荒井VS絲山

 今月の月刊シナリオ掲載の作協ニュースに、以前も触れたことのある『やわらかい生活』脚本出版許諾請求訴訟の準備書面が載ってました。ちなみに訴状はこちらに載ってます。
 制作会社が訴訟に協力してくれないことでもともと勝ち目は薄いので、訴訟によってとにかく世間からの注目を集めるという戦略と理解しました。
 敢えて言えば、制作会社に業界の慣習を根拠として原告に対する出版協力義務があるものとした上で、制作会社の脚本出版許諾請求権を債権者代位権に基づき行使するか、別訴として制作会社に同許諾請求権の行使を請求するという法律構成はどうでしょうか。ま、原告にだって弁護士の先生が付いてるわけですから、当然検討された上で難しいという結論になったのでしょうけど、現状だと被告側からの指摘に対して何も反論できてなくてちょっと寂しいですよね(慰謝料請求の部分は不法行為責任ですけど)。
 あるいは、制作会社が脚本家に脚本出版を許諾することを妨害しないことを求めるという構成もあり得るかも知れません。

 ただ原作者の言うこともいくらか分かるような気もします。本来は、制作会社がもっと余裕をもったスケジュールで原作者との摺り合わせをきちんとしていればこんなことにはならなかっただろうと思います。シナリオの決定稿ができあがりもしないうちから撮影のスケジュールを入れてしまうというのは正しいやり方なのでしょうか?

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マンガ短評(よつばと!9巻)

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  • 8巻出版後に加筆され新装版が発売された『あずまんが大王』シリーズの影響が見られる巻。
    • 概してギャグマンガの色が濃くなっている。
    • 風香の性格があずまんが大王の「とも」に近くなっている。
    • ベリーゲラは『あずまんが大王 新装版』3巻の口絵に出てきていた。
  • 8巻でははっきりしなかったが、やはりジャンボ-あさぎの軸がヤンダという新要素を伴って復活しつつあるのではないか。
  • 学期が始まって以降も意外に風香の存在感は維持されているものの、よつばの外出に付き合えないのは7巻以降の傾向通り。
  • みうらがハワイなので久し振りに恵那が前面に出てきてそれを補っている。が、やっぱりキャラが弱い。
  • また、これは以前からなのだが、ある程度大人のあさぎや風香がよつばをみてニコニコするのはいいけれど、小学生の恵那がよつばをみてニコニコするのは変。みうらのような態度が正解。子どもの可愛らしさは子ども同士では通じないのである。
  • 56話は『空気人形』と『うち妻』あたりを彷彿とさせた。
  • 57話のアウトレットモールみたいなのは三井アウトレットパークかな?

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イングロリアス・バスターズ【ネタバレ】

 『イングロリアス・バスターズ』(以下『イングロ』)なんですが、『パルプ・フィクション』(以下『パルプ』)が好きだったもので、公開日に見て来ました。
 で、今、ブロゴスアィアを覗いてみると、「傑作」とか「名作」とかという評価が多いようなんですけど、私としてはそこまでのものとは思えず、またも孤立感を味わっております。といってもまあ、悪くはない映画ですけど。

 まず言っておきますと、ユダヤ・ハンターのランダ大佐役、クリストフ・ヴァルツの演技は素晴らしい。それは間違いないところです。また、フレデリック一等兵役で、『グッバイ・レーニン!』でお馴染みの好青年(あの当時から変わってない)ダニエル・ブリュールも悪くありませんでした。

 ただ、脚本については傑作と呼ぶには疑問があります。
 手元にDVDがあるわけでもないので、あまり網羅的な指摘はできませんから、以下思いつくところだけ挙げます。ネタバレですので、作品を未見でこれから見る予定のある方はご注意を。

 まずファーストシークエンス、というか第1章なんですが、農家にナチスがやってきて、隊長のランダ大佐が農家の主人にユダヤ人を匿っていないか尋問するところ。実はユダヤ人家族が床下に隠れているわけですけれど、それを観客に見せるタイミングが遅すぎたために、ランダ大佐の長広舌が緊張感に欠けた単なる世間話になってしまってます。ここは緊張感を味わって貰うのが第一の目的のシークエンスと解されるので、これは失敗に属します。
 ここでいい比較対象になるのが、『パルプ』のオープニングタイトル終了直後の話、ビンセントとジュールスがスーツケースを取り返すエピソードで、強者が弱者を尋問する話である点、そしてその尋問の際にいきなり本題に入らずに長広舌を披露する点などで、『イングロ』第一章によく似ています。ところが、『パルプ』の場合、『イングロ』と違ってその長広舌の間も緊張感に溢れてるんですが、それはどうしてかというと、冒頭にクルマから銃を取り出すシーンが入っているし、ボスがとんでもなく怖い人間だという話を振ってあるし、そのボスからこの部屋の人間たちは何か盗んだらしいとわかる話が比較的早い段階で出てくるし、要するに前フリが丁寧にしてあるからです。だから、ジュールスたちはただでは済まさないだろうということが観客にはっきりわかるのです。
 『イングロ』でも、出だしでナチスたちを見つけた主人が不安そうな表情を見せてはいるわけですから、なにか起こりそうだという緊張感が全然ないわけではないけれど、漠然としたナチスへの不安を抱いているに過ぎないという解釈が可能だから、弱いのです。
 やはりここはもっと早く、できればファーストシーンでユダヤ人の存在を見せるか、それを臭わせておいて欲しかった。

