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『お葬式』

 NHK BSPにて久しぶりに再鑑賞。といってもノーカット版はこれが初めてかも。

  • 伊丹十三は橋本忍の師匠伊丹万作の息子だし、中身は自身の体験談だとはいえ、初脚本作品としてはずいぶんと安定感のあるシナリオ。視点が一貫しているのがいい。
  • ちなみに伊丹十三のクレジットは「脚本監督」。逆の「監督脚本」でクレジットしている連中のシナリオにロクなものはない。例外は山田洋次くらい。たいてい脚本に自信があれば脚本を先にするものである。
  • 概して人物があまり選択(一方を諦めてもう一方を取る)をしないので、やや無性格的な話になっている。いわゆるプロットポイントが存在しないと言い換えてもいいだろう。結末がやや弱いのも同じ理由からと思われる。
  • 葛藤が弱いわりにあまり退屈しないのは、やはり題材そのものが興味深いからか。
  • 茂みでの濡れ場は有名だが、この話にぜひとも必要だったかにはやや疑問の余地が残る。このシークエンスに結構長く尺を割いてるのでなおさら。
  • 陰の主役ニャン吉の存在感が凄い(笑)
  • やっぱり『サマーウォーズ』の侘助はここからとったのですかね。

80点/100点満点

『お引越し』

 NHK BSPにて鑑賞。

  • 前半はともかく、後半は……。まったく、これだから相米慎二はイヤなんだ。
  • とはいえ、あのロビーでの3者会談(?)で話を終わらせるわけにいかなかったのはわかる。でもねえ。

30点/100点満点

『僕の小規模な生活』5巻(福満しげゆき著)

  • 回想編は成功しているとは言えない。こういう内容なら、いつものエッセイ風構成でなく、きちんとしたドラマとしての構成が必要なのに、そうなっていない。だから読みにくいし盛り上がらない。表現したいことはわかるし悪くない選択なのだけれど。
  • まずなにより、「字の多すぎる」ことが問題というより、ドラマは事実に語らせるものなのに必ずしもそうなってなくて、言葉で思いを説明してしまっていることが問題。読者に感じてほしいことがあるなら、そう感じないではいられないような出来事を示すこと。「僕はこのときこう感じたんです」と自分の結論を言葉で説明するのはドラマではない。
  • おそらく、実際にあったことをある面では忠実に再現することにこだわる(しかも昔のことで細部を忘れている)から言葉で補足するしかなくなるのだろうけど……でももともと、相手のあることなんだしまさか全部事実そのままじゃないはずだよね、これ。これはフィクションですという断りの上で作ってるんだから、細部が事実と違っていてもいちいち言い訳しないでいいのだし、架空のエピソードを追加することにも問題はないはず。
  • 程度の差はあるが、新海誠もこんな感じだったような。
  • そういうわけで、新編集長のウケが悪いのは作品の出来の問題であって、私情によるものではないと思われ。6巻が出るのがこんなに早いスケジュールなのは、こういう終わり方したままほっといたらマズイという編集部の判断によるものであろう。
  • 103話の女性編集者の話、以前の巻の内容にしてもそうだけど、福満氏がそれなりに人気ある作家だからそうなってないだけで、本来ならセクハラ訴訟ものですよ。

『サウンド・オブ・サイレンス』

 WOWOWにて鑑賞。

  • 原題は『Don’t Say A Word』なのに、なんでこんな変な邦題なんだろ。サイモンとガーファンクルの同名の曲とは何の関係もない。
  • シナリオの面から言うと、前半はまあまあだったが、全体としてはB級。
  • 致命的なのは、エリザベスが強盗団の残りの仲間たちに宝石を渡したいのか渡したくないのか気持ちがはっきりしないところ。役者のほうも、強盗団と会ったシーンではどんな顔をしていいのか困ったのではなかろうか。
  • また、物語は誰かの行為を賞賛するか非難するものでなければならないのに、誰を賞賛し誰を非難したいのかはっきりしない。まあ一応強盗団の仲間たちはラストでまるで付け足しのように悪い行為をしてああいう形になったけど、本来彼らは裏切られた立場だから、もしあのまま人質を返還していたら同情の余地があった。一方、コンラッド医師はコンラッド医師で、自分の利益のために患者を連れまわして強盗団に引き渡しているわけで、どうも手放しで賞賛に値する行為に見えない。
  • マイケル・ダグラスの演技はOK。

50点/100点満点

『うちの妻ってどうでしょう?』4巻(福満しげゆき著)

