Googleのrefererが変更?

 7月15日頃から、Googleのhttpsサイトの検索結果から飛んでくるときのreferer文字列が、それまでの”https://www.google.co.jp/”から”https://www.google.co.jp”に変更になった模様。Google側の仕様変更か、ブラウザ側かは不明。
 これまでホスト名以降にスラッシュを一つも含まないrefererを送ってくるのはSPAM用のbot以外になかったため、当サイトではそういうアクセスを弾く設定にしていた。このため、しばらくGoogleから当サイトにアクセス不可能な状態になっていた。

 時かけのTV放送前に気づいてよかった…

 なお、最近時かけ関係は更新していないけれど、細田守のトリロジーBD Boxだけ商品ページに追加。

『24 -Twenty Four- (Season 1)』(2001-2002・TVドラマ)

 dTVにて鑑賞。

  • アメリカ民主党の大統領候補予備選挙の当日、深夜0時からの24時間を、リアルタイムで描くという体裁のTVドラマシリーズ。1話につき劇中の時間で1時間進む(CM部分等があるので正味の尺は40分強)。もともと13回シリーズの企画だったのを好評につき24回に延長したそうで、話の中身は13話までの前半とそれから後の後半で分断されている感じ。というより、前半部分でいったん終わった話を後半で再度繰り返しているように見える。
  • プロットは、主として3つの筋が同時進行で進む形で、前半部分の内容を中心に紹介すると次のようになる。
    1. アメリカのテロ対策政府組織CTUは、この日行われる民主党の大統領予備選挙の有力候補者デイビッド・パーマー上院議員が本日暗殺されようとしているという情報を掴み、テロリストの関係を中心に捜査を始める。一方で、CTUの主任捜査官であるジャック・バウワーは、CTUの局長ウォルシュから、CTU内部にこの件の内通者がいるらしいからそれが誰か突き止めて逮捕しろという極秘命令を受ける。果たしてジャックは内通者とテロリストを逮捕することができるのか。
    2. ジャックの娘キンバリー(キム)は深夜、友人のジャネットとともにこっそり家を抜け出し、男子たちとの合コンに行く。それに気づいた妻のテリーはジャネットの父とともにその行方を捜す。しかしそれらは罠だった。結局キムとテリーはテロリストの人質になってしまう。その狙いはジャックを脅してパーマー候補を暗殺させるためだった。果たしてジャックは、パーマーを守りつつ、かつ家族も取り返すことができるのか。
    3. デイビッド・パーマーの息子キースは、7年前に姉のニコールをレイプしようとした男を窓から突き落として死亡させたことがあったが、母のシェリーが方々に手を回した結果、それは事故死として処理され、真相はデイビッドに知らされなかった。ところがここにきて、著名ジャーナリストのモーリーンがこの疑惑を嗅ぎ付け、大統領予備選が行われるこの日の朝のニュースで報道するという情報が入る。キースのしたことは、正当防衛ないし過剰防衛が認められる可能性があるし、デイビッド自身は知らなかったことではあったが、これが報じられれば優勢だった選挙情勢が一気に逆転する恐れもある。デイビッドは、妻が事件を隠ぺいしたことに怒るとともに、選挙への影響を最小限に食い止めるため、報道より前に自ら事件を公表し謝罪しようとする。しかし妻シェリーはそれに反対し、有力な選挙支援者たちに依頼してモーリーンに圧力を掛け、また事件の証人を殺し証拠を隠滅して、報道を止めさせることに成功する。だがキース本人はこのやり方をよしとせず、すべてを認めて自首しようとし、デイビッドもそれを支持してこの件を公表しようとするが、シェリーと選挙支援者たちはそれを止めさせようとする。果たして事件は闇に葬られるのか。そしてパーマーは選挙に勝利できるのか。
  • 昔だいぶ話題になったシリーズなので観てみたが、期待したほど面白くないというのが正直な感想である。上述のあらすじで、「果たして~」の形式で表したものが、それぞれの筋の表面的な意味でのテーマということになるが(相反する可能性が示されることでテーマ=謎が提示される)、この意味でのテーマに観客がどの程度関心を持つことができるかでドラマの大体の面白さが決まる。そして、第2の筋のテーマにはそれなりに関心を惹かれるように作ってあるが、第1第3についてはそうでもない。観客からすれば赤の他人である登場人物の身の上に起こることに関心を持たせるには、同じ状況に置かれれば観客の身にも同じことが起こりそうであり、かつ結果が重要であることを示す必要があり、そのためには多くの場合、事件の被害者がいかにもっともな行為をした結果被害を受けたか、そしてそれがいかにあり得ることであるかを示すことが必要である。第2の筋では、被害者である2人がどのようにして誘拐されたか、そしてどのような危険に晒されているかが比較的丁寧に描写されているのに対し、第1第3の筋ではそもそも被害の内容からして曖昧である。内通者がいたら、あるいは事件が闇に葬られたら具体的に誰がどう困るのか、よくわからないままに話が進む。内通者がいたところで犯人の具体的目星もついていない状態では特に害はなさそうではないか? デイビッド自身が殺したわけでも隠したわけでもないのだから大統領にふさわしいかとは本来無関係な話で、事件が明らかになろうがなるまいがどちらでもいいのではないか?
  • シリーズ前半は、情報を隠そう隠そうとして失敗した感があり、どうも退屈なシーンが多かった。後半はそこが改善され、示すべきことは示す方針に転換したようで、その分見ていて退屈しなくなった。例えばシリーズ後半、テリーを捕り逃したテロリストたちが、どこを探しても見つからなくて困った挙句、待ち伏せしてやろうと彼女の自宅へ向かうのだが、一方、記憶喪失になりそこまでの記憶をなくしたテリーが、馴染みの医師に自宅に送ってもらう、という下りがある。もしシリーズ前半のセンスで脚本家がこの下りを書いたとするなら、「テロリストたちがテリーを待ち伏せしようと自宅へ向かう」部分は省略して観客に隠しておいて、何も知らずにテリーが自宅について腰を落ち着けたところで突然テロリストに襲われるというプロットになっただろう。だがこれではよくない。サスペンスが成立しないからという言い方もできなくもないが、それよりも、これではテリーが自宅でテロリストに襲われたのはノコノコ自宅に戻ってきたからだという因果関係が表現されないからである。
  • しかしそういう細かい点もさることながら、一番根本的な問題は、この物語に実質的な意味でのテーマがないことのように思われる。ここでいう実質的テーマとは、現実世界に通用するような疑問、ないしはそれに対する答えのことである。実質的テーマを持たない作品は、観客にしてみれば、最後まで見たら何か常日頃知りたいと思っていたことへの答えが得られそうだという期待が持てないし、実際話が結末を迎えても何かしら意義あるものを得たという実感がない。ドラマにこういう意味でのテーマは必要ないという人もいるが、それでは子供だましの話になってしまう。それが通用するのは、対象年齢層の低いマンガ業界くらいのものである。観客の年齢が上がれば上がるほど、得るところのない話を観るのが馬鹿馬鹿しくなる。昔から言われる名作の条件「おもしろくてためになる」の2つの要素はやはり両方とも必要なのである。この作品には、というかアメリカのTVドラマは大抵そうなのだが、「ためになる」の要素が薄い。

