルボって地主階級なんだな。

80点(トールキンファンとして)/100点満点
30点(一般の映画ファンとして)

『史上最大の作戦』(1962)

 WOWOWにて鑑賞。

  • ノルマンディー上陸作戦を連合国側・ドイツ側の複数の軍人の視点から描いた作品。
  • ノルマンディー上陸作戦というとやはり『プライベート・ライアン』(の冒頭)と比較してしまうが、『ライアン』では強烈だった上陸時の悲惨さの描写は控えめで、兵士の戦いぶりがどちらかと言えば英雄的に描かれている。
  • また、『ライアン』が単一視点なのに対しこちらは多視点で、相互にあまり影響を及ぼさないエピソードを複線的に混ぜ合わせたようなタイプのシナリオなので、その分ドラマとしてのまとまりは悪い。ただ、ストーリーの本筋は全体としてドイツ側の犯した失策(ハマルティア)を説明していると解釈できなくもなく、そう考えればドラマとしての最低限の形式は整っていると言えよう。
  • CGもない時代の映画としては大変な労作。ただもう少し尺は短くてもよかったと思う。

『ダイヤルMを廻せ!』【ネタバレ】

 WOWOWにて久しぶりに鑑賞。HD版は初めてかな。

  • ヒッチコック作品としては『裏窓』『サイコ』の次くらいに好きな作品。よくできたシナリオです。
  • このWOWOW版(菊地浩司訳)では、最後の決めゼリフ”Well, as you said, Mark, it might work out on paper”が「マーク 筋書き通りだね」と訳されていたが、これはおかしい。以前見た訳は確か「やはり計画通りにはいかないものだね」か何かだったはず。この話の要点は、マークが言うように、現実世界では想定外の事態が次々に起こるものだから、完全犯罪などというものは推理小説の世界の中だけの話だということなのだから。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

  • 破のときも思ったけど、これシナリオ庵野秀明が書いてないだろ。素人同然の出来だぞ。
  • あえて最大限好意的に解釈するなら、尺が足りなかったののかも知れないが、それにしてもひどい。謎めいているのがエヴァの身上とはいえ、最低限語り手であるシンジの行動に観客が共感できるように書かなければドラマとして成立しないのに、それよりも出来事の方を追ってしまっていた。特に冒頭30分あたりまではひどかった。その後は視点がシンジに戻ってきて少しはましになったものの、まだまだ説明不足であった。

25点/100点満点

『カーズ2』

 WOWOWにて鑑賞。

  • 基本的には子ども向け映画だけれど、ストーリーのほうは、子どもに完全に理解されうる内容とは考えにくいので、一応大人向けに書かれていると思う。
  • それを前提にして評価するが、このシナリオはなんというか……一応教科書的な定石は一通り抑えてありそうなのにもかかわらず、どうも薄っぺらさばかりが印象に残った。たぶん、本質的に喜劇的な話に無理にシリアスな要素を混ぜ込もうとするから中途半端になってしまっているのではないだろうか。今回の話は要するに主人公のマックイーンが親友メーターと仲違いしてしまう話なのだが、その結果メーターに何か深刻なことが起こったかというとそうでなく、むしろ彼に大活躍の機会を与える結果が生じたわけなので、シリアスになりようがないのだ。

45点/100点満点

『レナードの朝』

 WOWOWにて鑑賞。

  • 主人公の医師セイヤーが嗜眠性脳炎患者にパーキンソン病の新薬を投与したところ、劇的な改善が見られたが、しばらくすると元に戻ってしまったという話。レナードはその患者の一人。実話が元になっている。
  • 『アルジャーノンに花束を』を連想させる話である。ひょっとするとこの話を元ネタにしたのかも知れない。
  • シナリオの出来はあまりいいとは言えない。先を見たいと思わせる力に乏しく退屈なシーンが多い。展開に意外性がない。そして最大の問題は、レナードが元に戻ってしまってもあまり悲しくないことである。

45点/100点満点