 久しぶりの福満しげゆき新刊。

  • 編集者たちがあまり焦ってなかったってのは、会社的に漫画家たちに東京から逃げ出されたら困るからかも知れませんねえ。客観的に言えば、自営業の漫画家たちはサラリーマンに比べて逃げ出しやすい立場ですよ。でも今なら地方にいても漫画くらい描けないことはないから心配するほどのことではないかな。『うち妻』もデジタル仕上げらしいからデータ入稿できますしね。
  • 震災ネタもタイムリーだったけれど、本巻のベストエピソードは91話。「僕の自己嫌悪」「K澤氏との確執」「妻と僕の関係性の出たエピソード」の3拍子揃ったいかにも『うち妻』らしい回。
  • 111話はいままでにないスリリングな展開でした。
  • 福満氏が死んだら原発関係の殺し屋に殺されたと思っておきます。

『ベッジ・パードン』(演劇・三谷幸喜作)

 WOWOWにて鑑賞。映画ではないけどこのカテゴリで。

  • 夏目漱石のイギリス留学時代を題材にした話。三谷幸喜が初めて正面からラブ・ストーリーに取り組んだ作品という触れ込みだが、実際にはラブコメディといったところ。もっとも、結末で分類するなら、何かが犠牲になることで別の何かを得るという終わり方だから、悲劇に近い悲喜劇(という用語の定義ははっきりしないのではあるが……)である。
  • 脚本面では、細かい部分で三谷幸喜らしいベテランの技術を感じさせる出来ではあるが、葛藤が弱いため特に中盤が退屈。コメディ部分は面白いのだが、それだけでは話が持たない。もっとも、アナグノーリシス後の展開はスピーディーだった。
  • また、人物の動機やドラマのテーゼを言葉だけで説明して終わりにしてしまっている傾向あり。劇中のセリフのように大事なことは言葉にして伝える必要があるという考えかも知れないが、ドラマである以上それだけではダメ。
  • ベッジのキャラクターは、演出の面でも脚本の面でもやや魅力が足りなかった。せっかく深津絵里を起用したのにちょっともったいない使い方である。ラブ・ストーリーとしては不満の残る出来。
  • 野村萬斎と浅野和之の演技は期待以上。大泉洋は、コメディシーンでは光るがシリアスシーンでは今一つか。

60点/100点満点

Ubuntu 11.10のunity-greeterがCPUを消費する

現象

 Ubuntu 11.10のデスクトップのログイン画面表示中、sshなどで裏でコンソールを開いてtopを実行すると、unity-greeterというプロセスが頻繁に上位に来る。CPUの能力によっては、常時1%程度消費していることもあるようである。
 サーバとして使用するときは、原則として常時この画面が表示されているのであり、常時1%食われるのは気になる。

回避策

 [ゲストセッション]を選択すると納まる。誤ってマウスのボタンをクリックしてしまうだけでデスクトップへ行ってしまうのがこの方法の欠点である。
 このことから逆算すると、どうやらパスワード入力欄のテキストフィールドがCPUを消費しているようである。

Ubuntu 11.10から/etc/network/interfacesでのIP aliasingのサポートが中途半端になった

現象

 /etc/network/interfacesに例えば

auto lo eth1 eth1:1
iface eth1
  address 1.2.3.4
  netmask 255.255.255.0
  gateway 1.2.3.1
iface eth1:1
  address 1.2.3.5
  netmask 255.255.255.0

のように書いてeth1に複数のIPアドレスを振っていた場合、Ubuntu 11.04までは、ifconfig -aすると

# ifconfig -a
eth1      Link encap:イーサネット  ハードウェアアドレス 00:d0:b7:09:xx:xx
          inetアドレス:1.2.3.4  ブロードキャスト:0.0.0.0  マスク:255.255.255.0
          inet6アドレス: fe80::2d0:b7ff:fe09:3e77/64 範囲:リンク
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  メトリック:1
          RXパケット:65564 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 フレーム:0
          TXパケット:88727 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 キャリア:0
          衝突(Collisions):0 TXキュー長:1000
          RXバイト:8445020 (8.4 MB)  TXバイト:80644469 (80.6 MB)

eth1:1    Link encap:イーサネット  ハードウェアアドレス 00:d0:b7:09:xx:xx
          inetアドレス:1.2.3.5  ブロードキャスト:0.0.0.0  マスク:255.255.255.0

lo        Link encap:ローカルループバック
          inetアドレス:127.0.0.1  マスク:255.0.0.0
          inet6アドレス: ::1/128 範囲:ホスト
          UP LOOPBACK RUNNING  MTU:16436  メトリック:1
          RXパケット:2392 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 フレーム:0
          TXパケット:2392 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 キャリア:0
          衝突(Collisions):0 TXキュー長:0
          RXバイト:241622 (241.6 KB)  TXバイト:241622 (241.6 KB)