『太陽を盗んだ男』(1979)


 レンタルDVDにて鑑賞。

  • とある高校の冴えない理科教師である城戸が、プルトニウム化合物の溶液を原発から盗み出し、自宅でそこから精製したプルトニウムを使って原子爆弾を制作することに成功。警察に脅迫電話をかけて日本政府に対し様々な要求を繰り出す。その内容は、プロ野球のTV中継を試合終了まで延長しろだの、ローリング・ストーンズの日本公演を実現しろだのという奇妙なものだったが、実現しなければ原爆を爆発させるというので、日本政府はそれらの実現のため東奔西走する。事件を担当することになった山下警部は、果たして城戸を逮捕することができるのか、という話。
  • 純然たる娯楽アクション大作で、子供にはちょっと難しいかも知れないがだいたい誰が見ても楽しめる出来。芝居もいいし、爆薬の量もまずまず。昔の邦画はよかった。
  • プルトニウムを盗むところはちょっとウソ臭かったが、その後の原子爆弾の制作過程がなかなかリアルな感じ。Wikipediaによると、精製はともかく爆縮させる機構が難しいのであんな簡単にはいかないとのことではあった。作中では原爆として起爆できたかどうかがはっきり描写されなかったから、実はできてなかったという解釈も可能か。
  • 上述のあらすじはどちらかというと山下視点で記述したが、実際のプロットは城戸と山下の両方の視点で進むサスペンスである、つまり城戸の意図はおおむね早い段階で観客に開示される。むしろおそらく城戸視点のシーンの方が多く、ピカレスク調のストーリーと言うこともできそうである。そのため一見シリアスな話に見え実際に演出もそうなっているが、筋の本質はむしろ喜劇的である。つまり城戸と山下のどちらのすることも結構わかるナア、でも両方の望みは叶えられそうにない、なんとかならないかナアという喜劇型の葛藤で話を進めていく構造のプロットになっている。観客がもし城戸のように原爆を手に入れてしまったらやはりそれを使って望むものを手に入れようとするかもしれないし、山下の立場だったらなんとしても城戸を捕まえようとするだろう、と思えるように語られているのである。ただ結末では残念ながら葛藤を解決できてなくて、そこが最大の欠点である。こういう話はどちらにもそれなりの幸福が訪れて終わらないとダメだろう。とはいうものの、総じて話運びは自然で、近頃の邦画には見られないレベルの高いシナリオである。
  • ロケ撮影では無許可撮影や危険なスタント、交通妨害など相当な無茶をしたようで、予算を別としても今同じものを撮ろうとしてもまず無理だろう。しかしとにかく見ごたえのある映像の多い作品であることは確かである。現代と変わっているようで案外変わっていないところもある70年代後半の新宿の様子を眺めるのも楽しい。

75点/100点満点

Higurashi When They Cry Hou

 何気なくSteamを眺めていたら、『ひぐらしのなく頃に』の英語版新訳版のリリースが始まっているのを発見した。とりあえず第一話鬼隠し編がこの5月にリリースされたばかりのようだ。
 文章を日本語と英語の両方で表示させられるほか、絵もオリジナル版と新しいバージョンとを切り替えられるらしい。Steamの画面で見る限りでは、新しい絵は、なんというか女子が髪の色を除いて全員同じ顔に見えないでもない。でもオリジナル版も五十歩百歩か。
 1本538円とのことなので、オリジナルの『ひぐらしのなく頃に奉』が8話+おまけで3480円なのに比べると日本人にとってはちょっと割高である。日本語版なら第一話は無料の体験版があるわけだし。ただ、Mac OS版とLinux版は今回のSteam版にしかない。

 この作品、以前にも品質はよくないながら旧英語版が出ていて、そのおかげで英語圏のゲームデザイナーの間などでも意外に知名度はあるらしいのだが、それにしてもオリジナルから10年前後も経っているのに随分引っ張るもんだとは思う。
 『うみねこ』では一杯喰わされたが、それでも『ひぐらし』がよくできていることに変わりはない。

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)