 それに、物語の後半以降では、ショシャナが復讐する話になっていくんですから、彼女の家族が無惨に殺されるところをちゃんと見せて観客に同情させないといけません。一応撃たれるシーンはなくもなかったけれど、中途半端でした。

 またその最後、ランダ大佐はユダヤ人少女のショシャナが家から走って逃げて行くのを見つけ、ピストルを向けるけれど、「まあいいか」とかなんとか言って彼女を逃がすわけですが、そこまで散々ユダヤハンターだと煽っておきながら、この行動は如何なものでしょう。主要登場人物が明確な理由もなく性格に反する行動をするというのは作劇の基本から外れ不自然であると言わざるを得ません。ここはピストルを撃たせた上で、なぜか全部外れたということにすべきです。……と書いてみて気付いたけれど、それだとまさに『パルプ』そのものになってしまいますね。……それはともかく、こんな風にしてしまったものだから、ずっと後の方のレストランでの再会のシーンも、どう解釈していいのか観客がとまどってしまい、結果的に薄味になってしまいました。

 第一章についていうと、そこでの主人公、つまり観客が肩入れして見ていく人物が誰なのかわからないという問題もあって、上の点も考え合わせると、そもそもの間違いはファーストシーンで家の主人が出て来、そのまま主人視点で進んでしまったことだったかも知れません。つまり、このシークエンスは最初から最後まで一貫してショシャナ視点で進むべきだったんでしょう。もちろんあの話の流れ上、大佐と話す家の主人の出番は多くなるにしても。

続く……かも知れない

Bing bot

 ここ最近、msn(Bing)のbotと思しきアクセスの中に、User-Agentとしてmsnbotを名乗らないものが出てきました。例えばこんな感じ。

65.55.230.204 - - [09/Nov/2009:06:06:02 +0900] "GET /wordpress/?p=2520" HTTP/1.1 200 16431 "-" "Mozilla/4.0"

 65.55.230.204を逆引きするとmsnbot-65-55-230-204.search.msn.com.と出てきますので、これはbotのはずです。にもかかわらずUser-Agentには”Mozilla/4.0″とあるだけ。
 これだと、以前書いたような手段でログをフィルタすることができなくなるので、困ります。

 う~ん、msnクォリティめ。

使用可能イベント

 Windowsの6.0(Vista/2008)からイベントログのアーキテクチャが刷新されて、アプリケーションごとにイベントログを持てるようになったわけですけど、そのタイプのひとつであるoperationalが「使用可能」と訳されているのは一体なんなんですかねえ。運用とか運転とか稼動とか操作とか操業とかなにかもっとマシな訳がありそうなんですが、operationalをどう解釈すると使用可能という言葉になるのか? そしてなぜMSKKの誰もこれが変だということに気づかないのか?
 admin→管理、analytic→分析、debug→デバッグ についてはマトモなのに。

 MSKKの変な翻訳は昨日今日始まったことじゃないじゃないかと言われればそうなんですけどね。

急上昇ワード

 Googleの急上昇ワードってのは、検索の絶対数のランキングではなくて、検索数の時間微分が大きいものというか、スパイク的に検索数が上昇したものを絶対数にかかわらず並べてるようなんで、結局のところ、同時性という面で他に叶うもののないメディアであるところのTVで取り上げられた話題が並ぶだけになっちゃってるのよね。意味あるのかしら?
 私ならもう少し長期的に見て関心が高まってきているようなものを選んで出すようなアルゴリズムにしますがね。

ワンクリックで素早くパソコンを休止状態にする?