のように表示されていたのが、Ubuntu 11.10からは

# ifconfig -a
eth1      Link encap:イーサネット  ハードウェアアドレス 00:d0:b7:09:xx:xx
          inetアドレス:1.2.3.4  ブロードキャスト:0.0.0.0  マスク:255.255.255.0
          inet6アドレス: fe80::2d0:b7ff:fe09:3e77/64 範囲:リンク
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  メトリック:1
          RXパケット:65564 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 フレーム:0
          TXパケット:88727 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 キャリア:0
          衝突(Collisions):0 TXキュー長:1000
          RXバイト:8445020 (8.4 MB)  TXバイト:80644469 (80.6 MB)

lo        Link encap:ローカルループバック
          inetアドレス:127.0.0.1  マスク:255.0.0.0
          inet6アドレス: ::1/128 範囲:ホスト
          UP LOOPBACK RUNNING  MTU:16436  メトリック:1
          RXパケット:2392 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 フレーム:0
          TXパケット:2392 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 キャリア:0
          衝突(Collisions):0 TXキュー長:0
          RXバイト:241622 (241.6 KB)  TXバイト:241622 (241.6 KB)

としか表示されなくなった。しかし、ip addrすると

# ip addr
1: lo: <loopback ,UP,LOWER_UP> mtu 16436 qdisc noqueue state UNKNOWN
    link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
    inet 127.0.0.1/8 scope host lo
    inet6 ::1/128 scope host
       valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth1: <broadcast ,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1426 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000
    link/ether 00:02:b3:4c:xx:xx brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 1.2.3.4/24 scope global eth2
    inet 1.2.3.5/24 scope global secondary eth2
    inet6 fe80::202:b3ff:fe4c:cc2a/64 scope link
       valid_lft forever preferred_lft forever

のように表示され、その他のプログラムからも1.2.3.4も1.2.3.5も使える状態である。つまり、一応追加のIPアドレスは設定できているようであるが、ifconfig -aの表示だけがおかしい。

原因

 /etc/network/interfacesの設定を読んで実際にシステムに設定しているifupdownが使用しているAPIが、ifupdownのchangelog(読むにはapt-get changelog ifupdownせよ)によると、Ubuntu 11.04搭載のバージョン0.6から11.10搭載の0.7の間で変更になったらしい。どうもそのときにIP aliasing互換への対応が抜け落ちたのではないか。おそらくもとから新しいAPIを使っているであろうipコマンドを使っても、次のようにlabelとして指定すればIP aliasing互換の設定ができる。
(/etc/network/interfacesにeth1:1の設定がないものとして)

# ip -4 addr add 1.2.3.5/24 dev eth1 brd + scope global label eth1:1
# ifconfig -a
eth1      Link encap:イーサネット  ハードウェアアドレス 00:d0:b7:09:xx:xx
          inetアドレス:1.2.3.4  ブロードキャスト:0.0.0.0  マスク:255.255.255.0
          inet6アドレス: fe80::2d0:b7ff:fe09:3e77/64 範囲:リンク
          UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  メトリック:1
          RXパケット:65564 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 フレーム:0
          TXパケット:88727 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 キャリア:0
          衝突(Collisions):0 TXキュー長:1000
          RXバイト:8445020 (8.4 MB)  TXバイト:80644469 (80.6 MB)

eth1:1    Link encap:イーサネット  ハードウェアアドレス 00:d0:b7:09:xx:xx
          inetアドレス:1.2.3.5  ブロードキャスト:0.0.0.0  マスク:255.255.255.0

lo        Link encap:ローカルループバック
          inetアドレス:127.0.0.1  マスク:255.0.0.0
          inet6アドレス: ::1/128 範囲:ホスト
          UP LOOPBACK RUNNING  MTU:16436  メトリック:1
          RXパケット:2392 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 フレーム:0
          TXパケット:2392 エラー:0 損失:0 オーバラン:0 キャリア:0
          衝突(Collisions):0 TXキュー長:0
          RXバイト:241622 (241.6 KB)  TXバイト:241622 (241.6 KB)

 ifconfigは古いので、IP aliasingを使わないで一つのインタフェースに直接IPアドレスを複数割り当てた場合に対応していない。

対処法

 根本的にはifupdownの修正が必要だが、とりあえず設定の確認には古き良きifconfig -aのことは忘れ、ip addrを使う。設定そのものはいままでの/etc/network/interfacesの書き方そのままでできているので対処不要。

参照

“ifconfig -a” does not show all the inet4 interfaces ifconfigとipコマンドの関係や使い方等について参考になる。

追記

 その後LaunchpadにてBug #876829として報告され、一応パッチも作成された模様。Debianでも再現するとのこと。
 このパッチを見る限りでは、ifupdownは内部的にはまさにipコマンドを起動しているスクリプトのようだ。

2012.2.1追記: 先日の0.7~alpha5.1ubuntu5へのアップデートでこの問題は解消された。