 WOWOWメンバーズオンデマンドにて久しぶりに再鑑賞。

  • 攻殻機動隊シリーズの新作映画の公開も間近とのことだが、これはもっとも有名な最初の劇場版。
  • 個々のシーンはやはり文句なく格好よくできているが、話の方は……。初めて見たときは中身がさっぱりわからなかったし、いま何度目かに見てもやっぱり判りにくい。尺の都合はあったろうが、ややこしい設定がいろいろとあるのだからもう少し丁寧に説明できなかったものか。
  • とはいえ何度か見て表面的な話の筋は判ってきたが、しかしそれでもわからないのは、素子が人形使いと融合したからといってそれがどうしたのかということである。素子が9課を辞めたがっていてそれが実現したのはわかるし、バトーが振られてしまって悲しいのもわかるが、人形使いと融合したことそのものに対する語り手の評価が明らかでない。将来人類はネット上の人格として他の人格との融合と淘汰を繰り返しながら生きていくのがいい(だからこの結末はめでたしめでたしである)と言いたいのか? しかしそうだとすればそれはあまり説得的ではないようである。それに、ネット上に魂が存在できるというのはこの物語世界内の設定であって、現実世界でそのようなことが実現可能であるとも考えにくい。フィクションと言えどメイン・テーマくらいは現実に通用する何ものかを表現すべきではないか? さもなければナンセンスな話になってしまう。
  • また、これは押井守、というより伊藤和典のシナリオに特徴的なことだが、動機が極めて弱い。とりあえず刑事なんだから事件が起こったら犯人を追うでしょ、という以上のものがない。これはパトレイバーの映画のときもそうだった。一つには、戦闘シーン偏重で、事件そのものについてはセリフで要旨が説明されるのみ、それ自体の描写は極めて不十分だからである。犯人が何か不当なことをしているということを観客が実感できないまま話が進む。だから素子たちがしていることにあまり肩入れできないのである。つまり厳密に言えばここでいう動機付けは人物の動機付けというよりは観客の動機付けである。

『うちの妻ってどうでしょう?(7)』

 最終巻。アクションを読まなくなってからもこれだけは単行本を買っていたのだけど、終わってしまうというので残念。『僕の小規模な生活』の方も休載中とのことだし、K澤氏もこちらにしか出て来なかったし……

『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』(2010・ゲーム)

 「HEAVY RAIN −心の軋むとき− PlayStation®3 the Best」版にてプレイ。

  • フランスのクアンティック・ドリーム制作のアドベンチャーゲーム。ストーリー志向が強く、絵作りにしろ芝居にしろ音楽にしろ、まるで金のかかった海外ドラマのよう。一方でゲーム性は弱く、一応ムービーシーン以外ならゲーム世界内を歩き回ることはできるが、戦闘はいわゆるQTEのみ、つまり表示された通りにボタンを押すだけ。あまり面白いものではないが、まあラスアスみたいにスティックで射撃させられるよりはマシかも知れない。
  • 話の中身は一応ミステリーで、主に4人の登場人物の視点を切り替えながら話が進む。本筋にあたるイーサンの筋を説明すると、シングルファーザーであるイーサンが、折り紙殺人鬼と呼ばれている連続児童殺害犯に息子ショーンを誘拐されるという話である。この殺人鬼は児童を雨水の溜まる穴に閉じ込め、少しずつ溺れさせて殺し、死体に折り紙を握らせて線路沿いに放置するという手口で既に多くの児童を殺している。ところでイーサンは時々記憶を失う病を患っており、これまで度々、気づくとなぜか折り紙を持って路上に立ち尽くしているが、どうしてそうなったのか覚えていないことがあった。息子の誘拐のときも、誘拐される少し前に息子と一緒に公園にいたところから、息子がいなくなり、イーサン自身が折り紙を持って路上に立ち尽くしていたところまでの記憶がない。それでイーサンは、ほかならぬ自分が折り紙殺人鬼なのではないかと悩む。しかしそれはそれとして、この殺人鬼が、折り紙の中に忍ばせた手紙だのスマホだのを通じて、息子を返してほしくば高速道路を逆走してみろだの自分の指を切り落とせだのと無理難題を突きつけてきて、イーサンはそれをこなすのに死ぬような思いをする。果たして折り紙殺人鬼の正体は。そしてショーンは雨によって溺死させられる前に救出されるのか。
  • 発売当時としては意欲作であったろうことは間違いないのだが、シナリオ面に限って言えば、あまりよくできている方ではない。人間関係の描写の生硬さもあるのだが、なんといってもまずこの話の最大の謎である「イーサンが犯人なのか」ということと、イーサンが息子を取り戻すためにすることとの間に関連がないことが問題である。つまりイーサンが真犯人であろうとなかろうととにかく息子を取り戻すためにそれをしなければならないには変わりないので、ミステリードラマであるにも関わらず、謎が比較的どうでもよくなってしまうのである。ミステリーならとにかく謎を煽って煽って煽りまくらなければ面白くない。煽るというのは一つにはその謎の答え如何で正しい行動が変わってくるような状況を主人公に次々に突きつけるということである。この話はそうなってない。これは残りの3人の筋についても同じである。