 私、久し振りにキーボードを取り替えたのですが、これにはsleepボタンが付いてないんです。Windowsを休止状態にするときに以前のキーボードではsleepボタンを便利に使っていたのですが、これがないとなると、休止状態に切り替えるのに、いちいちマウスでスタートボタンからWindowsの終了へと辿らなければならない。これはsleepボタン一発で済んでいたときに比べると相当余計に時間がかかります。
 で、なんとか手間を省きたいということで調べたところ、世間には以下のようなノウハウが流布しているようだったのですが…

ワンクリックで素早くパソコンを休止状態にする
コマンドラインから電源オフや休止を実行する

 これ、SetSuspendStateのAPIの定義を分かった上で書いているとは思えない内容ですねえ。この呼び出し方だと、rundll32.exe内のSetSuspendState呼び出し直前の関数のローカル変数ないし待避したレジスタの中身が引数と見なされて実行されてしまうのでは。
 全部inパラメータなんだし結果的に動くからいいじゃんという考え方もありうるでしょうが、しかし、(あまりありそうでないものの)rundll32.exeがバージョンアップでもしたら動かなくなる可能性が。。。また、この方法により移行した休止状態からはタイマ等のデバイスによる自動復帰がうまくいかないというトラブルも起こっているらしいのですが、これは第3引数にあたる部分のスタック上のデータがたまたまtrueになってしまっているからでは。
 これの変種としてrundll32 powrprof.dll,SetSuspendState 1,0,0などとするものもあるようですが、rundll32.exeの仕様では、引数は常に文字列として渡されるのであって、最初3つ目の引数として”1,0,0″という文字列のアドレスが渡される結果、最初3つ目の引数だけはtrueであることが保証されるだけではないでしょうか。またしたがってもちろんこれを0,0,0などとしたからといって、休止状態でなくスリープ(サスペンド)になるなどということは考えにくいところです。

 で、結論的には、休止状態にできるフリーソフト(例えばこれ)か、最近のOSならshutdown.exe /hへのリンクを作るというのが正攻法と思われます。Windows XP標準のshutdown.exeには、残念ながら/hがないので、rundll32を使うという考えが出てきたのでしょうが。

演出家と脚本

 映画の世界だと監督がシナリオも書いちゃおうという作品は多いのですけど、私が思うにストーリーを作る才能と映像演出の才能は別物なのですね。
 例えば黒澤明という人は偉大なる演出家ではあったけれど、脚本家としては実のところ大した成果を残せなかった。いろいろな作品が黒澤明も加わった共同脚本という形にはなってますけど、私はそれらのシナリオは実質橋本忍とか菊島隆三とかのプロパーの脚本家の方の力で出来上がったものだと思ってます。それは黒澤単独脚本の作品がほぼ例外なくシナリオの出来が悪いのを見れば明らかです。黒澤自身は脚本家になることに憧れていたようだけれど、結局最後までそうはなりきれなかった。
 宮崎駿監督なんかもですね、見せ場の映像的心地よさみたいなのはスゴいけれど、シナリオ的な部分はそんなに上手くはないわけで。『魔女宅』とか『耳すま』みたいな原作ものとオリジナルものを比較するとそのあたりは顕著にわかります。オリジナルものは見せ場と見せ場の間が退屈な傾向があって、そこはシナリオの力の問題なんですよ(ただし、シナリオの問題が常に見せ場と見せ場の間にのみ作用すると言っているわけではありません)。
 さらに言うと、作家主義だなんて言って粋がって自分でシナリオ書いてたヌーヴェルヴァーグの監督たちの作品だって、やっぱりシナリオの出来が悪くて、その辺似たような問題を持ってます。
 やっぱり演出家がストーリー作りもやるというのはなかなか容易なことではないようなのです。

 ただ、現在の邦画界のシナリオライターがマトモなオリジナル作品を書ける実力を持っているかという点については、正直私は懐疑的です。たぶん待遇が悪くて、才能のある人は小説なんかの方へ行ってしまうからでしょうけれど(脚本家には創作したキャラクターに関する権利が残らないしね)、今や邦画のシナリオ界にあまり大した人は残ってないし、入ってきてもいないと見てます。まあそもそもが邦画界ってのは恐怖のコネコネ社会((C)福満しげゆき)のようなので、有能な人が参入しにくい面もあるのかも知れません。
 とにかくそういうことだと、邦画界が原作ものばかりなのも仕方ないことですね。

 なお、原作ものだから脚本家が要らないかというとそうではないようで。原作があるからと、脚本料を節約しようと脚本も監督が担当した映画ってのは、大抵出来が悪いので。。。

トップページにIE6からの移行メッセージ入れました

「IE6はもういらない」――Web企業が撲滅キャンペーン

 うちのサイト(雑多なページのほう)のトップページにコレ入れてみました。
 もともとあそこはIE6だと右側にあるはずのGoogle検索が左に寄ってきてかぶってしまう形になり、マトモに見れてなかったのを無視していた状態でしたので、IEなら7以上で見て頂きたいページなのです。
 ちなみに、Google Analyticsだと当サイトへ来訪したIEユーザのうち37%の方は6.0をお使いという結果になってます。IE6から移行が出来ない事情の方にはちょっとうざったいかも知れませんが、トップページだけですのでお許しを。

 しかし入れたはいいけどIE6の環境がなくて検証が結構大変でした。結局仕事用に用意していたVirtualPC上のXPで動作確認しましたが、ふつうの人だと動作確認ができない場合があるかも。