58点/100点満点

『The Last of Us』(2013・ゲーム)【ネタバレ】


 『The Last of Us PlayStation®3 the Best』デジタル配信版にてプレイ。

  • PS3・4独占配信のゾンビものサバイバルアクションアドベンチャーTPS。通称「ラスアス」。SCEI製作、アメリカNauty Dog制作。Neil Druckmann脚本。全米脚本家組合賞ビデオゲーム部門大賞受賞作。『Grand Theft Auto V』を抑えて2013年度の各種年間ゲーム大賞受賞数第一位を獲得したとされる2013年を代表するゲーム作品の一つ。
  • ほぼ発売と同時に購入したPS3だったが、初めの頃に『グランツーリスモ5』を買ったきりPS3タイトルを遊ぶことはなく、たまに起動したときに実施されるシステムアップデートで、アップデート中に電源が切れるかも知れないスリルを味わうくらいしか楽しみようがなかった。もうPS4まで出てしまったのにこのままではいけないと、実況で始めの方を見てストーリーが良さそうだった当タイトルを購入した次第(プロローグは特に出来がいいので必見)。ダウンロード版を購入したので、60GBしかない標準HDDでは空き容量が足らず、ノートPCのを換装して余っていた分に入れ替えた。元のHDDからデータ移行したのでそこが少し面倒だったが、ディスク交換作業自体は簡単にできた。
  •  非常にストーリー志向・映画志向の強い作品で、あらすじは次の通り。
     時は2013年。主人公のジョエルは、その12歳の娘サラと共にテキサスに住むシングルファーザーである。ある晩、二人の住む街の市街地で、人間を次々に凶暴化・ゾンビ化してしまう正体不明の感染症の大流行が始まり、町中にゾンビが現れて人々を襲うようになる。ジョエルはサラとジョエルの弟トミーとともに車で市外へ避難しようとするが、同じように車で避難しようとする市民たちによる大渋滞と、そこに襲ってくるゾンビのため、右往左往するうち、市街地で自動車事故に遭う。車を放棄して徒歩で移動せざるを得なくなった三人は、市街地でゾンビから逃げ惑うことになる。そうこうするうち、彼らは町はずれで治安維持のため投入された州兵に出会う。州兵は助けてくれるどころかジョエルとサラに発砲するが、危ういところでトミーが州兵を射殺、そのおかげでジョエルは助かったものの、兵士の弾が腹部に当たっていたサラは死んでしまう。
     その後感染は全米に拡大し、至る所に人を襲うゾンビ(この世界では感染者、infectedと呼ばれる)が徘徊するようになった。この病原菌には感染者に噛まれるか、感染者の遺体から放出される菌の胞子を吸い込むことで感染し、その後2日と立たずに発症してゾンビ化する。治療法は一向に発見されず、正常な人間の数は減る一方。現代文明は崩壊の危機に瀕した。非常事態の宣言されたアメリカには、やがて軍政が敷かれ、生き残っている人間たちの多くは、軍によって各都市に設置されエリア外との出入りを厳しく統制された小さな隔離地域の中で、細々と生きていくことになった。隔離地域内は常に物資が不足しているため、違法に隔離地区外に出てそこに住むアウトローたちからそれらを調達しようとする者も少なくなかったが、そうした者は見つかり次第逮捕され、強制的に感染の有無を検査される。そして感染が見つかった者は、その場で直ちに殺されることになっていた。やがてそんな軍政に対する不満を抱く者たちによって、ファイアフライと呼ばれる地下組織が作られた。ファイアフライは治療法に関する研究を続ける一方で、軍に対するテロを繰り返した。軍はそれに対抗してファイアフライのメンバーを取り締まり処刑していったが、ファイアフライの勢力が衰える気配はなかった。
     そんな風にして20年が経過した。アメリカ東海岸のかつての大都市ボストンの隔離地域に移り住んだジョエルは、隔離地域外との密輸を手掛けることで糊口をしのいでいた。経過した年月にも関わらず、ジョエルのサラを失った悲しみが癒されることはなかった。そんなある夏の日、ジョエルの私生活と仕事の両面でのパートナーである女性テスが、武器の取引でトラブルのあったロバートの手下に襲われるという事件が起こる(トラブルの詳細は明らかでないが、どうもロバートがジョエルとテスから金を受け取ったまま商品の武器を渡さずに逃げたらしい。それで二人はロバートを追っていた)。ロバートが隔離地域外にある倉庫をアジトとしていることがわかり、早速ジョエルは共にそこへ出向く。手下のものを全滅させてロバートを捕まえ、テスがロバートを拷問して武器をどこへやったのかと問い詰めると、ロバートは武器はファイアフライに渡したと白状する。テスはそれを聞いてロバートを殺すが、その直後、その場にファイアフライのリーダーであるマーリーンが現れる。彼女曰く、ロバートから受け取った武器は既に代金を支払ったものだからタダでは返せないが、エリーという少女を隔離地域外にある州の議事堂へ届けてくれたら倍にして返してやるという。ジョエルははじめその話に消極的だったものの、多量の武器が手に入るチャンスだと大いに乗り気のテスに説得され、二人でエリーを連れていくことに同意する。エリーは14歳の少女で、ファイアフライのメンバーではないもののマーリーンの知り合いのようだが、正体は秘密らしい。
     いつも密輸に使っているトンネルを通り、ファイアフライの受取人たちが待つ議事堂へ向けて早速出発した三人は、しかし郊外で地上に出たところで、巡回中の軍の兵士たちに捕まってしまう。直ちに三人の感染の有無が検査されたところ、エリーに陽性の結果が出た。しかしエリーが突如として隠し持っていたナイフで兵士を刺し、その混乱に乗じてジョエルとテスが兵士たちを制圧して事なきを得る。その後エリーの告白によって、二人は、彼女がゾンビ化感染症に対して人類初の免疫を獲得した人間であること、ファイアフライは彼女を研究すればワクチンが開発できるかも知れないと見ていることを知る。ジョエルはよくあるホラ話に過ぎないと一蹴するが、テスはワクチン開発の可能性に希望を見出し、なんとしても議事堂に彼女を届けようと気概を新たにする。荒廃した旧市街地のビルや地下鉄、美術館の跡などを、感染者の群れに遭遇しながらも通り抜けた三人は、ようやく州議事堂に辿り着く。だがそこで三人は、エリーを受け取るはずのファイアフライのメンバーたちが殺されているのを目の当たりにする。どうも軍に襲われて一部は逃げ、一部は殺されたらしい。それでジョエルは諦めて帰ろうと言うが、そこでテスが一時間ほど前に感染者に首筋を噛まれ、今やその噛み跡が赤く腫れ上がっていることが判明する。テスは3週間前に噛まれたというエリーの噛み跡が腫れていないことを指摘して、エリーに免疫があるのは本当だとジョエルを説得し、人類の唯一の希望であるエリーをなんとしてもファイアフライに引き渡すため、かつてメンバーだったトミーのところへ連れていくようにと懇願する。ジョエルと別れて久しいトミーが今いるはずのワイオミング州ジャクソンシティはアメリカ北西部にあって、東海岸のボストンからは3000km以上ある。ジョエルはテスにそこまでの借りはないと渋るが、そうこうするうちに議事堂の外に軍の部隊が到着するのが見え、テスは自分は感染が進んだゾンビのようになりたくないからここに残って戦うことにする、二人は逃げろと言う。彼女の働きもあって結局ジョエルはエリーを連れて議事堂から脱出することに成功するが、テスは射殺される。二人は胞子の充満する地下鉄跡に逃げ込むが、ジョエルはそこでエリーがマスクなしで生きていられるのを見て驚く。これでジョエルは、エリーをトミーのところへ連れていくことを決心する。
     ジョエルはまず近くの町(同州リンカーン)に住む男ビルを訪ねることにする。彼は仕事で付き合いのある調達屋で、自動車を手に入れられるかも知れないからだ。ビルはトラップの名人で、ビルのいる町にはいたるところに感染者除けのトラップが仕掛けてある。感染者とそれらに注意しながら進むジョエルたちだったが、ある建物に仕掛けられていたトラップに引っ掛かり、ジョエルが宙に逆さづりにされてしまう。そこへ折悪しく感染者たちの群れがやってきて、ジョエルは逆さづりのままでの戦いを余儀なくされる。エリーの助けでトラップからは逃れられたものの、際限なく現れる感染者たちに押され気味になってきたところで、そこに現れたビルに助けられ、三人はビルの家へと辿り着く。ビル曰く、ここに動く自動車はないが、町外れの高校跡からバッテリを取って来て古い自動車に取り付ければ動かせるかも知れないという。そこで三人は感染者のうろつく町外れへバッテリ探しに出かけることになる。その準備をしながら、どうにもエリーとそりの合わないらしいビルが言う。あんなガキは捨ててしまえ、俺にも昔は守るべきパートナーがいたが、今どきはそんなものを持っている人間から先に死んでいく、だから俺は一人で生きていくことに決めた、と。さて、町外れへと出発した三人は、道中の墓地や民家で例によって感染者たちの群れに襲われつつも、なんとか目的地の高校跡へと辿り着くが、当てにしていた古い自動車からは既にバッテリが抜き取られていた。なおも感染者に追われ、三人は学校からとある民家に逃げ込むが、その部屋の中で、かつてのビルのパートナー、フランクが自殺しているのを見つける。感染者に噛まれたことでゾンビ化する前に自殺したものらしい。フランクの家のガレージにはフランクがこの町を去るために用意していたらしい自動車が発見され、そのエンジンが押し掛けすれば使用可能らしいことがわかる。ジョエルとビルは感染者たちでいっぱいの路上を車を押して下り坂まで持っていき、エンジンをかけることに成功する。
     ビルと別れた二人はその車でハイウェイを一路西に向かう。1000km弱走ってピッツバーグへ差し掛かったところで、道がふさがれて先に進めなくなったため、やむなくハイウェイを下りることになる。ところがそれは地元の強盗たちの罠だった。ハイウェイを下りた先の路地で車に助けを求めてきた男を見て、手口に身に覚えのあるジョエルはそれを見破り強行突破を図る。しかしバスを車の側面にぶつけられ、車が壊れてしまう。二人は車を放棄し、襲ってきた強盗の一味をなんとか全滅させる。ピッツバーグを出るには、市街地を通り抜けてその端に架かる橋を渡る必要があるが、市街地の中は強盗の仲間たちでいっぱいだった。彼らと戦いつつやり過ごしつつで進んでいった二人は、やがて廃ホテルを通り抜けることになる。そこにも屯していた一味たちを倒したあと、古いエレベーターのシャフトを通り抜けようとしたとき、エレベーターのカゴが落下し、そのときたまたま上に乗っていたジョエルも一緒に落下、エリーは上の階に取り残され、二人は離れ離れになってしまう。無事だったジョエルは、例によって建物の中をうろついていた感染者たちを排除しつつ、いくつかのフロアを抜けてエリーの待つ上の階へ戻る。しかしあと少しというところで、またも強盗の一味に襲われる。敵の大半は排除したものの、最後の一人に追い詰められるが、危機一髪のところでエリーが駆けつけ、敵の拳銃を取り上げて発砲したことで救われる。ホテルの外に出ると、そこも強盗一味でいっぱいだった。ジョエルはそれまでエリーに銃を持たせておらず、それがエリーには不満だったが、先ほどの一件で考えを改め、彼女に猟銃を持たせて援護させることにする。その作戦は見事当たり、敵を全滅させることに成功する。ジョエルはエリーを認めて拳銃を手渡すのだった。
     これで橋に近づいたが、二人はその先でさらに一味の装甲車に襲われる。機関銃を乱射するそれから逃れて近くのビルの中に入ると、そこには一組の兄弟がいた。ヘンリーとサムと名乗る彼らは、仲間と共にここピッツバーグに物資を調達に来たが、一味に襲われ散り散りになった、かくなる上はさっさとこの町から逃げ出すつもりだと言う。ジョエルとエリーは彼らと協力して町を出ることにする。サムとエリーは年の近い者同士で早速仲良くなる。橋のすぐ近くにある兄弟の隠れ家に移動すると、そこからは橋が一味に占拠され守られているのが見えた。ヘンリーは橋の警備が手薄になる夜を待って出発する計画だと言う。ジョエルがヘンリーに町を出たあとどこへ行くつもりかと聞くと、ファイアフライに加わるためにどこか西にあるという彼らの拠点へ向かうつもりだ、しかし差し当たり明日は、万一のとき町の外れにある軍の無線施設跡で仲間たちと合流することになっているので、そこへ向かうつもりだ、君たちも来るといいと言う。夜が来て一行は橋を襲撃、警備に当たっていた一味の掃討に成功するものの、トラックで作られた障害物に阻まれて手間取っているうちに一味の増援が到着。ヘンリーとサムは先に行き、ジョエルは置き去りにされてしまう。戻ってきたエリーとともに、ジョエルはなんとか迂回路から橋に辿り着くが、橋の途中で道が壊れて渡れなくなっていた。そうこうするうち敵の追手が迫ってきて、やむを得ず川へと飛び込むと、激しい川の流れに流されて岩に激突、気を失って漂流してしまう。しかし彼らを探していたヘンリーとサムに助けられ、下流の川岸に流れ着く。俺を見捨てたと詰るジョエルに、ヘンリーはサムを危険にさらすわけにいかないから仕方なかった、立場が逆ならジョエルも同じようにしたはずだと反論する。彼に助けられたこともあり、ジョエルは矛を収めるのだった。再び無線施設跡へ進み始めた一行は、かつて人々の隠れ場所として使われていたらしい下水道を通る。そこはかつてそこで暮らしていた人々のなれの果てと思しき感染者たちでいっぱいだった。感染者に追われ一時はエリーと離れ離れになったりしつつ、一行はなんとかそこを抜け出して住宅街に出る。だが先に進むと、ここにもまた一味の仲間がいて、狙撃銃で一行を狙ってくる。ジョエルが建物に隠れながら接近しスナイパーを倒すと、次に再び例の装甲車が姿を見せ襲ってくる。ジョエルはスナイパーの使っていた狙撃銃でそれを倒す。すると今度は感染者の群れに襲われる。手に負えなくなった一行はそこから逃げ出すのだった。無線施設跡に着き夜になったが、仲間たちは現れない。眠りにつく前、エリーとサムは自分が何が怖いかという話をする。エリーはひとりぼっちになることが、サムは感染者になることが怖いと言う。翌朝、エリーがサムを起こしに行ってみると、彼はゾンビになっていた。昨日感染者の群れに襲われたときに足を噛まれていたのだった。ヘンリーはサムを射殺し、次いで自殺する。
     残された二人は旅を続け、季節が秋へと移り変わった頃、ワイオミングに到着した。ジャクソンシティに近いジャクソン郡の水力発電所を通りがかった二人は、そこで妻や仲間の家族たちと発電機を修理していたトミーと再会する。彼らはここを要塞化して外敵を防ぎつつ、畑を耕し家畜を飼ってここで生活していくつもりのようだ。トミーは去年テキサスの家に戻ったといい、その時持ち帰ったサラの写真を渡そうとするが、ジョエルは受け取らなかった。さて、ジョエルがトミーにエリーをファイアフライのところに連れて行ってほしいという話をすると、トミーはファイアフライのところには久しく行っていないし決して近くはない、それに今は家族や仲間の方が大事だから自分で連れていけとそれを断る。ジョエルは人類を救うという大義より家族の方が大事なのか、昔は俺がお前の面倒を見たではないかと詰め寄るが、トミーはなかなか承知しない。そうしているうちに警報が鳴り、盗賊たちが襲撃してきたため、ジョエルはトミーたちに加勢して彼らを撃退する。その後、妻を説得したトミーは、ようやくエリーを連れていくのを引き受けるが、今度はエリーが馬に乗ってどこかへいなくなってしまう。馬の足跡を追って森へと探しに出たジョエルとトミーは、途中盗賊たちのアジトで一戦交えつつ先へ進み、ある牧場の建物の中にエリーが一人でいるのを見つける。ジョエルが話を聞くと、エリーはジョエルが彼女をトミーに任せて帰ってしまうつもりなのが不満らしい。自分にとって大切な人は皆いなくなってしまった、もうジョエルしかいない。置いて行かれたら不安になる。あたしには免疫があるからサムやサラのようなことにはならないから。そうジョエルに訴えるエリーだったが、ジョエルは、俺はお前の父親ではないしお前は俺の娘じゃない、だから別の道を行くのだとそれを拒絶する。そこへ盗賊たちの残党が襲ってきて、ジョエルが彼らを倒したあと、三人は発電所への帰途につく。だが、その後のエリーの落ち込みようを見て心が揺れたか、発電所に戻るとジョエルは、トミーと別れてエリーと旅を続けると決める。二人は一匹の馬に乗り、トミーにファイアフライの研究所があると教えてもらった東コロラド大学へと旅立つ。
     やがて隣の州にある同大学に到着するが、研究所があったと思しき建物には、実験動物として使われていたらしいサルたちのほかには誰もいなかった。残されたものを調べたところ、ここにいたファイアフライの研究員たちは、ソルトレイクシティの病院へと移ったらしい。しかしそこへ正体不明の賊たちが出現し二人を襲う。ジョエルは例によって彼らをあらかた倒すが、待ち伏せされていた敵と組みあった際に上の階から吹き抜けに落下、下にあった瓦礫の鉄筋に串刺しになり重傷を負う。エリーはジョエルを連れて残りの賊を片付け、なんとか建物を脱出する。二人は馬に乗って安全圏まで逃走することに成功するが、その後ジョエルが倒れてしまう。やがて季節は冬になり、エリーは湖畔地帯の森の中で狩りをしていた。弓矢を当てた手負いの鹿の血の跡を辿ると、その鹿は廃工場の手前で死んでいた。と、そこへ見知らぬ二人の男が現れ、我々が共に生活しているグループに持ち帰るため、この鹿を譲ってほしいと頼まれる。エリーは抗生物質と交換することを条件にそれを承諾する。一方の男がグループのところへそれを取りに行っている間、デイビッドと名乗るもう一方の男と建物の中で待っていると、そこへ感染者の群れがやってきたため、エリーはデイビッドと共に戦って全滅させる。デイビッドはそれに感心した様子で、エリーにグループに加わるよう勧めるが、一方で彼のグループが東コロラド大学で二人を襲った賊のグループであり、仲間を多数殺したジョエルを恨んでいるらしいこと、またエリーがその連れだと知っていることも明かす。だがエリーのことは、子供のしたことだから許すという。エリーはそれを断り、戻ってきた男が持ってきた抗生物質をジョエルのいる廃村に持って帰る。ジョエルに抗生物質を注射し、しばしまどろむエリー。だがそれは罠だった。気づくと廃村の中は、足跡をたどってきたデイビッドのグループのメンバーだらけだった。とはいえ、どこの家にいるのかまではまだ見つかっていないと踏んだエリーは、まだ動かせないジョエルが発見されるのを防ぐため、馬に乗って彼らを遠くにおびき出す作戦に出る。馬は射殺されたものの、湖畔に建つロッジの建物に身を潜めつつ彼らを一人ずつ倒していき、あらかた掃討することに成功する。しかし結局デイビッドに待ち伏せされて捕まり、グループのアジトへ連行される。そこで入れられた牢屋の中からエリーが見たものは、食料として捌かれる人間の遺体だった。そこへデイビッドが来て、仲間に加わるように再度説得するが、エリーは断固として拒否し、デイビッドに抵抗する。それでエリーは翌朝食料にされることになる。一方、抗生物質の効き目が出て動けるようになったジョエルは、廃村に残っていた一味を掃討し、一部は捕虜にしてデイビッドのアジトの位置を聞き出す。翌朝、エリーはデイビッドらによって屠殺台の上に載せられるが、エリーが感染者であることにとまどっている隙をついて脱走。吹雪の中彼らの町を逃げ回り、あるレストランの建物に辿り着く。その中で後を追ってきたデイビッドと一対一で対決することになり、タフな戦いとなるが、結局ナイフで彼を倒す。またそこで、同じころ彼らの町に到着していたジョエルと合流する。
     春になり、二人はソルトレイクシティに辿り着いていた。目指す病院はもうすぐだが、エリーはどこか上の空だ。それを見たジョエルは、病院へ行くのは止めてトミーのところに帰ってもいいと言うが、エリーはここまで来てそういうわけにはいかない、すべてを済ませたら二人で行きたいところに行こうと言う。またエリーは、トミーのところから持ってきたと言ってサラの写真を渡す。今度はジョエルもそれを受け取った。二人は半ば水没したトンネルを例によって感染者たちを倒しながら進んでいくが、激しい水の流れの中に浸かっていたバスの上を通ろうとしたとき、バスが流されはじめ、エリーが溺れてしまう。ジョエルはエリーを助けようと心臓マッサージをするが、そこへファイアフライの兵士たちがやってきて気絶させられる。気がつくとジョエルはファイアフライの病院のベッドの上にいた。傍らにはマーリーンがいて、曰く、エリーも助かった、こんなにタイミングよくエリーを見つけて救うことができたとは、これも何かの運命かも知れない、と。しかしジョエルがエリーに会いたいというと、マーリーンは、これからワクチン開発のために必要な、エリーの脳にある特殊な抗体を取り出す手術をするから会わせられないと言う。そのためには脳自体を摘出することになると気づいたジョエルは、他の人間を探すように言うが、マーリーンは他の人間などいない、私もエリーのことは小さい頃から知っていて、気持ちは痛いほどわかるが、人類を救うためにはどうしても必要で選択の余地はないと言い、なおも抵抗しようとしたジョエルを病院から追放しようとする。だが警備の兵士の隙をついてジョエルは銃を奪い、病院中の兵士を制圧して今まさに手術が行われようとしていた手術室に到達、執刀医たちを殺して麻酔で眠っているエリーを取り戻す。なおも追ってくる増援の兵士たちの隙をつき、エリーを抱えてエレベーターに乗り込んだジョエルは、地下駐車場から逃走を図るが、エレベーターを降りたところで待っていたマーリーンと対峙する。マーリーンはエリーを連れて逃げたからといって何になる、今からでも正しいことをしてくれ、エリーも望むはずのことだ、エリーが苦しむことはないと説得するが、ジョエルは隠し持っていた拳銃でマーリーンを射殺。傍らの自動車にエリーを乗せて走り去るのだった。やがて車中で眠りから覚めたエリーに、ジョエルはウソの説明をする。ファイアフライの病院にはエリー以外に免疫を持った人がたくさんいたし、ファイアフライは治療法の研究を中止していた、と。やがて二人はトミーの住むジャクソン郡まで戻ってくる。エリーがこっそり噛まれた傷口を確認すると、以前より少し腫れてきているように見えた。発電所の近くまで来ると、エリーが言う。ボストンで感染者に噛まれたとき、ライリーという名の友達も一緒にいてやはり噛まれた。そのときライリーは、一緒にゾンビになるのを待とうと言った。ライリーが死に、テスもサムも死んだ。私もそうなるのを待っているんだ、と。それを聞いてジョエルが言う。俺は生きるために戦い続けてきた。お前も戦う目的を探し続けなければならない、と。するとエリーが、車の中で聞いたファイアフライの話はすべて本当だと誓えと言い出す。ジョエルが誓うと言うと、エリーは覚悟を決めたようにも見えた。
  •  話のジャンルは基本、ゾンビものだが、オカルト的なものでなく医学的な治療の可能性がなくもないタイプで、治療法開発の鍵を握っている人物エリーを目的地まで連れていくというのが主人公ジョエルの一応の目的である。この構成は『トゥモロー・ワールド』(2006)と『アイ・アム・レジェンド』(2007)が元ネタになっているものと思われる。また、ファイアフライを探しながら結局アメリカをほとんど横断する話で、いわゆるロードムービー的でもあり、また『The Walking Dead』(2010-・TVドラマ)などにも似ている。
     話の本質は、最終的にジョエルがエリーを取るか人類の未来を取るかの選択に迫られ、エリーの方を取るというところにあり、義務と愛情との葛藤で愛情の方を取るわけだから本質的ジャンルとしてはメロドラマということになる。つまり主人公ジョエルは人類を滅亡させたわけで立派な行為をしたとは評価できない、しかし大半のプレーヤーに少なくとも同情の余地はあると思わせたはずであり、それができたという点でメロドラマとしては上等な方に入る。
     もしジョエルが人類を救う方を選んでいたら、この話はメロドラマでなく悲劇になっていたはずである。また、ある種の偶然の力を借りて、人類とエリーと両方を救えるという結末だったら、いわゆる悲喜劇になっていたはずである。
  • 脚本賞を取るだけのことはあって、ゲームとしてはかなり出来のいいシナリオである。しかしこれだけ延々とあらすじを紹介しておきながら何だが、このシナリオのよさは主にプロットでなくシーンの中での人間関係描写の丁寧さにあり、梗概だけ読んでもこのシナリオの良さの半分もわからないはずである。ゲームのシナリオは一般に映画と比べて長いので、人間関係描写がリッチになる傾向があり、ここが得意な脚本家だと名シナリオになりやすい。ただ逆に、このプロットは少しストレートすぎて話を引っ張る力が弱いきらいがあり、そこは短所と言えるだろう。
  • またこのゲームは世界観がしっかりしていて、そこは日本製のゲームなどと比べて相当な実力差を感じた。これはつまり、ある前提となっている事実があるときに、その結果としてどういうことが起こり得るかということについてどれほど真面目に考えているかということで、日本製のゲームはどうしてもそのジャンルの「お約束」に頼って深く考えていないようなのが多いのである。ここが甘いと所詮お子様向け、子供だましのストーリーにしかならない。
  •  あっけない幕切れのようにも見えるラストシーンをどう考えるか。ここは、ジョエルにとってみれば、死に場所を探し続けていたエリーに、ウソをついてでもなんとか生き続けさせようとするシーンである。ジョエルがそういうことをする話なのは確かだからそれをダメ押しするのはいいとして、それだけで終わっていいものか。物語は、語られた一連の出来事の最終的な結果に対する語り手にとっての評価を示して終わるべきではないか。エリーが最後までジョエルのウソを信じておらず、真実に気づいているという前提に立てば、エリーの最後のセリフを、ジョエルのしたことを語り手であるエリーが肯定したものだと読み込めなくもないかもしれないが、そうだとしても表現としてかなり弱い。それがあっけない感じがする一つの理由だろう。(追記: 脚本家の意図は逆とのこと。となると問題はより深刻化する。これはジョエルを非難する話だったのか? まさかそうではあるまい。)
     またこの話には「正解ルート」がない。つまりこの設定のもとではジョエルがどう行動したとしても人類が滅びるかエリーが死ぬ。望ましくない結末で終わる話では、観客はそれが実現しないまでも正解ルートが明らかにされて終わることを期待しているが、この結末にはそれがない。またさらにいうなら、正解ルートがないということは、冷静に考えると、望ましくない結末になったのは作者がそういう風に設定したからに過ぎないということであって、少々作り物臭い結末のようにも感じられてしまう。以上を俗な言葉で言えばこの話には教訓がない。
  • ドラマの良さを決めるのはもちろんシナリオだけではなく、この作品でも、演技・演出や背景美術、それに音楽が素晴らしい。美術についていうと、PS3版の場合720p出力で少し解像度が低いのだが、それでも荒廃した市街地やアメリカの四季が十分に美しく描かれている。それとエリーの顔のモデルは若い頃のエレン・ペイジだそうだが、このキャラクターデザインは少女の華奢な感じもよく出ていて、アメリカ版萌えキャラといった感じ。この出来がいいからオジサンオバサンたちがつい頑張っちゃうストーリーに説得力が出る。また声の吹き替えは、この作品では、大変珍しいことに原語版より日本語版の方が出来がいいようである。原語版はモーションキャプチャーで演技している俳優の声そのままのようなのだが、ちょっと地味な印象。一方、日本語版の方は特に山寺宏一が上手く、ジョエルの格好良さが2割増しである。ただ、翻訳の質については、まあマシな方だが今一歩の感もあり。この手の翻訳の質はまず何より語尾の処理の巧拙に出る。
  • 総合的に見て、大人にとって十分鑑賞に堪えうるドラマだと評価できる。レーティングも18歳以上向けであり、いわゆるエロ作品でもないのに大人を主力層としてゲームを発売するというのは経営的に冒険だったろうが、結果として売り上げ的にも成功したようである。
  • 脚本賞はともかくとして、本作がゲーム大賞の類も多く受賞したという事実は、やはり映画志向の強いGTAVが当作品に次いで多く受賞しているという事実と併せて、ゲーム業界が依然として「映画みたいなゲーム」をゲームの理想と考えているらしいことの証拠と言えそうである。それにしても、そういうゲームが決まってTPSなのは、やはりメタルギアシリーズの影響だろうか。
  • 最後にゲーム面について簡単に。筆者はコンシューマ機のTPSの経験がなかったのだが、PCならマウスで操作するところを右スティックで視点移動させるというのは、やはり少々無理があるように感じられた。それでも視点移動だけならプレイしているうちにある程度慣れてきたが、射撃の照準合わせまでこれでさせられるのには最後まであまり慣れなかった。もともとこの手のゲームのある種のルーツとも言える初代『バイオハザード』では、この問題を、ゾンビの動きを遅くすることと、視点をシーンごとに固定にすること、またあまり厳密に銃の向きを合わせなくても弾が当たるようにすることなどで解決していた。また最近のTPSでも、GTAVのように、時々画面をスローモーションにできるようにする能力を付けたりしていくらか対策しているようである。しかしこの作品ではそういった工夫があまり見られない。そういう意味でこの作品のゲームとしての操作性はあまり高く評価できない。唯一の救済策として、初級だとオートエイムを効かせられるはずなのだが、設定でONにしていても合わせてくれるのかくれないのかよくわからないような動作で、このあたりはドキュメントが不完全なこともありそうだが、とにかく信頼性に欠けた。

70点/100点満点

『ブロンコ・ビリー』(1980)


 NHK BSPにて久しぶりに再鑑賞。

  • クリント・イーストウッド監督・主演の人情もの喜劇。年代的にはダーティーハリーの3と4の間くらい。筋はともかくキャラクターが魅力的で、クリント・イーストウッドの監督作の中ではこれがドラマとして一番よくできているかな。

70点/100点満点

『女王蜂』(1978)


 WOWOWにて鑑賞。

  • 市川崑監督、石坂浩二主演。市川・石坂のコンビによる金田一耕介シリーズ第4作。
  • 金田一耕介の映画は、作品によってけっこう出来にバラつきがあるのだけれど、これは上出来な方。シナリオはちょっと原作をいじりすぎて理解しにくくなったようなところがあるが、とにかく役者の芝居がいい。

70点/100点満点